「ディレクター」「カメラマン」「スタイリスト」……。1つのテレビ番組が完成するまでには多くの職業の人たちが関わっています。

 世間的にあまり知られていませんが、その中に「リサーチャー」という職業の人がいる場合も。

 記者はテレビ番組の「リサーチャー」を約10年やっていましたが、現役当時から今にいたるまで自己紹介で「テレビのリサーチャーをやっている(やっていた)」と伝えても、「???」と反応されることがしばしば。そこで今回は、テレビのお仕事の中でも謎多き存在「リサーチャー」について少しだけ紹介します。

 テレビ番組のリサーチャーは簡単に言うと、テレビ番組で扱うネタを探したり、調べたりする人です。リサーチすることは番組によって違い、「人」「モノ」「ニュース」など様々。

 例えば、ワールドカップで活躍したサッカー日本代表の三笘薫さんをトーク番組にゲストで呼ぶとします。

 その場合、基本的なプロフィールはもちろんのこと、「趣味」「特技」「好きな食べ物」「交友関係」「行きつけのお店」「お世話になった人」「学生時代のエピソード」「恋愛系のエピソード」などを調べたりします。その他、番組で行う企画によって追加で調べることも。

 調べ方はインターネットでの検索をはじめ、過去に出演された番組を見たり、過去に特集された雑誌のインタビュー記事を読みあさったりします。そのような事をしているため、資料をまとめて番組の会議に提出するころには、リサーチャーは立派な三笘薫オタクになっていることも。

 基本的にインターネットで参考にするのは本人のインタビュー記事。Wikipediaも見ますが、出典が明確でない場合が多いのでその情報をもとに必ず信憑性のあるサイトを探します。

 ここで気をつけたいのは「その情報の鮮度」。趣味や交友関係、好きな食べ物などは何年も前の情報だった場合、制作会議で「いいね!」となっても本人に直接聞いてみると「今は、もう……」なんてこともあります。

 現役当時、公式以外で特に参考にしていたサイトは、「笑っていいとも!」(フジテレビ系列/2014年に放送終了)のファンの方が運営していた「笑っていいとも!資料室」。こちらのサイトは、日替わりゲストが登場する番組の名物コーナー「テレフォンショッキング」の内容が文字起こしされていたので、非常に助かりました。

 ちなみに今回記事で触れるにあたり、久しぶりにサイトを見に行ったところどうやら閉鎖されてしまった模様。運営者の方が本稿をご覧になるかはわかりませんが、この場を借りてお礼を申し上げます。その節は大変お世話になりました。

 さて、次は過去の雑誌の調べ方について説明します。古い雑誌はどうやって見るの?と、疑問に思う人もいるかもしれません。大抵の場合、東京都世田谷区にある大宅壮一文庫に行きます。

 大宅壮一文庫は、週刊誌や女性誌、総合月刊誌など、約800種類が所蔵されている雑誌の図書館。館内のパソコンで検索して雑誌を閲覧。必要なページがあった場合、有料でコピーすることが可能です。

 リサーチャーはこうして集めた情報を資料におこし、番組の制作会議ではその資料をもとに「何の話題をメインにするか?」「どんな企画ができるのか?」などが話し合われます。

 例えば資料の中に、Aという芸能人の恩師に面白いエピソードなどがあり、総合演出やディレクターなどの目に留まったりすると、「サプライズゲストで呼んでみようか」という話になり、企画が進行。学校などへの連絡は、リサーチャーやADが行います。放送局や番組によっては、ディレクターやプロデューサーが連絡をする場合もあります。

 ちなみに資料はこのケースでいうと10~15枚ほど作るかもしれませんが、番組で使われるのは1枚分ということは多々あります。時間が限られているので仕方がないこととは理解しつつも、なんとも言えない気持ちになります。ただし、これが無くては番組の制作会議が始められません。そのような大切な資料を作るのがリサーチャーの仕事です。

(リサーチ次郎)