国立科学博物館が保存している、戦後日本では唯一となる国産プロペラ旅客機YS-11の量産初号機(JA8610:愛称「ひとまる」)を一般公開する「YS-11量産初号機公開プロジェクト」。現在茨城県筑西市で組み立てが進む機体をバックに、研究者が日本の航空機産業におけるYS-11の意義を語るトークが、2020年10月10日14時から生配信されます。

 日本航空機製造(NAMC)YS-11は、戦後日本で唯一の存在である国産プロペラ旅客機です。その量産初号機(製造番号2003)は、1965年から運輸省(現:国道交通省)航空局の飛行検査機「ちよだII」として、1998年の引退まで日本各地を飛び回りました。

 関係者からは、登録記号のJA8610から「ひとまる」の名で親しまれたYS-11量産初号機。日本の航空史に残る貴重な存在であることから、国立科学博物館の収蔵品として動態保存されることが決定しました。

 1999年に航空局から移管された「ひとまる」ですが、大きすぎて国立科学博物館の館内、また茨城県つくば市にある収蔵庫に入りきらないため、羽田空港の格納庫を間借りして保存されてきました。この間、油脂類の固着を防ぐため、年に約4回の頻度で定期点検と回転部の動作確認を実施しています。

 定期点検では、塗装や部品類の劣化していく様子も詳細に記録。将来、産業遺産(機械類)を文化財として保存する際、どのようにすればいいかデータを蓄積する役割も担っています。

 国立科学博物館としては、ぜひとも公開したいという希望していたのですが、博物館本館に入らない大きさであることと、仮の保存場所としていた羽田空港のテロ対策などセキュリティの問題があり、長らく一般公開は果たせないでいました。このたび、茨城県筑西市の「ザ・ヒロサワ・シティ」が展示場所を提供してくれることになり、羽田空港からいったん分解して移送されたのです。

 現在は、かつてYS-11の整備に携わった人々らの協力で、展示に向けて施設内で組み立てが進んでいるYS-11量産初号機「ひとまる」。10月10日の14時から、その機体をバックに研究者がYS-11についてトークする番組を生配信することになりました。

 トークに登場するのは、長年にわたってYS-11量産初号機の保存に尽力し、今回のプロジェクトにおけるリーダーでもある、独立行政法人国立科学博物館・産業技術史情報センター長の鈴木一義さん。お相手は東京大学名誉教授・未来ビジョン研究センター特任教授で航空力学の権威、鈴木真二さんです。

 トークでは、日本の航空機産業におけるYS-11の意義や、今後の「ひとまる」保存活用について、幅広く語られる予定。これまでの歴史に秘められたエピソードなども披露されるようです。

 配信はYouTubeおよびニコニコ動画にて14時〜16時の予定。配信に協力しているネコビデオ・ビジュアル・ソリューションズの特設WEBページには、視聴に関する詳細な情報が掲載されています。

情報提供:文化庁

(咲村珠樹)