ロシアの空中給油機の最新モデル、Il-78M-90Aがウリヤノフスクで引き渡し前の工場飛行試験を開始したと、メーカーであるイリューシンを傘下に収めるUACが2018年12月27日(モスクワ時間)に明らかにしました。大型輸送機Il-76をベースに開発されたもので、新しいエンジンと最新の航法装置によるコクピットのグラスコピット化がなされています。

 Il-78M-90Aは、低燃費・低騒音のソロヴィヨーフPS-90A-76ターボファンエンジンを搭載。これまでのIl-76シリーズよりも航続距離(滞空時間)の延長が図られており、より長時間の空中待機と空中給油の実施が可能になっています。試作機はアヴィアスタル-SPのウリヤノフスク工場で組み立てられ、2018年1月に初飛行を実施したのち、地上試験を行ってきました。

 テストパイロットのウラジミール・イリナルコフ氏の操縦により、雪のウリヤノフスク・ヴォストチヌイ飛行場を離陸したIl-78M-90Aは順調に飛行を終了。イリナルコフ氏によると「新しい機能も非常にスムーズに動作し、操縦も簡単で非常によくできた飛行機です」とのこと。給油方式は、主翼の両側からのびるドローグと呼ばれる給油ホースに、パイプ状になった受油装置(プローブ)を差し込む「プローブ&ドローグ」方式。アメリカ海軍をはじめ、ヨーロッパ諸国でも標準的に採用されている方式です。

 空中給油機Il-78M-90Aはユニークな機構を持っており、胴体貨物室に設置された大きな給油用燃料タンクを取り外せば、そのまま大型輸送機として使用が可能。また、この貨物室に消火剤タンクを取り付ければ消防飛行機にも生まれ変わります。しかもこの一連の仕様変更は工場で改修するのではなく、飛行場で簡単に行うことができるといいます。国土が広大なロシアでは、山林を含む原野火災がしばしば発生し、緊急事態省では大型の消防機が常にスタンバイしている状況。いざという時、すぐに空中給油機が消防機に模様替えして空中消火に参加できるというのは、結構大きな機能かもしれません。

 Il-76/Il-78の主任設計者であるアンドレイ・ユラソフ氏によると、最新の航法装置を採用したことにより、他の民間機と同じように飛行ルートを決定できるようになったため、Il-78M-90Aは世界中どこへでも派遣することが可能になっているとのこと。合わせて、研究開発段階が終了したことにより、開発遅れで発生していたロシア国防省への延滞債務額も大きく減らすことができると語っています。

 これからIl-78M-90Aは、ロシアの主力空中給油機としてでなく、輸送機や消防機にも柔軟に適応できる「マルチロール機」として、活動していくことになります。

Image:UAC

(咲村珠樹)