2019年3月20日(アメリカ東部時間)、アメリカ海軍はボーイングに対し最大40億4045万8287ドルで、F/A-18E/FブロックIIIを計78機発注しました。ブロックIIIの発注は初めてで、内訳は単座(1人乗り)のE型が61機、複座(2人乗り)のF型が17機。2024年4月までに全機納入完了となる複数年契約となっています。

 F/A-18E/FブロックIIIは、F/A-18E/Fスーパーホーネットの最新能力向上型。ネットワークとレーダーの能力強化に加え、コクピットシステムや通信システムの拡張や、胴体上面への燃料タンク増設も含まれます。現在アメリカ海軍における艦隊航空戦力の主力を担うF/A-18E/FブロックIIの後継として配備されることになり、機体寿命となる飛行時間も6000時間から1万時間へと延長されます。

 アメリカ海軍ではF-35Cが初度作戦能力(IOC)を獲得したばかりですが、F-35は3種類のタイプが世界各国向けに生産されており、どうしても調達ペースは遅くなってしまいます。2018年のF-35生産数は91機。2019年は130機以上の生産を見込んでいますが、導入国も10か国あり、平均すれば1か国あたりの調達数は13機。アメリカは3軍(空軍・海軍・海兵隊)で導入しているので、海軍が1年で調達できる数はさらに少なくなる計算です。このペースで調達が進めば、F/A-18からの置き換えが完了する前に、F/A-18の機体寿命が来てしまう可能性があるのです。

 F-35Cの調達ペースとF/A-18E/Fの機体寿命到来とのギャップを埋めるため、近代化改修をした新たなF/A-18E/Fを「つなぎ」として導入するのがブロックIIIというわけです。もちろん、それだけでなく、調達価格が高騰しているF-35Cと比較して安価なF/A-18との併用は、かつてアメリカ空軍が高価なF-15と安価なF-16を組み合わせた「ハイ・ロー・ミックス」的な側面もあるでしょう。

 ステルス性に優れたF-35ですが、ステルス性を重んじれば機体外部に兵装を携行するわけにはいかず、どうしても1回の出撃で使用できる弾薬が少なくなりがちです。外部に兵装をフルに携行する「ビーストモード」もありますが、まずステルス性を重視したF-35Cで脅威を排除し、航空優勢(現代では「制空権」をこう表現することが多い)を確立した上で、フル装備のF/A-18で攻撃を加えれば時間的な手間もかからず、効率的といえます。


 アメリカ海軍では少なくとも2030年代の初めまでは、F-35CとF/A-18E/FブロックIIIを併用し、艦隊航空戦力を運用する方針です。F/A-18E/FブロックIIIが退役する頃には、F-35の次の世代となる新たな戦闘機が登場しているかもしれません。

Image:BoeingU.S.Navy

※訂正、初出時「4億4045万8287ドル」と記載していましたが、「40億4045万8287ドル」の誤りです。訂正しお詫びいたします。

(咲村珠樹)