「うちの本棚」、ロボットアニメコミカライズシリーズとして、今回は『大空魔竜ガイキング』の細井雄二版を取り上げます。迫力のある画面づくりやしっかりとしたメカ描写など、コミカライズのお手本ともいえる仕上がりの作品です。

東映動画(現・東映アニメーション)のオリジナルテレビアニメ『大空魔竜ガイキング』のコミカライズ作品。
同時期に刊行された『グロイザーX』同様全2巻でストーリーを完結させるため、敵メカとの細々とした戦闘ははしょられている。


当初『マジンガーZ』ではロボットを操縦する主人公とその周囲のキャラクターという構成だったが、複数のメカが合体したり、サポートする戦闘機や母艦といったメカに焦点を当てることによりグループが形成され、その人数が増えていく傾向が、本作の原作アニメが放送されていたころにはあった。本作自体も「ガイキング」を操縦する主人公に加え、大空魔竜という母艦に乗り込むメンバーが登場することで、最後までハッキリした活躍を見ることがないままのキャラクターも出てきてしまった(もちろんコミカライズ版での話)。

このコミカライズを担当した細井雄二は「テレビランド」等でアニメや特撮ドラマのコミカライズを描いていたと記憶する。本作はけっこう細かく描き込んでもいて読みごたえという点でも十分な作品になっている。強いて言えば最後の最後で新しい武器が登場したりまとめきれていない感があったりするのだが、これは原作であるアニメ作品の影響かもしれない。またガイキングをはじめ大空魔竜、その他のメカも活躍していてロボットアニメのコミカライズという印象を強めているのは好感が持てる。ともするとメカより人間ドラマに比重がかかりすぎてしまうことがあり、内容的には充実していてもどこかものたりない場合があるからだ。

地球を侵略してくるゼーラ星のブラックホラー軍団は、ゼーラ星がブラックホールに飲み込まれるため地球への移住を目的に攻撃をしてくるのだが、その指揮をするダリウス大帝の正体など、けっこうありがちな設定が目につく。どういう経緯で地球を発見したのかもハッキリしていなかったり、つっこみ所は満載。まあその分主人公の活躍や心の葛藤などが描かれているので物語としては充実しているのだけれど…。

書 名/大空魔竜ガイキング
著者名/細井雄二
収録作品/大空魔竜ガイキング
発行所/朝日ソノラマ
初版発行日/第1巻・昭和51年7月30日、第2巻・昭和51年11月25日
シリーズ名/サンコミックス


【文:猫目ユウ】
フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。