北海道札幌市が日本で初めてとなる「犬や猫は生後8週間は親と一緒に飼育してから譲渡する」との努力目標を盛り込んだ「札幌市動物愛護管理条例」を可決しました。3月末に報道され、動物好きな人たちからは「やっと日本もそうなるか」「札幌に他も続いて欲しい」などの声がネットにはあげられています。なお、施行は10月からです。

現在の日本の法律では生後45日、すなわち約6週間を過ぎれば販売していいことになっています。
けれどこれ、犬猫にとっては移動や環境を変えるにはまだまだ不十分な期間。

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ペットショップで売られる猫

一般的に生まれた子供は母親のお乳を吸って育ちます。この初乳には母親の持つ免疫力である『移行抗体(母子免疫)』が含まれており、無抵抗な子供の体をウィルスや細菌から守ります。6週間ではまだ離乳時期ではないために、伝染病などの病気にかかりやすくなります。

さらに、この時期は親や兄弟と遊ぶことで大事な社会性を見につける時期でもあります。
そのために、生後6週間で売りに出された仔たちは非常にしつけがしにくく、飼ったはいいけど懐かない、と棄ててしまう人が非常に多いと言われています。

ちなみに欧米で特にイギリス、フランス、ドイツ、アメリカの一部の州では法律で明確に母子分離を8週間後からと定めています。

■抜け道だらけ?日本の動物愛護法

2013年9月施行、改正動物愛護法 第22条の5には、出生後56日(8週間)を経過しないものについては、販売のための引っ越しや展示は行ってはならないとしているものの、附則第7条1により施行日から3年をたつ日までは「45日」とされています。
つまり2013年9月の施行日から3年間は45日で移動も展示も行えるということです。

「なら今年9月に8週間適用じゃないか。札幌なにやってんの?」と思われるかもしれませんが、実はこれには続きがあり、附則第7条2には、第7条1の期間を経過した翌日から、別に法律が定める日までの間、第22条の5の「56日」は「49日」にすると書かれているのです。
つまり9月になって変わるのは、期間が4日延びるだけ。45日→49日(7週間)になるだけです。

どうしてこんなことになったのか……。なにかずるずるにするだけの「ずぶずぶ」な背景があるのかもしれません。

【動物愛護法】
▼動物愛護法 第22条の5
犬猫等販売業者(販売の用に供する犬又は猫の繁殖を行う者に限る。)は、その繁殖を行つた犬又は猫であつて出生後五十六日を経過しないものについて、販売のため又は販売の用に供するために引渡し又は展示をしてはならない。

▼附則 第7条1
施行日から起算して3年を経過する日までの間は、新法第二十二条の五中「五十六日」とあるのは、「四十五日」と読み替えるものとする。

▼附則 第7条2
前項に規定する期間を経過する日の翌日から別に法律で定める日までの間は、新法第二十二条の五中「五十六日」とあるのは、「四十九日」と読み替えるものとする。

(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S48/S48HO105.html)

■日本はペット販売について発展途上国

日本はペット販売事情については海外に恥ずかしいほど発展途上国です。
海外では禁止している国が多いペットショップでの陳列販売も日本では当たり前の風景です。
直接繁殖させたブリーダーから買い受けるのではなく、ブリーダーが競り市や大手ショップや問屋、ブローカーに卸し、そこからさらにペットショップを経由させるという販売方法はペットには当然優しくなく、2014年度に国内で流通した犬猫75万匹のうち2万3000匹あまりは死んだとも言われています。

無事、飼い主さんの下に引き取られても数日足らずで突然死してしまった、なんて言う話も決して少なくはありません。その場合はペットショップから「先天性の病気があった」なんて言う説明を受けたりもするそうです……。

ビジネス大国ゆえの拝金主義だと後ろ指さされまくっている日本でも、札幌市のように英断に踏み切る自治体が今後もっと増えていくことを願うばかりですね。

(文:大路実歩子)