「うちの本棚」、今回は横山光輝のロボット作品『サンダー大王』を取り上げます。その後に描かれた氏の代表作数作のアイデアの元になったという本作。作品のルーツを探る上でも貴重な作品といえるでしょう。

本作は昭和46年に秋田書店の「冒険王」に連載されたもの。作者自身のコメントによればその後の『バビル2世』『マーズ』といった作品に発展するアイデアを含んだ作品ということだ。


確かに読んでみるとアトランティス大陸の神像であるサンダー大王が現代に蘇り少年の命令によって活躍するというのは『バビル2世』につながるし、もしサンダー大王が適わないような敵が現れた場合、体内の水爆が爆発するようにプログラミングされているというのは『マーズ』に通じるものだろう。またサンダー大王の操縦が「黄金のかぶとむし」を使って行われるのは『鉄人28号』からのリモコンロボットの流れとも言える。

主人公の少年は、当初アトランティスから持ち出されてしまったサンダー大王を取り戻そうと後を追ってきたわけだが、途中からはアトランティスに連れ帰るのではなく、他の誰にも知られることの無い場所に隠そうと、協力者のスティンガー大佐とともに世界を放浪することになる。

サンダー大王の力を知り、手に入れようとする国や犯罪組織がサンダー大王にも匹敵する力を持ったロボットを送り込んでくるのだが…それだけのロボットが作れているのなら、サンダー大王は必要ないんじゃないかという気もしてしまうけどね。

サンダー大王はその能力をみてもすばらしいものなのは確かだが、同時にサンダー大王を操る主人公のシンゴ少年も、アトランティスのただひとりの生き残りという貴重な存在。しかしながらそのことに関してはほとんどスルーというのが本作が目指していたものを端的に現しているような気がする。というのは設定はいろいろあるが、とにかくロボット同時の格闘がメインということである。『鉄人28号』と違って高熱で触れたものを焼き切るという剣などの武器を持っていることもあって、その対決シーンはなかなか迫力のある場面が連続している。またそんなサンダー大王に対して、挑戦してくるロボットたちもそれぞれに特徴のある能力を備えているので、どう闘うかという興味もわく。

最初にも触れたが本作がのちに描かれた作品のアイデアの元になっているのは読んでみればすぐにわかる。本作が連載終了後から17年も単行本化されなかったのはそのあたりに理由がありそうな気がする。

書 名/サンダー大王(全3巻)
著者名/横山光輝
出版元/秋田書店
判 型/新書判
定 価/各370円
シリーズ名/秋田サンデーコミックス
初版発行日/第1~3巻ともに昭和63年8月15日
収録作品/サンダー大王

(文:猫目ユウ)