アメリカミサイル防衛局は2019年8月30日(現地時間)、THAAD迎撃ミサイルの発射試験を行い、離れた場所にある無人の発射機からミサイルを発射し、標的の破壊に成功したと発表しました。報復攻撃の危険から兵士を遠ざけ、運用面の幅が広がることが期待されます。

 在韓アメリカ軍へ配備されたことでも知られるTHAAD(Terminal High Altitude Area Defense)ミサイルは、落下してくる弾道ミサイルの弾頭を高い高度で迎撃・破壊し、脅威を排除するもの。航空自衛隊が装備するペトリオットPAC-3よりも早い段階での迎撃が可能なミサイルシステムです。

 今回マーシャル諸島クェゼリン環礁で実施された試験は、FTT(Flight Test THAAD)-23と呼ばれるもの。アメリカミサイル防衛局と弾道ミサイル防衛システム試験局が主導し、アメリカ陸軍第11高射旅団(11th ADA)が実際のオペレーションを担当しました。

 通常、THAADミサイルシステムはレーダー、電源、火器管制システムなどと発射機(ランチャー)は一体となって行動し、同じ場所に展開して運用されます。しかし今回の試験では、発射機を別の離れた場所に設置し、遠隔操作で発射管制ができるよう、新たに開発されたシステムが試されました。

 試験では、空中発射された中距離弾道ミサイル標的をTHAADのレーダーが捕捉。その情報は火器管制システムを通じ、離れた場所にある無人の発射機に装填されたミサイルに送られ、発射。見事に標的を破壊しました。



 これでTHAADは2005年以来、16回の迎撃試験に全て成功したことになります。アメリカミサイル防衛局のジョン・A・ヒル中将は「この試験で、THAADシステムの能力を拡張し、弾道ミサイルの脅威から我が国や同盟諸国を護る能力を改めて示しました」と試験成功を受けてコメントを発表しています。

 弾道ミサイル防衛において、報復攻撃の危険に最もさらされるのは、迎撃ミサイルを発射する場所です。ペトリオットを含め、これまでの迎撃ミサイルシステムは発射機だけでなく、全ての装置が同じ場所にいる必要がありました。

 しかし今回の試験で、離れた無人の発射機をコントロールしてミサイル発射が可能であることが証明されました。これは報復攻撃の目標になる「ミサイルを発射した場所」から兵士を遠ざけ、より安全な状態で弾道ミサイル防衛が可能になることを示しています。

 また、発射機だけを多数配置することもできるため、より高価なレーダーや火器管制システムの数を減らし、効率的に広範囲の弾道ミサイル防衛も可能になります。省力化・効率化を可能にする今回の試験は、非常に大きな意味を持つものだといえるでしょう。

<出典・引用>
アメリカミサイル防衛局 プレスリリース
Image:U.S.Missile Defense Agency

(咲村珠樹)