NASAは2020年3月20日(現地時間)、火星探査機「キュリオシティ・ローバー」が撮影した、最新のセルフィー(自撮り)画像を公開しました。これは、これまでのミッションで最急勾配となる岩山を登頂した記念に撮影したものです。

 キュリオシティ・ローバーは2012年の着陸以来、火星表面を移動しながら、様々な場所での地質標本を採取し、生命活動の痕跡を探っています。表面の土壌だけでなく、ドリルで地表面を掘削し、火星大気に触れていない“フレッシュな”サンプルも採取することができます。

 キュリオシティには科学ミッション用の装置だけでなく、ちょっと遊び心のある装置も搭載されています。火星着陸から1地球年(火星の公転周期による「1火星年」は約2.2地球年)となった2013年8月6日には、搭載した楽器で「ハッピーバースデー」を演奏したことも。この楽器は一応、地球と異なる大気組成・気圧の火星で音はどのように伝わるか、という調査のために搭載されたものです。

 ロボットアーム先端に取り付けたカメラで、セルフィーも定期的に撮影しています。これは火星の地表面でキュリオシティがどのような状態でいるのか、ということを画像で確認する、というのが理由の1つ。センサーからもたらされる数値とは比べものにならないほど、多くの情報を画像は物語ってくれます。

 今回公開された画像は、2020年2月26日にキュリオシティがこれまでで最も急な傾斜地を登る際に撮影されたもの。これから登る「グリーンヒュー・ペディメント」という、高さ3mほどの大きな一枚岩をバックにしています。

 キュリオシティのすぐ前の地表には、キュリオシティがサンプル採取したドリル穴「ハットン(Hutton)」が見えています。このセルフィー画像は、ロボットアーム先端にあるMAHLI(MArs Hand Lens Imager)というカメラで撮影された、86枚の画像を1枚に合成して作成されました。

 グリーンヒュー・ペディメントを登る際、キュリオシティは最大で31度傾斜したといいます。これは前任者の火星探査車「オポチュニティ」が2016年に記録した32度に迫るもの。

 31度という傾斜は、道路でいうなら60%という急こう配(道路設計基準での最大値は12%)ですが、キュリオシティは最大45度までの傾斜を登れるよう設計されています。それでもナビゲーションカメラで地表面を確認し、足元が崩れないような場所を選びながら慎重に岩を登り、3月6日に登頂に成功しました。

 今回、キュリオシティの運用チームは「キュリオシティはどのようにセルフィーを撮っているの?」という疑問に答えるため、マストに取り付けられたカメラを使い、初めてセルフィーを撮る様子を撮影。60秒の動画にしてくれました。

 色々とカメラの角度を調整しながら、少しずつ撮影していく様子は、なんだか真剣な雰囲気。キュリオシティに表情があるなら、かなり真顔で写っているのかもしれませんね。

<出典・引用>
NASA ニュースリリース
Image:NASA/JPL-Caltech/MSSS

(咲村珠樹)