年末年始を海外で過ごす人の数が過去最高の70.4万人となる見通しと12月5日にJTBが発表しています。海外脱出組が増える事で気を付けたいのが、海外での感染症。世界へ羽ばたく前に注意しておきたいポイントをまとめてみました。(梓川みいな/正看護師)

■海外で流行りの感染症

 このところ特に注意なのが「はしか(麻疹)」。ヨーロッパ諸国などで去年から今年にかけて継続的に発生しています。日本での麻疹の発症者も海外からの持ち込みによるものばかりで、ライブ会場には麻疹の患者が紛れ込んでいた事で大騒動となったのも記憶に新しいところです。

 麻疹ワクチンによって2000年から2016年までに、世界での麻疹による死亡者は84%減少しましたが、依然として撲滅には至っておらず注意が必要な感染症です。特に、アジアの一部地域やアフリカなどでは公衆衛生の基盤が弱いため小児の死亡例も多い状態です。このため、海外へ渡航する人で麻疹の抗体がない人は予防接種が必須。

 もし感染してしまった場合、麻疹ウイルスに特化した抗ウイルスの治療法はないので対症療法のみの治療となります。こうなる事を予防するためには麻疹ワクチンの接種が一番有効。血中抗体はワクチン接種後約2週間から出現しますが、麻疹の患者と接触して緊急に発症を予防したい場合、接触後72時間以内に予防接種を受けることで発症を防御できる可能性があります。ただし、100%ではないので、やはり事前に予防接種を受けておくことが重要。抗体出現までの期間を考えるとそろそろ打っておかないといけませんね。

 現在主流となっているワクチンはMRワクチンという麻疹・風疹の二つの混合ワクチン。風疹も未だ海外で気を付けたい感染症なのでMRワクチンを今のうちに接種しておくと安心です。

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【厚生労働省「年末年始における海外での感染症予防について」より。】
日本国内において、麻しんは、2015年、2016年それぞれ35例、159例(暫定)の報告があり、すべて海外での感染例とその方と関連した例とされています。また、2017年には、ヨーロッパでも15,000人を超える発生例が報告されました。
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 その他の気を付けたい感染症として、蚊やマダニなどが感染源となるマラリアやデング熱、ジカウイルス感染症など多くの感染症が挙げられています。こういった感染症は発展途上国を中心とした衛生基盤の弱い地域で顕著です。渡航先の感染症についてあらかじめ調べておくことが重要です。

■ 渡航先が決まっている人は

 「外務省 海外安全ホームページ」で渡航先の安全に関する情報を総合的に得る事ができます。また、いざという時、在外公館などから緊急時情報提供を受けられる海外旅行登録システム「たびレジ」に登録しておくとお役立ち情報の提供、 緊急時の情報提供や緊急時の連絡を受ける事ができますので海外に行く人は登録しておく事をお勧めします。

外務省 海外安全ホームページのスクリーンショット

■ 海外で病気を拾ってこないために

 何より大事なのは予防する事です。海外の衛生事情は日本とかけ離れている地域も多々あります。海外では生水・生ものの飲食は危険と覚えておくと安全です。サラダなどの生の料理は避け、水道水は口にせずにペットボトルの水を使うのがベスト。また、氷も屋台や不衛生な飲食店ではウイルスなどに汚染されている懸念のある水を使って氷を作っている可能性が非常に高いので気を付けましょう。衛生的な飲食店で完全に火を通したものを食べる事を心掛けてください。

 流水での石けんを使った手洗いを行うのは言うまでもありませんが、旅先できれいな水を十分に使えない事が予想されるときは除菌ウエットティッシュを持参していきましょう。

 寒い日本から暖かい地域へ、と熱帯地方へ行く人はマダニや蚊に刺されないために長袖長ズボン着用を心掛ける事も大事です。日本では見ない感染症も海外では虫や動物を介して移されるものもまだ多くあります。渡航先でどのような感染症があるかを確かめる事が必要です。

 海外での医療費は保険制度のある日本と違い、一度の診察でもかなりの高額になる事があります。また、入院などとなると何百万という治療費が必要となる事も。こうした事態を防ぐためにも旅行保険へ加入しておき、予防できるものはしっかりと予防して、渡航先から病原菌を持ち込まないように心がけてください。

<参考サイト>
年末年始における海外での感染症予防について|厚生労働省
東京都感染症情報センター 麻しんQ&A II ワクチン関連