新型コロナウイルスの感染拡大で、特に体力や抵抗力が低下している高齢者は、感染した場合に重症化するリスクが高いと考えられています。ドイツでは高齢者への感染予防策として、軍が自治体と協力し、日常の買い物を代行するサービスを行っています。

 これまで新型コロナウイルスによる肺炎では、体力や抵抗力の低下した高齢者が重症化する例が目立っています。重症肺炎となると人工呼吸器やその管理に人員が割かれ、地域医療の体制に大きな影響を与えるため、リスクは可能な限り低下させる必要があります。

 外出時、徒歩で移動することの多い高齢者は、感染リスクと重症化リスクの双方が高くなりがち。このためドイツでは、軍が買い物を代行し、高齢者のもとへ配達するサービスを始めています。

 ブレーメンから北へ100kmほど離れたニーダーザクセン州の港町、ヴィルヘルムスハーフェン。19世紀から軍港として栄え、現在もドイツ海軍の第2機動隊群(EF 2)が司令部を置いています。ここでは市と海軍が連携し、行政支援の枠組みを使って高齢者を対象にした買い物支援を行っています。

 システムとしては、まず市が高齢者世帯向けに買い物用の資金を支給。これをもとに利用者は市のホットラインに買い物依頼を行い、市のコーディネーターが近くにいる軍のボランティア(2名1組で活動)に依頼を伝達。兵士らは最寄りのスーパーで買い物して、その品物を利用者宅へ届けます。タクシーの配車システムに似ていますね。

 スーパーに迷彩服姿で現れた兵士に、買い物客はギョッとした様子も見せますが、腕章に書かれた「BUNDESWEHR HILFT(軍の救援)」の文字に、支援活動で買い物に来ているのだと理解するようです。レジでの会計待ちでは、いわゆる「ソーシャル・ディスタンシング(対人間隔の確保)」の原則に沿って、各自が一定間隔を開けて列を作ります。

 第2機動隊群のアンドレアス・ククラー司令官は「私はヴィルヘルムスハーフェンのカーステン・フェイスト市長と話し合い、軍が危機に瀕する市民に貢献したい意志を伝えました。市が単独で買い物支援を行うには人員が足りないので、ニーダーザクセン州からの承認を受けて、この事業を始めたのです。利用者はどんどん増えています」と語っています。

 海軍では買い物ボランティアを行う人員のほかにも、配達をするための車を10台提供。市内のお店と高齢者宅を結んでいます。ボランティアには消毒液が標準装備として支給されており、手や触れるものを消毒してウイルス感染を防いでいます。

 利用者宅へ届ける際も、玄関先に置かれたバスケットに品物を入れ、利用者と対面して感染リスクを高めないように配慮されています。バスケットに利用者が事前に代金を入れた封筒を入れておき、それと交換する形で受け渡しは完了。

 このような仕組みは、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、不要不急の外出自粛を要請された日本でも参考になりそうです。常に市民に寄り添い、市民の安全を守る存在として、ドイツでは軍が機能しています。

<出典・引用>
ドイツ連邦軍 ニュースリリース
Die Streitkräftebasis(@SKB_JSES)
※画像はDie Streitkräftebasis(@SKB_JSES)のスクリーンショットです。

(咲村珠樹)