アメリカ空軍は2020年7月13日(現地時間)、F-15の性能向上型であるF-15EXをボーイングに8機、総額約12億ドル(約1288億円)で発注したことを発表しました。F-35Aの調達と並行して多彩な兵装搭載力を有するF-15を更新し、トータルの攻撃力を維持する方針です。

 F-15EXは、ボーイングが提案していたF-15C/Dの性能向上型。F-15Eと同じく複座(2人乗り)となり、胴体に増加燃料タンク(コンフォーマルタンク)を装備し、そこにも兵装ステーションを設けることで、より多くのミサイルや爆弾を携行することが可能となります。

 また、各部のセンサー類もアップデートされるとともに、搭載するコンピュータも刷新。オープンアーキテクチャのミッションシステム(OMS)を採用することで、最新の状態に更新し続けることが容易になっています。

 F-35Aなどとのミッションに対応できるよう、高いレベルの情報通信・連携技術や電子戦システムも採用。これにともない、操縦系統も従来の油圧式からコンピュータが介在するフライ・バイ・ワイヤとなり、コクピット計器も大画面の多機能ディスプレイとなります。ミッションシステムは既存のF-15にも適応可能です。

 アメリカ空軍航空戦闘軍団(ACC)司令官のマイク・ホルムズ大将は、F-15EXについて「もっとも手頃かつ早期に老朽化したF-15C/Dを更新し、能力を向上させる選択肢です。F-15EXは部隊に到着してすぐ、戦闘に参加可能となるでしょう」と評しています。

 ボーイングでF-15EX計画を統括するロリ・シュナイダー氏は「F-15EXはデジタル技術を中心とした、F-15で最も進化したバージョンです。比類なき作戦行動半径、価格競争力、そしてクラス最大級の兵装搭載力により、アメリカ空軍にとってもっともお得な選択といえます」とのコメントを発表しています。

 F-15EXに搭載される能力の一部は、2020年に納入が始まったカタール空軍向けのF-15QAに採用されており、すでに実用化されています。このことからも、F-15EXの開発・調達のプロセスは従来よりも大きく短縮されているといっていいでしょう。

 F-15EXは2020年度予算で8機の調達分が計上され、今回の契約ではこの8機の開発・製造から、試験に関わる様々なサポート費用が含まれます。2021年度の要求予算では12機分の調達を計上しており、アメリカ空軍は今後5年間で76機の調達を計画しています。

<出典・引用>
アメリカ空軍 ニュースリリース
ボーイング ニュースリリース
Image:USAF/Boeing

(咲村珠樹)