ギリシャのアンドロヴィダ空軍基地で2021年4月12日(現地時間)より、多国間共同訓練「イニオチョス」が始まります。今年はギリシャ空軍のほか、UAE(アラブ首長国連邦)、アメリカ、イスラエル、キプロス、スペイン、フランスと計7か国が参加。フランスは空軍だけでなく、中東展開中の空母シャルル・ド・ゴールからラファールMも参加しています。

 多国間共同訓練「イニオチョス」は、1980年代後半から開催されている恒例の訓練で、2015年からイスラエルとアメリカが参加し、国際共同訓練へと発展しました。訓練名の「イニオチョス」とは、デルポイのアポロン神殿より出土した馬車の御者像(イニオチョス)のことで、訓練を主催する航空戦術センターの指揮下で航空機が訓練する様子を、馬車の御者と馬の関係に見立てたものです。

「INIOCHOS 21」のインシグニア(Image:ギリシャ空軍)

 新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年の開催が中止となった「イニオチョス」。2年ぶりの開催で、参加各国の部隊は4月5日〜7日、訓練の拠点となるペロポネソス半島のアンドロヴィダ空軍基地に集合し、12日〜22日の期間に様々な訓練を実施します。

ギリシャ空軍のF-16(Image:ギリシャ空軍)

 期間中の18日(17時〜19時)・19日(9時〜19時)・21日(9時〜19時)には「スポッターズ・デイ」として、航空ファンが訓練を見学できるイベントも実施。また22日には、アクロポリス上空を編隊飛行するイベントも実施が予定されています。

フランス航空宇宙軍のラファールC(Image:フランス航空宇宙軍)

 訓練に参加するのは、ギリシャ空軍(F-4E、F-16)、UAE空軍(F-16)、アメリカ空軍(F-16、MQ-9、KC-135)、イスラエル空軍(F-15、F-16)、キプロス国家守備隊(AW139捜索救難ヘリコプター)、スペイン空軍(F/A-18)、フランス航空宇宙軍(ラファール、ミラージュ2000D)、フランス海軍(ラファールM)。フランスは今回が初参加となり、航空宇宙軍のラファールB/Cが6機とミラージュ2000Dが5機、そして海軍から5機のラファールMが派遣されています。

ギリシャ空軍のF-4E(Image:USAF)
フランス航空宇宙軍のミラージュ2000D(Image:フランス航空宇宙軍)
手前からフランスのラファールC、ギリシャのF-16、スペインのF/A-18C(Image:ギリシャ空軍)

 アメリカ空軍のF-16は、イタリアのアヴィアーノ空軍基地に駐留する第31戦闘航空団に所属するもの。パイロットを除く訓練参加要員は、ギリシャ空軍が派遣したC-130輸送機などで機材とともにイタリアから移動しました。

イタリアを発つギリシャ空軍のC-130(Image:USAF)
ギリシャに到着したアメリカ空軍のF-16(Image:USAF)

 訓練に参加するアメリカ空軍第31戦闘航空団・第510戦闘飛行隊で飛行班長補佐を務めるジェフ・モブサシアン大尉は「訓練は学びの場です。輸送や整備、飛行に渉外など、あらゆる職種において、これを初めて行う若者がいます。旅する時に歯磨き粉を忘れたりしないように、事前に訓練が必要なのです。ホームベースの恵まれた環境とは違う新しい場所でF-16を運用することで、多くのことを学べるでしょう。また、他国の部隊と連携することも非常に重要です。1分ほどその日の任務について交渉するとして、ほかの時間ではギリシャ名産のオリーブオイルや、スペインのワインについての知識を得られます。こうして互いに、個人レベルでの信頼を強めることができるのです」と、少々しゃれた言い回しで訓練のメリットを語っています。

フランス航空宇宙軍のラファールC(Image:USAF)
飛行後のパイロット(Image:フランス航空宇宙軍)

 ギリシャが位置する地中海東部から中東にかけては、トルコの動向を含めて軍事的な不安定要因が増加し、デリケートな状態になっています。周辺国が互いに連携を深めておくことで、有事の際もスムーズな対応が可能となるため、このような国際共同訓練は重要さを増しているといえます。

<出典・引用>
ギリシャ空軍 航空戦術センター公式ページ
アメリカ空軍 ニュースリリース
フランス航空宇宙軍 ニュースリリース
Image:ギリシャ空軍/USAF/フランス航空宇宙軍

(咲村珠樹)