「うちの本棚」、今回はモノクロフィルムを最新の技術でカラー作品にしてソフト化される『ウルトラQ』のコミカライズ作品、中城健版の『ウルトラQ』を取り上げます。
今につながる「ウルトラシリーズ」の元祖でもある本作。その忠実とも言うべきコミカライズ作品をお楽しみください。

いまさら説明の必要もない、日本の特撮テレビ番組を代表する「ウルトラシリーズ」の最初の作品『ウルトラQ』のコミカライズ作品である。


とはいえ、本家のテレビドラマの知名度に比べてコミカライズ作品は忘れられていたと言っても過言ではなく、以前取り上げた一峰大ニの『ウルトラマン』以外のコミカライズ作品は単行本化されないまま、朝日ソノラマのサンコミックで本作、楳図かずお版『ウルトラマン』、桑田次郎、一峰大ニの『ウルトラセブン』と初期「ウルトラシリーズ」コミカライズ作品の復刻が行われるまで埋もれていた。

また本作の原作である『ウルトラQ』は最新のデジタル技術でモノクロフィルムに、当時のスタッフ等の証言によって色がつけられてソフト化されることにもなり、このコミカライズ作品もふたたび脚光を浴びてほしいと思う。

映像作品のコミカライズというと、放映日や劇場公開日に合わせる形で描かれることが多く、シナリオやスチールといった資料を元に漫画化するのが主で、完成フィルムを見てからということは少ないと思うが、本作に関しては、もともとテレビ放映自体が28本が完成したあとであることと、漫画作品自体がテレビ放映に合わせた形ではなく、放映後の人気に乗っかる形で行われたことで、中城自身、テレビ局で完成フィルムも鑑賞した上で描いたということである。
もちろんなにからなにまでフィルム通りというわけではないが、かなりフィルムに忠実なコミカライズであると言っていいだろう。

『ウルトラQ』は当初『トワイライトゾーン』や『アウターリミッツ』といった外国のSFドラマを模した企画として出発したが、「円谷が作るなら怪獣を」ということで、怪獣が登場する特撮ドラマになっていき、その発展形として『ウルトラマン』につながっていく。
なので、初期に制作された話数ではファンタジックなもの、ホラー的なもの、SFドラマという印象が目立つ。

放映時にはそれらのバランスを考慮して放映順を決定しているので、放映第1話にゴメスが登場しているわけである。結果的にこれが子供たちに受け入れられたわけで(当時は怪獣は映画館に行かなければ観ることができなかったと言ってもいい状況でもあった)、中城のコミカライズも怪獣の登場する話数から選ばれている感がある。

それでも子どもには地味に映るであろう『燃えろ栄光』を選んでいるところは、中城の好みの現れだったのではないかという気がしないでもない。

書 名/ウルトラQ
著者名/中城 健
収録作品/第1巻/ゴメスを倒せ!、五郎とゴロー、南海の怒り、クモ男爵、ガラダマ、
     第2巻/鳥を見た、2020年の挑戦、燃えろ栄光、206便消滅す
     「少年ブック(集英社)」昭和41年
発行所/朝日ソノラマ
初版発行日/第1巻/昭和54年5月21日
      第2巻/昭和54年5月25日
シリーズ名/サンコミックス

【文:猫目ユウ】
フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。