縄文時代の遺跡から出土する遺物の中で、土器と並んで人気の高い土偶。特に、まるでサングラスのようなものを装着している「遮光器土偶」は、その特徴的な姿から様々なイマジネーションの源となっています。

 木製の台に、ちょこんと立っている遮光器土偶のポッドも、そういったもののひとつ。寸詰まりの体型が、より可愛さを感じさせてくれます。

 遮光器土偶ポッドの作者は、造形作家のアイウエヲさん。イラストや模型、造形作品などを幅広く手掛ける方で、この作品は3Dプリンタで出力したものだそうです。

土偶ポッド(アイウエヲさん提供)

 モチーフになっているのは、青森県つがる市(旧:木造町)の亀ヶ岡遺跡で出土した、縄文晩期の遮光器土偶(高さ34.2cm)。現在は上野の東京国立博物館に収蔵されており、国の重要文化財に指定されています。

 この土偶は左足部分が欠損しているものの、遮光器土偶の優品として名高く、出土したつがる市にあるJR五能線の木造駅は、高さ17mの駅舎がその形をしていることでも有名。

 地元では「シャコちゃん」の愛称で知られ、列車の到着時には、目(遮光器)に仕込まれた7色4パターンのLEDライトが光る「いらっしゃいビーム」が名物となっています。

 土偶が何に使われていたのか、その位置付けは考古学者の中でも意見が分かれており、大きな謎となっています。アイウエヲさんも、謎に満ちた土偶に魅せられ「創作の対象として無限の可能性を秘めているように思えるのです」と語ります。

 そんな「シャコちゃん」こと亀ヶ岡遺跡出土の遮光器土偶をモチーフに、筒形の形状にデフォルメして愛され度を高めた、というのが遮光器土偶ポッド。筒形の形状にした理由は「私たちの生活の中で、ほぼ日常的に触れる形」だからなんだとか。

寸詰りな円筒形のフォルムが愛らしい(アイウエヲさん提供)

 円筒は階段の手すりやコップ、様々な容器などポピュラーな形状。「手に取った瞬間、安心や楽しさを提供してくれる形状」と語り、手に取ってみたくなるものとして、このポッドをデザインしたといいます。

 作品の画像をツイートしたところ、大きな反響があったそうで、中でも漫画家の麻宮騎亜(菊池道隆)さんから、デザインについてお褒めの言葉をもらったことが嬉しかった、とアイウエヲさん。

 また多くの方から「欲しい!」というリクエストが寄せられたとのこと。これについては「現状個人では量産体制を作ることができないので」と申し訳なさそうに回答してくれました。

 しかし、まったく可能性を否定するのではなく「もし何かの縁で製品化されることがあれば……」とも話してくれたアイウエヲさん。「自然と自分たちを同一視していた縄文の世界観を感じさせてくれる媒介役」という土偶への愛が、どこかのメーカーに届いてくれることを願いたいですね。

<記事化協力>
アイウエヲさん(@nanashi_san99)

(咲村珠樹)