アメリカ軍の統合軍の1つ、北方軍は2020年5月29日(アメリカ東部時間)、北方軍をはじめとするアメリカ軍の4統合軍と北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)、海軍の空母ハリー・S・トルーマン打撃群による統合国土防衛訓練を31日まで実施していると明らかにしました。アメリカの各統合軍が共同で実施する国土防衛を目的とした訓練は、これが初めてのことです。

 この訓練はアメリカ東海岸から大西洋を舞台に、5月28日~31日の日程で実施されたもの。訓練のホストを務めるのはアメリカ北方軍(NORTHCOM)で、このほかに戦略軍(STRATCOM)、輸送軍(TRANSCOM)、宇宙軍(SPACECOM)のアメリカ統合軍、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)に、海軍の空母ハリー・トルーマン空母打撃群(空母ハリー・S・トルーマンとミサイル巡洋艦ノルマンディ)が北方軍の指揮のもと参加しています。

 アメリカ陸海空軍と海兵隊を一体として運用するために編成されている統合軍、それが合同でアメリカ本土防衛を目的とした訓練を実施するのは、2019年8月29日に宇宙軍が発足して初めてのこと。非常に大規模な訓練となりました。

 訓練の目的は、北方軍、戦略軍、輸送軍、宇宙軍の4統合軍にNORADを加えた5つの組織下にある部隊が、国土防衛や多国籍作戦、およびその指揮統制において、相互運用性を強化するというもの。全軍が一体となって任務を遂行するための基盤を確立し、強化することで、スムーズな参戦遂行能力を獲得することにあります。


 訓練全体の指揮官となる北方軍兼NORAD司令官、テレンス・J・オショーネシー空軍大将(2007年~2008年の三沢基地第35戦闘航空団司令官)は「複数の指揮系統にまたがる、複雑かつ複合的な戦闘作戦の指揮をとることで、新型コロナウイルスの感染拡大にも影響されず、祖国を防衛する体制が万全であることを示します。我々が積み重ねている高度な訓練は戦略的レベルで統合され、祖国防衛という任務のために重要な役割を果たしています」とのコメントを発表しています。

 オショーネシー大将は空母トルーマンで指揮をとるだけでなく、もと戦闘機乗りということもあり、VFA-211のF/A-18Fにも搭乗。空中から訓練を視察しています。

 この訓練では、参加部隊は「リンク16」と呼ばれるアメリカ軍やNATOで採用している戦術データリンクシステムを使用して各種データを共有し、組織的に作戦行動を行います。また、NORADはカナダ空軍のCF-18とアメリカ空軍のF-15が一体となって行動し、KC-135から空中給油を受けつつ、空母トルーマンのF/A-18と迎撃訓練を実施しました。

 アメリカ輸送軍は「ノーブル・イーグル」作戦として、東海岸にKC-135など空中給油機を滞空させて訓練を支援。アメリカ戦略軍はB-1B爆撃機を訓練の相手役として提供し、アメリカ本土を空襲しようとする爆撃機の動きをシミュレートします。

 また、2019年に発足したばかりの宇宙軍はGPSなど人工衛星からの情報を提供し、訓練を支援します。宇宙軍司令官のジョン・レイモンド宇宙軍大将は「現代の統合作戦は、宇宙での能力なしでは考えられません。この能力の普及と、それによってもたらされる情報は、アメリカ軍の作戦において比類なき展開速度や攻撃精度、破壊力を実現しています」と、現代戦闘における宇宙からの情報の重要性を指摘しています。

 人工衛星からもたらされる情報と、海に展開する空母、そして航空戦力とそれを支援するシステムが、戦術データリンクで統合されるという仕組みは、国土防衛でも重要な役割を果たします。しかし、それだけのシステムを維持できるのもまた、アメリカのような大規模な予算と軍あってのことだといえそうです。

<出典・引用>
アメリカ北方軍(USNORTHCOM) プレスリリース
Image:U.S.Navy/USAF

(咲村珠樹)