夏真っ盛りということで欠かせないのが水分補給。火照った身体を、冷たい食べ物で涼を取るのは夏の風物詩のひとつ。ちなみにこの夏の筆者のトレンドはソフトクリームです。ひんやり冷たいソフトをひと舐めして身体がスーッとする瞬間は実に快感。

 そんなソフトクリームですが、一風変わった形状のコーンが先日Twitterで大きな話題になったんです。

 「『火焰土器型ソフトクリーム容器』と『ミス馬高土偶スプーン』約1万6000年も前から日々を豊かに彩りながら生活をし、そして今なお『映え』という形でその文化が続いているということに長い時間を飛び越えて身近さや親しみを感じますね!」

 そうつぶやきながら、投稿者のNぼっくす+さんが手に持っているのは、ソフトクリーム……にコーンではありますが、私がよく見る形状よりは少々歪な形状のもの。ん、何々火焔(かえん)土器とな?

 火焔土器といえば、縄文時代に日本の各地で作られたその名の通り炎のような形状の土器だったはず。それにこのスプーン上のものは、確か新潟県長岡市で出土された、同じく縄文時代を代表するセクシーな土偶「ミス馬高(うまたか)土偶」を模したもの。

 まるでタイムスリップしたかのような“縄文土器”を使ってソフトクリームを食べている場所は、もちろん令和の世の現代日本。そしてこちらの土器も、無論本物ではなく3Dプリンタにて作成されたものなんです。

 投稿者のNぼっくす+さんは、3Dプリンタを駆使した創作活動が趣味で、その作品がSNS上でも何かと話題になる方。

 こちらの容器も、夏に入って食べる機会の多くなったアイスを見て思い立ったそうなんですが、今回はとあるものを活用したんだとか。

 「ちょうど色々調べる過程で、縄文文化財をオープンソース化して、誰でもその造形が出来るサイトを見つけたんです。とても素敵な取り組みだと感じたんで、その周知も兼ねて、今回はそちらを活用させていただきました」

 ちなみにオープンソースというのは、用途を問わずに自由に使用してもらうために一般公開されている「ソースコード」のこと。今回Nぼっくす+さんが活用したオープンソースは、東京オリンピックを契機に縄文文化を世界に向け広く発信するため、経済界・文化界や地方公共団体の首長などが協力して2016年に設立された「縄文文化発信サポーターズ」の、公式ホームページ上に公開されているもの。

 筆者も、今回Nぼっくす+さんに話を伺った後に、実際にホームページを拝見したのですが、そこには先述した火焔土器やミス馬高土偶のデータが公開されていました。

 そのソースコードでサイズを調整してから、専用の3Dプリンタで出力したというのですが、その所要時間は15時間程度だったそう。しかしながら、古代文明を世界に向けて周知していくのは、大変素晴らしい試みと筆者も共感したのですが、まさかオープンソースを用いるとは!

 実際に出力されたものは本物の縄文土器そっくりであり、「少しでも縄文感を出したかった」というNぼっくす+さんの粋な計らいで、バックを田んぼにして撮影したその風景は、縄文時代にタイムスリップしたかのような感覚に陥った方も多いのではないでしょうか。

 ちなみに今回はオープンソースを活用したというNぼっくす+さんですが、ミス馬高土偶を模したスプーンに関しては実はオリジナルで作成したもの。「“火焔土器”で冷たいソフトを食べるという構図をより楽しみたくて」とスプーンは別途で作ってしまうあたり、さすがその作品が都度SNSで話題になるNぼっくす+さんです。

 ただ残念ながら、今回の火焔土器コーンは、本物のコーンに質感が似ている材質のものを使用したということで、食べられるものではないとのことでした。

<記事化協力>
Nぼっくす+さん(@cTstZKtDOlRIN1z)

(向山純平)