イギリス海軍第2の空母、プリンス・オブ・ウェールズに2021年6月9日(現地時間)、初めてF-35Bが飛来しました。F-35Bは着艦後、飛行甲板での露天繋止やエレベーターでの昇降を行い、再び飛行甲板に出て発艦するまでの手順を乗組員らと実施し、将来の本格的な航空機運用に備えています。

 クイーン・エリザベス級空母の2番艦として、2019年12月に就役したプリンス・オブ・ウェールズ(R09)。現在は乗組員が乗艦し、戦力化に向けての運用試験が行われています。

空母プリンス・オブ・ウェールズ(Image:Crown Copyright)

 外洋を航海し、イギリス海軍艦船としての基本的な能力を獲得する段階から、いよいよ航空母艦としての能力を試験するようになったプリンス・オブ・ウェールズ。ついに将来の主力艦載機となるF-35Bを迎えることになりました。

空母プリンス・オブ・ウェールズに着艦するF-35B(Image:Crown Copyright)

 今回、空母プリンス・オブ・ウェールズに飛来したのは、第207飛行隊のウィル少佐が操縦するF-35B。マーラム空軍基地を離陸し、イングランド南方沖を航海するプリンス・オブ・ウェールズに記念すべき初着艦を果たしました。

着艦を見守るプリンス・オブ・ウェールズ乗組員と第207飛行隊の兵士(Image:Crown Copyright)

 飛行甲板に降り立ったウィル少佐は「プリンス・オブ・ウェールズに初めて着艦するF-35Bパイロットになれて、とても光栄です。私たちはこれまで姉妹艦のクイーン・エリザベスで訓練してきましたが、今度はプリンス・オブ・ウェールズの皆さんと訓練で得たものを分かち合い、一緒に完全運用能力獲得への道を歩むことを楽しみにしています」とのコメントを残しました。

空母プリンス・オブ・ウェールズに降り立った第207飛行隊のウィル少佐(Image:Crown Copyright)

 プリンス・オブ・ウェールズには出港時、陸軍の攻撃ヘリコプターAH-64アパッチが搭載されていますが、固定翼機が着艦するのは初めて。F-35Bは飛行甲板上を移動し、定められた場所で露天繋止する訓練が実施されたほか、航空機用エレベーターにのせられ、格納庫のある甲板まで昇降。乗組員は実際にF-35Bを運用する際に必要な手順を、実機を使って訓練しました。

露天繋止されるF-35B(Image:Crown Copyright)
エレベーターで格納庫まで降ろされたF-35B(Image:Crown Copyright)

 訓練の仕上げは、プリンス・オブ・ウェールスからの発艦。飛行甲板員のグラハム・ブリック大尉が発艦のサインを出し、F-35Bは艦首のスキージャンプ勾配を駆け上がって大空へと飛び立ちました。

発艦指示を受けるF-35B(Image:Crown Copyright)

 一連の訓練を見守った、艦長のダレン・ヒューストン大佐は「これは海軍第2の空母を“空母”とするために費やされた、とてつもなく多くの集団的努力のたまものです。乗組員たちを誇りに思いますし、今後実施される各種試験や訓練を通じ、F-35Bの運用経験を素早く積み重ねるだろうと楽しみにしています」とのコメントを発表。乗組員の進歩に期待を寄せています。

プリンス・オブ・ウェールズから発艦するF-35B(Image:Crown Copyright)

 プリンス・オブ・ウェールズにF-35Bが初着艦したという知らせは、現在地中海を航行中の姉妹艦、クイーンエリザベス空母打撃群を指揮する、スティーブ・ムーアハウス代将にも届きました。

地中海を航行する空母クイーン・エリザベス(Image:Crown Copyright)

 ムーアハウス大将はこの知らせを喜び「空母を1隻建造することは国家の野心を示すものです。しかし、2隻建造して同時に運用するということは、国の意思がとても真剣であることを表します。これはイギリスが継続的に空母打撃力を維持し、1隻が世界情勢に対して即応体制にある、ということを意味します。それができるのは限られた国だけであり、イギリスが再び世界で一線級の海軍力を手に入れたことになるのです」というコメントを発表しました。

空母プリンス・オブ・ウェールズ(手前)と空母クイーン・エリザベス(Image:Crown Copyright)

 空母プリンス・オブ・ウェールズは、最大36機のF-35Bを運用する能力を持っています。全機が揃うのはまだ先のことですが、その時に備えて乗組員たちは訓練に励みます。

<出典・引用>
イギリス海軍 ニュースリリース
イギリス空軍 ニュースリリース
Image:Crown Copyright

(咲村珠樹)