これまで「ネットを舞台」にした「サポート詐欺」「著名人なりすまし」「出会い系詐欺」など、さまざまな詐欺の現場に潜入しては記事にして紹介してきましたが、近ごろ「読者リクエスト」をいただくようにもなりました。

 ラジオのリクエストとはことなり、筆者の場合は「これ行って騙されてきて!」という涙のリクエストになるわけですが、そこは読者命名「プロ詐欺ラレヤー」の矜持としてやるしかありません。

 今回もそんなリクエストからの潜入。ネギを背負った気持ちで「当選詐欺」に突撃してきました。

■ リポストされただけで1万円分のギフトが貰える?

 読者の話によると「ちかごろかなり怪しげなサービスがXで話題になっている」とのこと。

 紹介された問題のアカウントを見てみると、まずプロフィールに次のような内容が書かれていました。

「このアカウントにRT(リポスト)された方は当選おめでとうございますプレゼントの詳細はメインアカウントの固定ツイートをご覧ください!」

 ようはこのアカウントに、「投稿をリポストされただけ」で当選してしまうようです。

当選詐欺のアカウント画面イメージその1

 「リポストされただけで当選なんて、本当かいな……。こっちは何もしてない」

 と思うかもしれませんが、「企画に突然当選 ちゃんともらった」という他のユーザーからの喜びの声もリポストで紹介されていました。

 ただし、「PR」のハッシュタグがついているので、この「喜びの声」自体が自演の広告。なんともきな臭いサービスです。

当選詐欺を称えるPR広告

 とりあえず「メインアカウント」とやらを細かく見ていくと、最初のアカウントと全く同じデザインのロゴが表示されています。そしてアカウント名は「公式」。2.7万フォロワーも有しています。

 次にプロフィールをチェックすると、「固定されたツイートを御覧ください」との記載がありました。

当選詐欺のアカウント画面イメージその2

 で、「固定されたツイート」を見てみると、「ご当選者様おめでとう お好きなギフト1万円分 LINE友達追加して今すぐ受け取り手続き!」と書かれています。

当選詐欺の入り口

 なななんと、全く何もしていないのに本当に当選してしまったもようです。わーいわーい!と言いたいところですが、そんなウマイ話があるわけない……!(断言)

 普段ならばここで「撤収!」となるところですが、今回このサービスについて「調査してほしい」という依頼を受けたので、この先に何があるのか、潜入調査してまいります。

いざ潜入

■ 釣られてみると……

 先程の「公式アカウント」からアクセスした先は、出ました「LINE友だち追加」。

 過去に潜入した「投資詐欺」「出会い系詐欺」など、ネットを舞台にした詐欺の場合は100%といっていいほど「LINE友だち追加」が求められます。どうやら今回も同じような手法。やっぱり怪しい。でも進みます。

当選詐欺のLINEアカウント

 そのまま友だち追加をすると、すぐさま相手のアカウントからメッセージが届きました。

 書かれていたのは「タップして詳細を確認する>」。どうやら、さらに別のサイトへと誘導するようです。

 本当にこの手のパターンは、様々なサイトやツールにポンポン飛ばされて手間がかかる。(愚痴)

当選詐欺のLINEアカウントから発せられるメッセージ

 次の遷移先「特賞お受け取り限定ページ」というランディングページでは、ギフト受け取りまでの手続き方法が書かれていました。

当選詐欺のLINEアカウントからLPへ

 ただし気になる文章も。「お好きなギフト10000円分GET権利を獲得」……?ん?権利を獲得?既に権利を持ってたはずでは?

 下に詳しく説明が書かれていました。最初は「この画面をタップして無料登録」すると5000ポイントもらえるが、登録完了後に好きなサービスに「お試し登録」するとさらに5000ポイント貰えるとのこと。そして「サイト内で合計10000円分までポイントがたまったら」ポイント交換してギフト10000円分が受け取れるという仕組み。

 つまり、いきなり10000円分もらえるのではなく、会員登録やサービス登録が条件。

 やっぱり、そんなウマイ話はなかった……。しかし、問題はそれだけではなかったのです。この表記には、後ほど、とんでもない「罠」が仕掛けられていることに気付かされます。

■ 課金サイトへの登録が必要

 さて、ここまでホイホイついていくと、次にこのサービス(※)を利用するにあたり個人情報を求められます。ほほーん。
※「この画面をタップして無料登録する」で出てきたサイト、以下「怪しいサイト」と呼びます。

怪しいサイト

 登録前にこの「怪しいサイト」をチェックしてみました。存在自体はポイントサイトとして運営しているようです。しかし、「運営者情報」はどこにも記載なし。プライバシーポリシー、利用規約もチェックしましたが「当サイト」「本サービス」とのみ書かれており、運営者(社)名は不明。

 利用規約末尾の「管轄裁判所」も見てみましたが、「地方裁判所」「簡易裁判所」ともに指定されていませんでした。この手の個人情報を預かるサービスの場合は、基本的に利用規約の中に「管轄裁判所名」が書かれています。千葉県柏市なら「千葉地方裁判所」「松戸簡易裁判所」など記載されます。

裁判所名がない

 他にも、「運営者情報」という項目を開くと、なぜか「お問い合わせ」ページが開きます。次に問い合わせボタンを押してみると……メールアプリを起動する画面が。「iCloudのメールアドレスは当サイトから返信が届きませんので、iCloud以外のメールアドレス」を使うよう求められています。うっさんくっさー!

運営者情報

 個人情報を抜き取る気満々な予感。本来はこれ以上進むのは危険です。読者のみなさまは決して真似しないように。筆者の場合は「プロ詐欺ラレヤー」。今回も危険を承知の上で、検証として進んでいきます。

当選詐欺の誘導先の個人情報入力

 あっさり登録をすませると、次に出てきたのは貯まったポイントが確認できる画面。

 「現在ポイント」は5000。合計10000ポイントになったら一回報告するようです。「2つ登録して10000pt貯まったら報告しよう」と書かれています。

当選詐欺の誘導先の詳細

 ポイントを貯めるには様々なサービスへの登録が必要で、そのサービス登録ごとに2500ポイントが付与されます。したがって10000ポイントまでは、あと2サイト(5000ポイント)登録すればいいわけですね。

当選詐欺の誘導先のポイントについて

 また、注意書きとして「課金」という何やら聞き捨てならないワードが。「※ご登録時に課金表示がありますが、お試し期間中に退会すれば無料となります」。うさんくさーー!

当選詐欺の誘導先のポイントについて紹介文

 そして、その登録させるサービスを見ると、ガッツリ課金サービスであることが判明。内容は音楽や壁紙などがサブスクでダウンロードできる模様。

 課金までの一定期間までに解約すれば無料にはなるようですが、どう考えても忘れそう。

有料課金サイトの画面

 つまり、「当選した」と思わせて、有料課金サイトへの登録をうながす「だましの手口」だったのです。おまけに、「個人情報」も抜き取られる恐れもあるので、絶対に手を出してはいけません。

■ 更に悪質な問題

 この「怪しいサイト」のサービスを利用するにあたり、登録ボーナスで5000ポイントが最初付与され、10000円分のポイントを貯めれば10000円分がもらえるという話でした。

 1つのサイトで2500ポイントですので、2サイトの登録をすればOK!!

 ……と思ったあなた、これには大いなる「落とし穴」があります。

 怪しいサイトにあった「ご注意書き」をよーく読むと……。「5000ポイントが最初付与され、10000円分のポイントを貯めれば……」。

 最初付与されるのは5000ポイント、貯めなければならないのは10000円分。

 ちなみに1ポイント1円じゃありません。

 10ポイントで1円です。

今回のポイントに関する注意書き

 そうです、つまり10000円分貯めるには100000ポイント貯めなければなりません。

 従って残り95000ポイントです。

 計算上では2500ポイントのサイトであれば38サイトの登録が必要になります。これはしんどい……。しんどいだけならばいいが、サイトの有料課金の解除を忘れるおそれもあります。

 ほとんどの人が途中でこの「ミスリード」を誘った「罠」に気づき、サイトの登録だけをさせられるというオチとなります。

 Xの表記、そしてサイトの説明と一通りふりかえると、「1万円分無条件で貰える」といったことは臭わすだけでハッキリとは書いていませんでした。ただし、誤認させる内容であることは明白。これを詐欺と言わずして何と言おう。国民生活センターも激おこするレベルです。

 実はこれ、似たケースが国民生活センターのホームページで紹介されていました。

「SNSで、指定されたサイトに登録するとフリマのポイントがもらえるという「ポイントサイト」の広告を見た。無料期間中に解約すればポイントだけが無料でもらえると思い、指定された約30個のサイトに登録していった。途中からアダルトサイトになり、心配になって登録するのをやめた。すでに登録したサイトも解約したいが連絡先が分からないサイトが10個ある。解約したいがどうしたらいいか」
(国民生活センター/2021年7月13日公表「ポイントサイト利用によるトラブルに注意」より引用)

 得られるギフトが「フリマのポイント」という違いはあるものの、流れはほぼ同じだとおもいます。しかもこのケースで最悪なのが「すでに登録したサイトも解約したいが連絡先が分からない」という点。これは課金が繋がったままということも考えられるため、登録した決済手段を止めるなどの対応が必要です。

 加えて、すぐ自治体の消費生活センターにも相談を。消費者ホットラインの番号は「188(いやや)」です。

(たまちゃん)