古代のロマンを感じさせる土偶。中でも縄文晩期に登場した遮光器土偶は、宇宙服やパワードスーツを着ているかのような不思議な姿形をしていることで知られています。

 そんな謎に包まれた土偶に、遊び心のエッセンスを加えたところ、なんとも愛らしい幻の古代兵器(?)が爆誕。土偶を愛してやまない、作者のアイウエヲさんに話をうかがいました。

 アイウエヲさんは、自然と一体となって暮らしていたであろう縄文時代の人々に惹かれ、特に謎の多い土偶という存在に魅力を感じているという造形作家。この作品の発端は、以前発表した遮光器土偶(青森県亀ヶ岡遺跡出土)をモチーフにした「土偶ポッド」なんだそうです。

 元々、車輪のついた乗り物(移動用ポッド)、という設定で作ったという土偶ポッド。そこから構想が発展し「乗り物つながりで、かっこいいの代名詞である戦車と合体させてみました(笑)」という形で、頭に砲塔のついた姿が思い浮かんだといいます。

横から見たシャコタンク(アイウエヲさん提供)

 ちなみに、リベット接合された砲塔のモチーフになったのは、旧日本陸軍の「チハ」こと九七式中戦車。「本体同様デフォルメし、馴染ませるため微妙なアールをつけて柔らかいフォルムにしたのですが、コメントをくださった方からズバリ言い当てられ、とても嬉しくなりました」とのこと。

砲塔は回転する(アイウエヲさん提供)

 パソコン上で3Dモデリングし、3Dプリンタで出力したそうですが、思い通りの形に出力されるよう、プリンタの調整は時間がかかってしまったんだとか。「データ、レジンの種類、プリンタの設定、気温や湿度など、調整すべき変数が多く対応に追われました」とアイウエヲさん。

3Dプリンタで出力したところ(アイウエヲさん提供)

 普段は模型も絵画もアナログ大好きだそうなのですが、なぜ3Dモデリングに取り組むのでしょうか。ご本人にうかがうと、プリンタの調整に手間取りながらも、デジタルで出力するメリットとして、トライアンドエラーの回数が増やせることだと語ります。

 そういった意味では、まさに今回の「土偶戦車シャコタンク」はうってつけだったそうで「3Dプリンタがなければそもそもやらないでしょうから、手段として持っておいて良かったと思います」と、試行錯誤の末に狙い通りの作品ができたことを強調しています。

 Twitterに作品の写真を投稿したところ、大きな反響があったそうで「モチーフの掛け算により、思いもよらないキャラクターが誕生し、皆様にも楽しんでいただけてニヤリとしています」というアイウエヲさん。「ミュージアムショップに並べていただけるようなものを目標に、思いつくままアレンジを楽しんでいこうと思います」という、次回作にも期待してしまいますね。

<記事化協力>
アイウエヲさん(@nanashi_san99)

(咲村珠樹)