イギリス海軍のアスチュート級原子力潜水艦4番艦、オーディシャス(HMS Audacious/S122)が2020年4月6日(現地時間)にメーカーのBAEシステムズから引き渡されました。オーディシャスはその後、4月7日に母港のクライド海軍基地に到着しています。

 アスチュート級は、スウィフトシェア級やトラファルガー級の後継となる攻撃型原子力潜水艦。全長約97m、7400トンクラスの潜水艦で、各種センサーからの情報を統合処理する高度な戦闘管理システムのもと、対艦攻撃だけでなく地上攻撃にも対応する万能性を有しているとされます。

 当初の予定より計画は遅延したものの、タイプシップのアスチュート(S119)は2010年に就役。2016年までに2番艦アンブッシュ(S120)、3番艦アートフル(S121)までが就役しています。4番艦オーディシャスは2007年に正式発注され、2009年から建造が始まりました。

 正式に「オーディシャス(生意気な・臆面もないなどの意)」と命名されたのは2016年12月16日。2017年4月28日に進水したのちは、引き渡しに向けての性能確認試験が続けられてきました。

 オーディシャスの引き渡しに際し、BAEシステムズの潜水艦部門を統括するクリフ・ロブソン氏は「我が社の従業員やその家族にとって、今は非常に困難な状況に直面しています。しかし、大きな逆境の場面ではよくあることですが、イギリス政府の重要な防衛計画をサポートするため、オーディシャスの引き渡しに集まってくれた姿に、私は本当に頭の下がる思いです」と、建造に携わってきた人々に感謝の意を表しています。

 オーディシャスの引き渡しを受けたイギリス海軍は、艦を建造されたイングランド北西部のバロー=イン=ファーネスから、母港となるスコットランドのクライド海軍基地へと回航。姉妹艦3隻が待つクライド海軍基地には、4月7日に入港しました。

 イギリス海軍の潜水艦戦隊司令官、ジム・パークス代将は「オーディシャスがクライドに到着し、3隻の姉妹艦と合流して、とてもワクワクしています。オーディシャスは、世界最先端の潜水艦であるアスチュート級が、常に改良を重ねていることを示す一例といえます。オーディシャスはここイギリスで、イギリス人の手で建造された、まさに最先端技術の塊です。これから我が国の海洋権益と安全保障を担ってくれることでしょう」と、オーディシャスのクライド到着に寄せてコメントを発表しています。

 オーディシャスは今後、沿岸での乗員訓練を行ったのちに試験航海を実施する予定。BAEシステムズのバロー=イン=ファーネス事業所では、残るアスチュート級3隻(アンソン、アガメムノン、エジンコート)の建造が進んでおり、2020年代半ばには全7隻が就役する見込みです。

<出典・引用>
イギリス海軍 ニュースリリース
BAEシステムズ ニュースリリース
Image:Crown Copyright 2020

(咲村珠樹)