年末年始、ほとんどの人たちが旅先や家でまったりと過ごしている頃、試合開始のホイッスルが鳴る瞬間を心待ちにしている人たちもいました。

 2017年12月30日から2018年1月8日にかけ開催された『第96回全国高校サッカー選手権大会』。全国各地から未来のサッカー界を背負うであろう選手たちが一斉に集結する夢の舞台。

 この日にかけてきた選手たちの思いは、並々ならぬものだったのではないでしょうか。2018年1月8日に行われた決勝戦では、流通経済大柏高校(千葉)と前橋育英(群馬)が闘い、0対1で前橋育英が勝利を飾りました。

 そんな白熱した試合が繰り広げられている中、ピッチに立つ選手たちだけでなく、ベンチの応援団員たちも密かに注目を集めていたようです。Twitterユーザーのえんりゅうさんは、ベンチからある応援団の様子をスマホで撮影。この動画が「エール交換が面白い!」とTwitterで4800件以上もの「いいね」が付き、話題になっていました。

 2018年1月3日行われた3回戦『青森山田 VS 長崎総科大附』のベンチでの一コマ。緑色のユニフォームに赤いメガフォンを持った青森山田の応援リーダーの男子生徒が「カステラ大好き!」と大声で叫んだあと、団員が続きます。むむ? こちら長崎名物「カステラ」にかけたのだなと速攻で理解できたあと……、

「カースーテーラ大好き、カステラ、大好き♪」

と、野太い声で相手高校へラブの気持ちを2回伝えます。その後……熱い視線で相手の反応を見守る青森山田の応援団たち。

突如始まった青森山田の「カースーテーラ大好き、カステラ、大好き♪」

 あまりにも意表をつかれたのか、ピンクのユニフォームを身にまとった長崎総科大附側の応援団ベンチでは少しザワザワ。「どうする?(ヒソヒソ) どうこたえる?(ヒソヒソ)」とでも相談しあったのか、その後思いついたお返しエールがこちら!

突然のふりにざわつく長崎総科大附側

「あーおーもーりー大好き、青森大好き!」

と3回繰り返してエールのお返し。

でもすぐさまお返し「あーおーもーりー大好き、青森大好き!」

 ツイートには「名産品が浮かばなかったパターンか」「長崎さん、そこは『りんごも大好き~』とかにしないと」などツッコミも見受けられました。

 なお、唐突に始まったエール交換に、即座に対応した長崎総科大附に青森山田は、称賛の意味を込めてか、メガフォンを手で叩き拍手をおくっていました。

 今回のエール交換について、両校に話しを聞いてみました。まず青森山田に聞いたところ「今年のエール交換は必ずやる!」と決めていたそうです。エール交換は毎年恒例ではなく、選手の耳には届きづらいけれど、応援団の士気の高まりを目的に行ってきたとか。また、長崎総科大附側も「とくに事前申し合わせ等はありません。即興でやりとりしたものものです。」とコメントしています。

 動画をみる限りでは、もしかしたら両校とも打ち合わせをしているのでは? と思ったのですが、全くの即席だそうです。リズムはエール交換の物を引用し、応援団長が考えたというのですから、驚きでした。

 今回話を伺った青森山田は前回覇者。2連覇を狙っていましたが、この試合で敗退しています。取材に応じてくださった、サッカー部スタッフの方は敗退が決まった直後が今回の全国高校サッカーで最も印象に残っているといい「スタッフがピッチで立ち尽くしていた選手を労っていた所を見たとき。スタッフと選手の絆が見えた」と語っています。

 一つ一つの試合に物語があり、うれし涙を流す者があればくやし涙を流すものもある。そして応援席にはそれを見守り支える人たちが必ずいる。即席で行われた応援団たちの熱いエール交換。高校サッカーでは試合の外でも沢山の物語が生まれています。

<取材協力>
青森山田高等学校
長崎総合科学大学附属高等学校

<記事化協力>
えんりゅうさん(@enryu_FC_TOKO)

(黒田芽以)