アメリカ海軍太平洋艦隊の司令官に、前アメリカ中央軍海軍司令官のサミュエル・J・パパロ大将が就任したことが2021年5月5日(現地時間)に発表されました。

 前任のアキリーノ大将がアメリカインド太平洋軍司令官に就任したことによるもので、司令官交代式典は4月30日、パールハーバー・ヒッカム基地のK(キロ)埠頭で開催されています。

 パパロ大将は、ペンシルベニア州モートン出身。祖父は第二次世界大戦に従軍した海軍軍人、父は海兵隊員という軍人一家に育ち、1987年に大学を卒業して海軍に入隊しました。

太平洋艦隊新司令官のパパロ大将(Image:U.S.Navy)

 戦闘機パイロットとなったパパロ氏は、トップガンの名で知られる海軍の「Figher Weapons School(戦闘兵器学校)」を卒業。F-14、F/A-18などのほか、交換将校制度でアメリカ空軍第71戦闘飛行隊でF-15Cパイロットとして活躍し、6000時間を超える飛行と、1100回の着艦をこなしています。また、陸軍第10山岳師団や第173空挺大隊の地域復興チーム司令官としてアフガニスタン派遣経験もあり、陸海空軍での経験を有する貴重な人物です。

 戦闘機パイロット時代には、当時空母キティホークの艦載機部隊だったVFA-195“ダムバスターズ”の一員として横須賀、及び厚木での勤務経験があり、日本や海上自衛隊についても知っているパパロ大将。その後はCVW-7司令官、CSG-10(空母アイゼンハワー打撃群)司令官を経て、2020年からアメリカ中央軍海軍(第5艦隊)司令官の任にありました。

 アメリカ太平洋軍司令官となったアキリーノ大将から、太平洋艦隊司令官の任を受け継いだパパロ大将は「私は世界の貿易における60%、36か国で世界人口の52%を占め、また14ものタイムゾーンを有する重要な地域を預かることになり、この肩にかかる重責と代々の司令官が残した実績を前にして、その名前に並ぶことができ非常に光栄です。アメリカは志を同じくするパートナーとのチームワークによってのみ達成される“自由で開かれたインド太平洋”実現のため、国際法と規則に基づく国際秩序を支持するという、共通の認識をもって引き続き取り組んでいきます」との抱負を語っています。

 前任のアキリーノ大将がインド太平洋軍の司令官となり、日本での勤務経験のあるパパロ大将が新司令官に就任したことで、アメリカ海軍がインド太平洋地域、特に西太平洋を重視していることがうかがえます。海上自衛隊だけでなく、自衛隊全体、そして同じ地域のパートナーとの結束も、今後さらに強化されていくものと思われます。

<出典・引用>
アメリカ海軍太平洋艦隊 ニュースリリース
Image:U.S.Navy

(咲村珠樹)