11月12日(土)、東京のシネ・リーブル池袋、千葉の京成ローザ10、大阪のテアトル梅田の3館でアニメ『一騎当千』シリーズの最新作『一騎当千 集鍔闘士血風録』が公開されました。
今回の「新作アニメ捜査網」では、『一騎当千 集鍔闘士血風録』についてご紹介します。


『一騎当千』はワニブックスから出版されている塩崎雄二の漫画を原作としたアニメシリーズで、下記のように、過去4作品がテレビ放送されています。

2003年第3クール・・・『一騎当千』
2007年第2クール・・・『一騎当千 Dragon Destiny』
2008年第3クール・・・『一騎当千 Great Guardians』
2010年第2クール・・・『一騎当千 XTREME XECUTOR』

今回の『一騎当千 集鍔闘士血風録』の特徴としては、全篇がギャグアニメであることと、ツッコミどころが多いことが挙げられます。関羽(声・生天目仁美)の台詞なんか悉く漫才の台詞です。

スタッフはプロデューサーの越中おさむ、キャラクターデザインのりんしん、総作画監督の石橋有希子、原画の梅津泰臣ら『一騎当千』シリーズや『クイーンズブレイド』シリーズでお馴染みの面々。

ストーリーは以下の通り。
南陽学院(=呉)、成都学園(=蜀)、許昌学院(=魏)がそれぞれ同じ旅行代理店の下で修学旅行を実施したところ、全く同じ日程になってしまった。3校は京都で戦国武将の魂を受け継いだ闘士と戦うことになる…!

戦国武将の魂を受け継いだ闘士が出てくると聞いたので、私は『百花繚乱 サムライガールズ』『戦国乙女~桃色パラドックス~』『境界線上のホライゾン』みたいなキャラクターが出てくるのかと期待したのですが、魂が受け継がれた武将の固有名詞は出てきませんでした。題名は、京都が舞台なので『新選組血風録』のパロディでしょうかね。

くだんの修学旅行は、高校生と中学生が同行する珍妙なもので、学年もバラバラ。南陽学院では高校3年の呂蒙(声・甲斐田裕子)、楽就(声・飯島肇)、2年の孫策(声・浅野真澄)、周瑜(声・日野聡)、中学3年の陸遜(声・高橋美佳子)、成都学園は高校3年の関羽、2年の劉備(声・真堂圭)、趙雲(声・浅川悠)、1年の張飛(声・茅原実里)、中学1年の諸葛亮(声・門脇舞以)、許昌学院では高校3年の曹操(声・赤城進)、曹仁(声・斎藤千和)、2年の夏侯惇(声・阪口周平)、夏侯淵(声・喜多村英梨)、1年の許褚(声・武田華)、中学3年の典韋(声・高橋美佳子)が参加。

せっかくだから南陽学院の高校1年・孫権(声・堀江由衣)も出せばいいのに、出番なし。旅館で夜寝る場面で呉の連中が「修学旅行の夜は恋バナ」と言った際に呂蒙が顔を赤らめていましたが、呂蒙の彼氏である南陽学院の高校3年・王允(声・遊佐浩二)も参加せず。

蜀関連では、僧侶である黄忠(声・三宅健太)は修学旅行に参加せず。涼州高校から成都学園に転校した高校1年・馬超(声・遠藤綾)も参加せず。という訳で残念ながら蜀の五虎将軍(関羽、張飛、趙雲、黄忠、馬超)が全員揃うことはありませんでした。
三国志アニメで蜀の五虎将軍が全員揃う場面があるのは『真・恋姫†無双』『真・恋姫†無双~乙女大乱~』だけじゃないでしょうか。 

一方、既に故人である呂布(声・渡辺明乃)は回想シーンでチラッと登場(台詞はなし)。既に死んでるのにアニメやゲームの新作が作られると必ず登場する呂布さん凄すぎ!スタッフに気に入られてるのか(笑)。

魏のメンバーについては、曹操は『一騎当千 XTREME XECUTOR』に引き続いてただの傍観者になっとります。
典韋は、『一騎当千 XTREME XECUTOR』で尊敬する司馬懿(声・斎賀みつき)を失ったにも拘わらず、何事もなったかのように曹操につき従っております。もう立ち直ったのか。夏侯淵は何と『一騎当千 Dragon Destiny』以来4年ぶりの登場。しかしブランクを感じさせず、何事もなかったかのように溶け込んでおります。それにしても『一騎当千 Dragon Destiny』の時点で夏侯淵役の喜多村英梨は19歳だったんですよね。当時喜多村を起用したのは慧眼でした。

さて、物語の前半の見せ場は、東映太秦映画村で繰り広げられる呂蒙VS趙雲の激闘です。趙雲の出番が結構多い。これからは趙雲の時代だな。
この戦闘シーンでは『一騎当千 Dragon Destiny』のオープニング主題歌が流れました。『パナソニックドラマシアター 水戸黄門』も完結しますし、太秦映画村の入場者数も全盛期より減っているそうなので、太秦映画村にとっては厳しい時代ではありますが、同映画村は劇場版『仮面ライダーオーズ』に出るわ『一騎当千』に出るわ意外な活躍を見せています。

本作では、太秦映画村の入り口の前で、南陽学院が乗ったバスと成都学園が乗ったバスが正面からぶつかる寸前まで接近。
映画村内の描写では日本橋がチラッと映った他、池の傍で呂蒙が趙雲に関節技を喰らわせていました。映画では池の上空に竜が出現していましたが、実際の映画村では池に竜の模型が生息しております。

この戦いの後、さっき少し触れた旅館の夜のシーンになるのですが、蜀の部屋では、眠りから覚めた趙雲が目を開きます。普段目を閉じている趙雲が眠りから覚めたことを表現するためにはこうするしかないのか(笑)。趙雲が目を開けるのは珍しく、『一騎当千 XTREME XECUTOR』第7話「沈黙の涙」など数える程度しかありません。

そして蜀の5人は、改めて桃園の誓いをするのでした。桃園の誓いといえば『一騎当千 Dragon Destiny』第10話「公瑾流転」の回想シーンで描かれましたが、この時は元ネタ通り劉備・関羽・張飛の3人だったのに対し、『一騎当千 集鍔闘士血風録』ではこの3人に趙雲と諸葛亮が加わっています。中学1年の諸葛亮まで同日に死ぬ誓いに巻き込むのは可哀相な気がしますが。

物語の後半の見せ場は孫策と関羽の戦いなのですが、これは旅館の土産物売り場でのトラブルに端を発するもので、ストーリー上あまり必要のない戦闘です。このシーンには『一騎当千 Great Guardians』のオープニング主題歌が流れました。

エンディングはキャラクターの映像にそのキャラクターのタイトルクレジットを被せるという、テレビドラマ『太陽にほえろ!』『西部警察』のオープニングと同じ方式。一枚タイトルは孫策、呂蒙、夏侯淵、関羽の4人で、固有名詞ありキャラクターの止めが関羽になっています。『太陽にほえろ!』に例えると、露口茂に当たりますね。夏侯淵は別に重要なキャラクターでもないのになぜか一枚タイトル。出演者の途中で一枚タイトルになるという意味では、昭和50年代の大作映画における丹波哲郎と同じポジションです。喜多村英梨も偉くなったものだ。尚、1人2役の高橋美佳子は陸遜役でクレジットされたので典韋はタイトルクレジットに登場せず。

戦国武将の話など消化不良の部分は非常に多く、尺が足りなかったと思いますが、ギャグアニメとしては充分楽しめました。

(文:コートク)