オンラインゲーム業界に長年身を置いた筆者が、ユーザー視点&仕事で得た知見から過去を振り返り「あのときこうだったよねー」と紹介していく連載企画「オンラインゲーム千夜一夜」。本稿で六回目となります。

 前回の最後に大作オンラインゲームを、と言うことでお話をしましたけども皆さんが考える大作オンラインゲームってなんですかね?

 多くの人が考える大作はおそらくですけど光の戦士のアレとか、日本最大級MMORPGの名前を挙げる方がいるかと思います。

 個人的にはその辺りのゲームも思い入れのあるタイトルだったりもしますけど……筆者は特に思い入れが強いタイトルが一つあります。

 それは日本においても人気のある小説が元となっており、アニメ、実写の映像作品も大人気。そしていまだに新作が登場する超大作……ファンタジー世界の教本とも言える内容と、世界観……それ故に非常に多くのファンが注目した作品です。

 オンラインゲーム化については早くから注目され多くの情報サイトでも紹介されまくったアレは、新進気鋭の運営会社が日本パブリッシングに挑戦するも残念ながら日本を撤退……現在ではフリートゥプレイ(選択で月額課金も可能)となって現在も運営を続けている超大作「ロード・オブ・ザ・リングス オンライン」です。

■ 期待の大作として当時大きな注目を集めた

 本作は北米のゲーム開発会社Turbine社が手がけたMMORPGで北米では2007年4月24日にサービスを開始しており、日本ではさくらインターネット社が2007年6月1日から日本語版を運営開始したタイトルです。

 筆者はオープンベータサービス時に参戦しまして、サービス開始以降も遊んでいました。

 原作となる「指輪物語」はイギリスの作家J.R.Rトールキンによるファンタジー小説で、1937年に登場しています。

 この指輪物語はファンタジー小説の原点とも言える存在で、エルフ、ドワーフ、ホビットなど多彩な種族達が織りなす冒険と大河ドラマ級の戦争ものの要素をごった煮にした長編小説です。

 ちなみにこの「ホビット」に関する権利は直近では「Middle-earth Enterprises」が版権管理をしているようなのですが、よくこのあたりはネタにされてまして海外だけでなく日本のRPGでは長らく別名称の同種族が複数爆誕する事態となっておりました。

 さて、本作の特徴は指輪物語の世界観を忠実に、そしてゲーム用にうまく融合させて作られたミドルアース世界を堪能できる点です。

 さらに原作に登場するビルボや、アラゴルン(ストライダー)との出会いや共闘などを描いたストーリーなど、ファンにはもう涎ダラダラもののタイトルだったりもしました。

 日本語版は完全翻訳されていたのですが、現在は英語版の運営しか残っていないのですが有志による翻訳なども盛んなので割と楽しく遊ぶことが可能です。

 日本語版当時の思い出としては、ベータサービスではレベル制限があったのですがパーティプレイをすることで多少高レベル帯のモンスターを撃破することが可能でして……筆者は他のプレイヤーと共同で高レベル帯のモンスターを狩りまくり、スタートダッシュ用の武器防具を多数揃えてサービス開始を待つというプレイを楽しんでいました。

 また、当時としては月額課金制はすでに少数派で、現代にもつながる無料プレイベースで、顧客単価をあげて運営を継続するというゲームが多い中、本作は月額課金を選択したのが特徴にもなっていました。

 ただオープンべータを楽しんでいたユーザーの大半が正式サービス以後に離脱してしまったのは、おそらくすでにオンラインゲームは無料で触れる……と言う価値観が醸造されていたのも逆風となった可能性が高いです。

■ 久しぶりにログイン

 改めて筆者は北米版サービスを立ち上げてみましたが、2010年以前のオンラインゲームとしては非常に標準的な出来栄え……チュートリアルからストライダーとの共闘、ブラックライダーの出現など指輪物語(特に映画版)をみている人にはブッ刺さる展開など、実によくできているなーと思うシーンが多いです。

 シナリオを進めて初めてブリー村を訪れ、躍る小馬亭に入った時の感動は筆者はいまだに覚えています……これは他のオンラインゲームなどでも感じることですが、原作があるタイトルが映像化、ゲーム化された時に感じる感覚にとても似ていました。

 反面ゲームとしては非常に保守的な作りで、レベル制……特に開発会社であるTurbine社が手がけていた「Dungeons & Dragons Online」とも共通しますが、いわゆるクリックゲームにちかい作りだったこともあり、遊びやすいですけど、別にそれまで遊んでいたゲームを捨ててまで移住する……という魅力を感じにくかったかもしれないですね。

 また戦闘で手に入るアイテムなども多く存在しますが、キャラレベルを上げるためには豊富に用意されているシナリオをクリアしまくった方が効率が良いのです。ただし、シナリオクリアもかなりの時間がかかるので、プレイ時間が莫大に増えてしまう……と言うのも手軽に遊べるゲームを求める層にはちょっときついシステムになっているのも弱点だったかもしれません。

 ただ……本作はそんな細かい部分を吹き飛ばすくらいの楽しさ、があります。

 日本語版は残念ながら2009年9月30日に終了してしまい、日本では話題がほぼない状態となっていますが、それでも現在までずっとサービスが継続しているのは世界中のファンが本作、そして指輪物語という超大作を愛してやまないことの証左になっているかと思っています。

 現在ではStanding Stone Games社が運営を継続しており、日本からのアクセスも容易。 指輪物語の映像化というのは割と昔から行われていまして、実はアニメなども過去制作されていました……それでもピーター・ジャクソン監督が作り上げた映画の雰囲気にも似た独自のロード・オブ・ザ・リングの世界観を生で楽しめる優良オンラインゲームとなっています。

英語についてはちょっと勉強が必要ですが、有志のWikiを見ることでシナリオは理解できるという初期のオンラインゲームプレイヤーの気持ちも体験できます。もし気になった方がいましたらぜひ一度触ってみてください。

 さて、次回はMMORPGの枠組みを超えて、オンラインで遊べたゲームを紹介していこうと考えています……! ぜひ次回もよろしくお願いします。

<参考・引用>
The Lord of the Rings Online 北米版公式サイト(英語版)
※画像は本作の起動画面を撮影したものとなります。

【上村健太郎:筆者プロフィール】
神奈川出身、東京在住。オンラインゲーム業界において長らくプロモーションやプロデュースなどを担当し、数多くのタイトルを立ち上げ、そして終了させてきた苦い経験の持ち主。
私生活では妻と二匹のビーグル犬よりも地位の低い生活を満喫中。