病棟や処置室などで、患者さんの採血をする業務は大体看護師が行っています。夏場、半袖から出ている腕を見てつい、「あ、この人の血管いい感じ」とチラチラ見てしまう職業病も大体の看護師は持っているはず。そんな採血、確実にやれると思ったのに何故か失敗する事があります。そんな時の様子を描いた漫画に、患者側からも看護師側からも共感の声があがっています。

 医療クラスタなら一度はお世話になっているであろう、メディカ出版の書籍「ズルいくらいに1年目を乗り切る看護技術」公式ツイッターアカウント「ズルカン@新人ナース応援!」で、看護師あるあるな漫画を描いている中山さん。「難しい採血に失敗したとき、メンタルが負傷兵のようになる…って…いうだけの…漫画。確実に採れそうな血管でも、無事に採れるまでは『採れます。』とは…言わない…たまに…何故か針刺した瞬間に消える…忍者系の血管も…いるから………。明日も頑張りましょう」と、その時の様子を漫画にしています。

 患者さんへの採血から戻ってきた中山さん。その表情は険しく、「採血できましたか!?」という同僚ナースに「ダメだ……手強すぎる……」「確実にとらえた!!―と思いきや、逆血がないんだ。どう考えてもそこに血管があるのに……“大丈夫です!とれます”みたいな空気で刺したから……気まずい 気まずい……」と。ちなみに逆血とは、針を刺した後に血液が針に付いているチューブに上ってくる事。これを確認できないと、血管に確実に針が入ったといえません。

 「慢心したわね」そこに登場したのは、主任看護師。「たとえどんな血管でも無事採血できるまで『とれます』とは言わない方がいいわ……」と。「いいわ、次は私が行く。みんなは中山さんのメンタルケアを。―で、採血管は何本?」「8本です」「え」。8本って……。看護師時代の経験を思い出した筆者でも、8本は経験ありません。医師からオーダーが出る採血の数は、よく出る数で2~3本、多くても4~5本。8本って余程特殊な検査でもあるのだろうか……。

 ちなみにこういう“忍者系血管”の持ちの人は意外といて、目視できるところに血管を確認できるのに、針を刺すと何故か逃げるんです。するりと。他にも、目視できないけど腕を駆血帯(血管を出すためのゴム管やベルトなど)で締めるとやっぱり見えなくても触るとそこに存在を確認できたり、駆血帯で締めてもやっぱりそこにいて欲しい場所に血管が浮いてこなかったり、と人によって本当に様々。

 筆者は割と採血は得意な方だったので、処置室でよく失敗したナースのピンチヒッターをかって出ていましたが、逆に自分がとれると思ったのにできずに、交代してもらうという事も。2~3回失敗したら交代、は多分どこで採血しても暗黙の了解のはず……。高血圧で血管が固くなっている人だと、針を刺した時に血管が横滑りして一発で仕留められない事があります。また、ここだと思って刺したところに、文字通り忍者のごとく消え失せてしまう事も。針を刺されたまま、血管を探られてぐりぐりやられた人もいるかもしれませんが、一発で血管に入らなかったら探ってはダメなのです……。

 これを読んだ同業者からは、「めっちゃあるあるw高齢者だと余計キツい」「気軽に後輩ちゃんの『代わってください』引き受けたときよくあるね」「ベテランナースさんでも同じ経験されてると分かって安心しました」とあるあるな共感が。

 一方患者の立場の人たちからは「年に5~8回の入院してたのですが、忍者血管で7~8回刺し直されてました……。」「手の甲で採ってもらう人間だから。血管現れんし逃げるし手が冷えすぎて見つからんって言われる」「自分、今まで行く先々で負傷兵を出しまくってきた血管の持ち主なので本当にこういうの申し訳なく思います…。」と、失敗される側にもメンタルにきたり……。さらにツラいのが、採血の途中で血が出てこなくなって、結局刺し直しになったりなど。お互いが気まずい思いをしてしまう羽目になるんです。
  
 患者さんの立場の人は、もうそういう体質だから仕方ないと割り切り、申し訳ない気持ちも捨ててしまいましょう。採血する人は、「自分はゴルゴ13」だと思い込み、一撃必中の気持ちを。そしてどう見ても自分では無理そうなら思い切って他の上手い人に託す事も必要かもしれません。本当にどうしようもなければ、医師が必ずとる事ができる動脈から採血しますから……(動脈から採血できるのは医師のみです)。

<記事化協力>
ズルカン@新人ナース応援!さん(@zurukan2018)

(梓川みいな/正看護師)