現代の戦闘機は任務の多様化に伴い、様々な装備が追加されています。コクピット計器もそれに合わせ、必要に応じて表示を切り替えられる多機能ディスプレイが使われるようになりました。では、未来の戦闘機はどうなるのでしょう。ドイツで国際共同研究が進んでいます。

 ドイツとフランス、スペインは、F-35の次世代となる将来戦闘機「FCAS(Future Combat Air System)」を共同開発することを決定。2040年代の就役が予定されるFCASは、必要な機能などを検討する技術的な基礎研究が進められています。

 FCASの主要な機能として考えられているのが、複数の無人機(ドローン)を指揮し、得られた情報をもとに無人機と連携して攻撃を行う、というアニメ「機動戦士ガンダム」のニュータイプ向けモビルスーツが行うオールレンジ攻撃のようなもの。これを実現するためには、コクピットでドローンの動作状況を確認し、しかも動きの指示を出す必要があります。

 ドイツ連邦軍の士官候補生を養成するミュンヘン連邦軍大学では、学外のパートナー企業とともに、有人機や無人機の操縦に関する研究を15年行なっています。無人機に関しては、AIを用いた自律的な任務遂行に向けてのプログラム作成などが研究項目。また、有人機においても効率よく情報をパイロットに提供する認知工学的なアプローチの研究も進められています。

 無人機と有人機が連携して作戦を行うには、互いの動きをパイロットが認識し、相互のメリットを活用して最適な手法を選択しなければなりません。この任務適合型協調無人システム「オプフォーカス(Operative Forderung Kooperation unbemannte Systeme=OpFoKus)」の研究もそのひとつ。戦闘機の操縦シミュレータを使い、パイロットにとって使いやすいインターフェイスのあり方が検討されています。

 被験者はシミュレータで、実際の戦闘状況に即したシナリオで飛行します。コクピットには自機のほか、協調して任務を遂行する無人機(ドローン)からの情報も表示され、状況に応じて攻撃手段を選択し、実行に移します。

 この際、被験者の目の動きなど生理学的な情報を細かくモニターし、どういった情報を重視しているのか、またどのように操作をしているのかを確認します。空の上では一瞬の状況判断の遅れが重大な事態を招く恐れがあるために、ストレスの少ない方法を模索しなければなりません。

 これらの研究結果は、ドイツ軍を通じてフランス、スペインの関係機関と共有され、FCASの開発に役立てられます。未来の戦闘機パイロットは、より多くのことを同時に処理することを要求されるだけに、機械側がいかにパイロットの負担を減らせるか。コンピュータをはじめとした技術研究が続きます。

<出典・引用>
ドイツ連邦軍 ニュースリリース
Image:Bundeswehr

(咲村珠樹)