アメリカ空軍は2020年8月6日(現地時間)、制服組トップである参謀総長の交代式をメリーランド州のアンドルーズ統合基地で開催し、前太平洋空軍司令官のチャールズ・クィントン・ブラウン大将(愛称:CQ)が、黒人(アフリカ系アメリカ人)初の参謀総長として正式に就任しました。

 ブラウン大将は、テキサス工科大の空軍予備役将校訓練課程(ROTC)を1984年に卒業して空軍入り。F-16の戦闘機パイロットとなり、1991年にはエリート養成課程である空軍武器学校(空軍版トップガン)の教官課程を修了しています。

 その後は空軍武器学校の校長や、第8戦闘航空団、第31戦闘航空団の司令官を歴任し、アメリカ中央軍副司令官を経て、2018年7月には太平洋空軍の司令官に就任しました。これまでの総飛行時間は2900時間以上、うち130時間は実戦によるものです。

 前任者のデイビッド・リー・ゴールドファイン大将から引き継ぎ、第22代空軍参謀総長に就任した“CQ”ブラウン大将。交代式の会場には、第二次世界大戦中のアメリカ陸軍航空隊に存在した黒人戦闘機部隊「タスキーギ・エアメン」も使用していたP-51Dが真ん中に据えられ、黒人初の空軍参謀総長誕生を象徴するものとされました。

 また、アンドルーズ統合基地上空では参謀総長交代を記念して、サンダーバーズとP-51、A-10、F-16、F-22による祝賀飛行も実施されています。



 配偶者のシャレーンさんから、参謀総長の帽子を被せてもらったブラウン大将。そのままシャレーンさんの持つ聖書に手を添え、バレット空軍長官に参謀総長としての服務の宣誓をしました。


 あいさつに立ったブラウン大将は「今日、私がここにいるのは、多くの先人たちの忍耐と努力が、私やほかの多くの人へインスピレーションを与えてくれたからだと思っています。例えばタスキーギ・エアメン、その司令官であり陸軍初のアフリカ系アメリカ人将官、ベンジャミン・オリバー・デイビスJr.、アフリカ系アメリカ人初の大将であるチャッピー・ジェームズ(ダニエル・ジェームズJr.)、そして本日の来賓、アフリカ系アメリカ人初の宇宙飛行士候補生であるエド・ドワイト(エドワード・ジョセフ・ドワイトJr.)さんをはじめとする、過去から現在に至る空軍や軍のアフリカ系アメリカ人リーダーたちです。皆さんの挑戦と苦難を経て障壁が取り払われ、今ここに私が空軍参謀総長としていられるのです」と、ここに至るまでの人種差別と戦い、地位を勝ち得てきた先人に敬意を表しました。


 エスパー国防長官は、退任するゴールドファイン参謀総長に「ゴールドファイン大将、いや、デイブ。空軍の将兵たちは、あなたの卓越したリーダーシップと、空軍の要諦である誠実・奉仕・卓越を日々維持するよう努めてくれたおかげで、今日の成功があるのです。アメリカ合衆国は、あなたのおかげで安全でいられました。これまで我が国に尽くしてくれて、心から感謝しています」と、これまでの労をねぎらいました。

 また、第22代参謀総長となったブラウン大将には「私がペンタゴンに戻れば、ブラウン大将は35年以上もの経験に根差した深い専門知識をもたらす、我が国の次期空軍参謀総長として並外れた資質を有しています。必ずや空軍をより高い場所へ導くと確信していますし、そのリーダーぶりを目にするのを楽しみにしています」と期待の言葉を贈っています。

 ゴールドファイン第21代空軍参謀総長は、退任にあたりブラウン大将と同じように、自分を支えてくれた人々の名を挙げ、感謝の意を伝えました。特に、カレス・O・ライト最先任上級曹長(アフリカ系アメリカ人として2人目の最先任上級曹長)に対しては「私の僚機(ウイングマン)」と呼び「私が参謀総長として下した決断の中で最高だったのは、ライト曹長を最先任上級曹長に抜擢したことです」と、最上級の賛辞を贈っています。




 ゴールドファイン大将は、空軍参謀総長退任にあたり、エスパー国防長官から国防総省で最上位の勲章であるディフェンス・ディスティングシュドサービスメダル(Defence Distinguished Service Medal=防衛卓越功労章)が授与されました。あわせて、配偶者のドーンさんには国防総省特別功労賞(Department of Defense Distinguished Public Service Award)が授与されています。

<出典・引用>
アメリカ空軍 ニュースリリース
Image:USAF

(咲村珠樹)