アメリカミサイル防衛局(MDA)は、2021年9月12日(現地時間)に地上発射式の弾道弾迎撃ミサイルの試験を実施しました。この試験では3段式迎撃ミサイルのうち、3段目ブースターを作動させない形で発射されましたが、問題なく迎撃が可能であることが証明されています。

 弾道ミサイル防衛は失敗が許されず、迎撃ミサイルには非常に高い信頼性が要求されます。通常、迎撃ミサイルは発射したあと予想される弾道ミサイルの飛行コースに合わせて飛んでいきますが、場合によっては予想コースと異なることも起こりえます。

 アメリカミサイル防衛局は、弾道ミサイル防衛システムのうち、地上発射式迎撃ミサイル(GBI)のアップグレードをメーカーであるボーイングと共同で実施。3段式のブースターで最終段に当たる3段目を作動させなくても弾道ミサイルを撃破できるよう、フライトプログラムを柔軟に変更できる仕様に改修しました。

 この試験で、3段式の迎撃ミサイルは発射後、3段目のブースターを使用しない「2段式モード」で管制を受け、早めに弾頭をリリース。より早い段階で弾道ミサイルを模擬した標的を撃破することに成功しました。

地上発射式迎撃ミサイルの発射(Image:アメリカミサイル防衛局)

 アップグレードされたフライトプログラムは、発射後の状況に応じ、リアルタイムで管制官が「2段式モード」と「3段式モード」を柔軟に選択し、ミサイルの飛行コースを変更。迎撃対象の場所や速度に対応した、適切な時点での迎撃を可能にします。

 これはフライトプログラムの書き換えで対応できるため、既存の迎撃ミサイルを継続して使用できます。このため、新たなミサイルを導入するコストが圧縮され、予算面でも有利に働きます。

 ボーイングで、このプログラムを統括するデビー・ベネット副社長は、試験成功を受け「これまで20年以上にわたり、ボーイングはこの迎撃システムを開発、導入、維持を続けてきました。私はこの弾道ミサイル防衛システムで、今後何年もアメリカの国土防衛に貢献できることを誇りに思います」との談話を発表しました。

 アメリカミサイル防衛局長官のジョン・ヒル海軍中将は「今回の試験は、2段モードを選択可能な新しい構成における最初のものでした。システムは設計通り動作し、試験の結果は選択可能なブースターが幅広い戦闘空間に対応できることを示しました。地上発射式迎撃システムは国土防衛の基幹であり、この試験は次世代の迎撃システム開発を飛躍的に促進させるとともに、既存の迎撃ミサイルに拡張された機能をもたらします」とのコメントを発表しています。

 アメリカミサイル防衛局では、今後も試験を重ね、システムの信頼性を高めるとしています。弾道ミサイルを幅広い局面で迎撃可能にする今回のアップグレードは、アメリカの国土防衛で大きな役割を果たしそうです。

<出典・引用>
アメリカミサイル防衛局 ニュースリリース
ボーイング ニュースリリース
Image:アメリカミサイル防衛局

(咲村珠樹)