皆様こんにちは。ミリタリーにおける『食』、特にレーションについてご紹介していくDachoの『ミリヲタ的グルメ』。
いよいよ自衛隊の戦闘糧食をご紹介する機会がやって来ました。今回は、部隊での消費が始まったばかりの最新型の戦闘糧食I型です。

【関連:第34食 アメリカ軍特殊部隊用レーション】

●陸上自衛隊 横浜駐屯地の体験喫食

横浜駐屯地 体験喫食会場

先日、友人に誘われて陸上自衛隊の横浜駐屯地で開催される戦闘糧食の体験喫食に応募したところ、無事参加できることになりました。
横浜駐屯地では、毎月1回隊員食堂の食事を一般市民に試食してもらう企画が行われています。全国的に駐屯地の食堂は、アウトソーシング化が進み、民間企業の職員により調理されている場合が多くなっています。そうした中で、横浜駐屯地は、隊員が調理する数少ない駐屯地だそうで、とても美味しいのが自慢だそうです。
そしてこの7月と8月は、その体験喫食が夏休みの特別企画として新型戦闘糧食の試食となりました。

 
●従来の非常用糧食と戦闘糧食

戦闘糧食I型II型

写真は、陸上自衛隊広報センターに展示されている戦闘糧食I型と戦闘糧食II型です。
戦闘糧食I型は、正式名称を非常用糧食といい、通称『缶メシ』と呼ばれる缶詰主体の食料です。賞味期限は3年ありますが、納入からの2年間は補給処や駐屯地の倉庫で非常事態に備えて保管され、残り1年となったところで戦闘糧食として訓練などの際に消費されます。2011年の東日本大震災では、まさにその非常事態として補給処や駐屯地で備蓄されていた非常用糧食が大量に使用されました。
一方、戦闘糧食II型は、レトルトパックの食品で賞味期限は1年。半年ごとに納入されて1年以内に消費されます。

 
●新型の非常用糧食/戦闘糧食I型

戦闘糧食I型パッケージ

これが、2012年から納入が始まり、この春に部隊での消費が始まったばかりの新型の非常用糧食(戦闘糧食I型)です。戦闘糧食II型によく似たレトルトパックですが、技術の進歩により賞味期限は3年になっています。
なお、このレトルトパックの新型非常用糧食が採用された今でも、旧来の缶詰型非常用糧食、及びレトルトパックの戦闘糧食II型も並行して調達・運用されています。

戦闘糧食I型メニュー

今回は、このチラシに書かれた13種類のメニューの中から好きなものを選ぶことが出来たので、私は『煮込みハンバーグ』にしてみました。
ちなみに、メニューは全部で20種類あり、防衛省装備施設本部のサイトで一覧を見ることができますので、ここに転記したいと思います。

 ・鮭味付け
 ・さんまピリカラ
 ・筑前煮
 ・大型乾パン
 ・かつおカレー煮
 ・さばトマト煮
 ・タコライス
 ・やきとり
 ・鶏肉と大豆煮
 ・スタミナ丼
 ・豚肉と里芋煮
 ・すき焼きハンバーグ
 ・鶏肉とひじき煮
 ・かも肉じゃが
 ・煮込みハンバーグ
 ・ポークカレー
 ・ポーク・ローストチキン
 ・フランクフルト
 ・麻婆豆腐
 ・豚肉しょうが焼き

<出典・参考>
【PDF】装備施設本部だより第3号 2ページ『「非常用糧食」について』
【PDF】平成25年度非常用糧食(レトルトパウチ類)品質試験申請要領 5ページ『別表 非常用糧食の品目及び仕様書等』

パッケージを開封しました。

戦闘糧食I型内容

 ・白飯(200g)
 ・ドライカレー(200g)
 ・煮込みハンバーグ(170g)
 ・トレイ
 ・スプーン

ご飯は、四角いレトルトパックになっていて、それを盛り付けるトレイがセットになっていますが、メニューによっては、ご飯のパック自体がスーパーで売られているようなトレイ式のものもあります。これは、納入業者の違いによります。
写真に写っているお茶は、もちろん含まれていません(笑)

 
●戦闘糧食の加熱

説明1 説明2

会場では、隊員の方が戦闘糧食についてや、その食べ方など色々と説明してくださいました。
戦闘糧食は、そのままではご飯が硬くて食べられないので加熱する必要があり、鍋や野外炊具という装備でボイルする場合と、加熱剤を使う場合があります。
従来の缶詰はボイルするしかなかったので、加熱剤も使用できるというのは運用の柔軟性が増したのではないでしょうか。
今回は、その加熱剤を使って温めます。

加熱剤

加熱剤

加熱剤中身

加熱剤中身

これが加熱剤と加熱袋です。
この加熱剤は、『第26食 台湾軍加熱式野戦レーション』(https://otakei.otakuma.net/archives/2013021503.html)でもご紹介したモーリアンヒートパックです。
自衛隊だけではなく、海外のいくつもの軍隊も採用する非常に優秀な加熱剤です。

加熱袋準備

加熱袋準備

水の準備

水の準備

まず加熱袋を広げ、底に加熱剤を置きます。その上にご飯と副食で三角形を作ります。この三角形により「自立性を高め均一な加熱を行う」そうです。
次に、加熱剤が入っていたアルミ袋で水の量を計ります。袋の内側に線が引いてあるので、そこまで水を入れます。
加熱袋に水を入れて少し待つと、蒸気が噴き出してきました。

加熱中

加熱中

写真では、やや見にくいかもしれませんが、蒸気が盛んに噴出しています。
この状態で20分加熱すると食べられるようになるものの、あと5~10分ほど余計に加熱するとさらにおいしく食べられるそうです。今回はもちろん長めに加熱します。
出来上がりまでの待ち時間は、スライドで駐屯地を紹介する写真を見せていただいたり、売店を見学したりして、あっという間に過ぎました。

 
●試食

盛り付け

加熱が終わった戦闘糧食をトレイに盛り付けました。大きなハンバーグがとても美味しそうです。

盛り付け2

戦闘糧食は、炭水化物中心で栄養のバランスは良くないという事で、フルーツも付けていただきました。
東日本大震災では、災害派遣された自衛官の中には、ビタミン不足や食物繊維不足で口内炎や便秘などの地味に嫌な症状に悩まされた方も多くいたと聞きます。その教訓からか、陸上自衛隊では、災害派遣用に食物繊維やビタミンなどの栄養補助食品を調達・備蓄しているようです。

さっそく試食です。
煮込みハンバーグを食べた第一印象は、『薄味』でした。
従来の缶詰の非常用糧食は、塩分が多く濃い味付けでした。たくさん汗をかいた後の塩分補給のためではないかという説もありますが、食事から一律に塩分をたくさん摂るのはあまり健康的とは言えないですし、災害時に被災者へ配布することもあるので、新型非常用糧食で薄味になったのは当然だったのかもしれません。
しかし、薄味だからといって不味いわけではありません。ちょっと甘めで上品なソースとたっぷりの肉のパテの組み合わせはとても美味しいと思います。
白飯は、癖もなく美味しく食べられますが、ちょっとベタベタした感じで、スーパーで売っているようなトレイ式のパックご飯の方が好みです。
ドライカレーは、かなり美味しいです。ベタつきもありませんし、スパイスがよく効いていて食が進みます。野菜や豚肉などの具がコロコロと入っています。

味はとても良かったのですが、量も非常に多いですね。ご飯400gは、お茶碗に大盛り2杯分に相当しますし、この非常用糧食1食で1,000~1,200kcal程度あると思います。
これは、体を大いに使う自衛官に必要な量として決められているのでしょうが、知り合いの陸上自衛官の方に聞いたところ、演習などではご飯を2パックとも食べてしまうと満腹で動けなくなるから1パックしか食べない、とおっしゃっていました。同僚の皆さんも1パックだけだそうです。
動くために適切な食事量と必要なエネルギー量が矛盾しているのは、ちょっと悩ましい話ですね。

 
●たくあんの缶詰

たくあんの缶詰 たくあん

他の参加者からのリクエストがあったそうで、たくあんの缶詰も試食させていただきました。
これは、従来からある缶詰タイプの非常用糧食/戦闘糧食I型の中の1つで、自衛官の皆さんからも美味しいとの評価が高く、『缶メシ』の中でも一番人気があるそうです。
写真の通り、非常に分厚く切られたたくあんが缶の中に詰まっています。昆布の細切りも入っていて、これも美味しさの秘密の一つかもしれません。
このたくあんの缶詰は、作るのに色々とノウハウがあったらしいですが、しばらく前にその唯一の生産メーカーが倒産するという事件が起こってしまいました。そのため、一旦は納入が途絶えてしまいましたが、別の会社が生産を引き継ぎ、1年後には無事復活しました。そのおかげで、今でもこうして食べることができます。

 
●次回の体験喫食
今回は、最新の戦闘糧食を試食できるという、非常に貴重な機会を得ることが出来て幸運でした。
8月にも同様の体験喫食が行われますので、興味を持たれた方は応募されてみてはいかがでしょうか。

横浜駐屯地「戦闘糧食I型」体験喫食(http://www.mod.go.jp/gsdf/yokohama/tyuumoku/taiken.html

次回体験喫食掲示

葉書での応募で、8月7日(木)必着ですのでご注意ください。なお、体験喫食は有料ですが、補助が出て若干安くなっているようです。

(文・写真:Dacho)