イタリア海軍の空母カヴールが2021年2月13日(現地時間)、アメリカのヴァージニア州にあるノーフォーク海軍基地へ入港しました。イタリア海軍では、空母艦載機AV-8BハリアーIIの後継としてF-35Bの導入が決定しており、アメリカでF-35Bの運用訓練を重ね、2024年に予定される完全運用能力獲得を目指します。

 イタリア海軍のカヴールは、2009年に就役したSTOVL空母。全長244mで、海上自衛隊のいずも型護衛艦と長さの面ではよく似ており、ヘリコプターのほか艦首にスキージャンプ勾配を備え、AV-8Bを艦載機として運用しています。

空母カヴール(Image:イタリア海軍)

 イタリアでは空軍がF-35Aを導入し、すでに作戦能力を獲得済み。続いて海軍でもAV-8Bの後継機としてF-35Bも調達が決定し、2016年1月末に1号機を受領しています。

空母カヴールの航空オペレーションルーム(Image:イタリア海軍)

 カヴールは現在、2024年のF-35B完全運用能力獲得を目指した訓練「Ready For Operations(RFO)」が進められています。今回はF-35Bの運用経験が豊富なアメリカに協力してもらい、実際にF-35Bの発着艦を含めた運用ノウハウを訓練するため、アメリカ東海岸のノーフォークへと遠征しました。

ターラントを出発する空母カヴール(Image:イタリア海軍)

 艦長のジャンカルロ・チャッピーニ大佐以下、約600名が乗り組んだカヴールは、1月28日に母港ターラントを出発して大西洋を横断。ノーフォークでは、岸壁にイタリアとアメリカの国旗を持ったアメリカ兵が立ち、イタリア海軍の旗艦を出迎えました。

イタリア・アメリカの国旗を掲げてカヴールを出迎えるアメリカ兵(Image:U.S.Navy)
ノーフォークに接岸した空母カヴール(Image:U.S.Navy)

 イタリア・アメリカ両国の関係者が出席した入港式典では、イタリアのアルマンド・バリッキオ駐米大使が「イタリアとアメリカは国交樹立160年を迎えました。私たちは友人同士であり、ジェノヴァを旅立った船乗りが未知の波と海流を乗り越えてやってきた遺産に立脚しています」と、かつてジェノヴァを出帆してアメリカ大陸へ着いたクリストファー・コロンブスを引き合いに出し、両国関係の深さを語りました。

入港式典であいさつするバリッキオ駐米イタリア大使(Image:イタリア海軍)

 今回の訓練でホスト役となる、アメリカ海軍第2艦隊司令官のアンドリュー・ルイス中将は「同じNATOの同盟国とともに西大西洋で活動することは、双方の海軍力を高める有益な機会を提供してくれます。同盟国イタリアの空母運用能力獲得への協力を通じ、私たちも戦闘力や安全性に関する集合知を向上させることができます。ともに強くなりましょう」とあいさつし、カヴールを歓迎しました。

ノーフォークに到着した空母カヴール(Image:U.S.Navy)

 カヴールのチャッピーニ艦長は「第2艦隊の皆さんが温かく歓迎してくれたことを深く感謝します。私たちは同盟国と航海し、訓練する貴重な機会を大切にしており、アメリカ海軍の皆さんとF-35Bの運用能力獲得という重要なプロセスを共有できることを誇りに思います」と語り、アメリカのF-35運用経験を吸収する機会に感謝の意を表しました。

ノーフォークの岸壁で空母ジョン・C・ステニスと並ぶ空母カヴール(Image:イタリア海軍)

 訓練では、パタクセントリバー海軍航空基地のテストパイロットらが協力し、イタリア海軍にF-35Bのノウハウを伝えます。このほか、空母ジョン・C・ステニスも補給や救難ダイバー、医療サービスなどを通じ、訓練に協力する予定です。

※初出時、1か所「F-35」を「F-36」と誤って表記しておりました。お詫びして訂正いたします。

<出典・引用>
イタリア海軍 プレスリリース
アメリカ海軍 ニュースリリース
Image:イタリア海軍/U.S.Navy

(咲村珠樹)