NASAの新しい有人宇宙船オリオン。初の打ち上げを前にした試験のため、フロリダ州のケネディ宇宙センターからオハイオ州の試験施設へと空輸されました。使用されたのは、アポロ計画でも活躍した特異な姿の大型輸送機「スーパーグッピー」です。

 スーパーグッピーはアポロ計画で使用されたサターンロケットを空輸するため、B-29から発展した輸送機、ボーイングC-97ストラトフレイターを改造して作られた、巨大な貨物室を持つ広胴貨物輸送機。大きく膨れ上がった胴体が特徴です。

 これまで、オリオン宇宙船はケネディ宇宙センターで各種試験が行われてきましたが、実際の宇宙を模擬した環境での動作試験を実施するため、専用の試験施設があるオハイオ州のグレン研究センターへと移送することになりました。

 厳重に梱包されたオリオン宇宙船を胴体に格納したスーパーグッピーは、2019年11月21日(現地時間)にケネディ宇宙センターのスペースシャトル着陸施設から出発。貨物の重量が大きいため、最大離陸重量の関係で燃料が少ししか積めず、給油のための離着陸を繰り返しながら飛行します。

 グレン研究センター最寄りのオハイオ州マンスフィールド・ラーム空港に到着したのは、11月24日の16時30分すぎ。空港には、到着を知った1500人ほどの人々が出迎えました。



 到着したスーパーグッピーは、翌25日に機首部分を開いて貨物室から積荷のオリオン宇宙船を取り出しました。ここからグレン研究センターまでは、特殊なトレーラーに載せて陸送されます。


 グレン宇宙センターでオリオン宇宙船は、センター内のプラムブルック試験施設にある世界最大級(直径30m・高さ36.6m)のスペースチャンバーに入れられ、宇宙空間を模擬した環境での動作試験を行います。このスペースチャンバーは、1970年代のスカイラブ計画でスカイラブ宇宙ステーション(全長25.1m・直径6.6m)を試験するために作られたものです。

 スペースチャンバーでは宇宙空間と同じような真空状態に置かれ、太陽が照りつけた際の高温と、日陰部分の低温という極端な温度差を模して、摂氏約マイナス270度〜約プラス280度という環境で、機器が正常に動作するか確認されます。これが終わると、宇宙放射線の影響下を模擬した電磁気干渉試験が行われる予定。

 およそ60日間にわたるスペースチャンバーでの試験が終わると、宇宙船は再びフロリダ州のケネディ宇宙センターへ戻され、今度は月への往復試験である「アルテミス-1」ミッションの打ち上げに備えて、巨大ロケットSLS(Space Launch System)に結合されます。

<出典・引用>
NASA プレスリリース
Image:NASA

(咲村珠樹)