「うちの本棚」、前回に引き続き「幻のGコミック」を復刻したシリーズ第2弾『ゴジラVSモスラ決戦史』を取り上げます。映画本編とは微妙に異なる「モスラ」が登場するコミカライズ版も注目です。

「ゴジラVSキングギドラ決戦史」に続いて『ゴジラVSモスラ』公開に合わせて過去にコミカライズされたモスラが登場する怪獣コミックを復刻したもの。


「決戦史」と銘打たれてはいるものの映画の方でも正面から対決するのは「モスラ対ゴジラ」くらいなものなので、本書に収録された作品でも、久松文雄が作画を担当した『モスラ対ゴジラ』以外では対決シーンは見られない。

モスラ初登場となる『モスラ(前編では企画段階での『大怪獣モスラ』のタイトルで発表された)』は、吉田きみまろが作画を担当した本書収録のコミカライズのほか、ジュブナイル版のノヴェライズなども存在していて、それぞれに微妙な違いがあって面白い。コミック版では小美人を発見する中条博士の弟が全編を通して活躍している。

また本書収録作品では150ページに近いボリュームの、園田光慶が担当した『南海の大決闘』が読みごたえがあっていい。内容は映画版を多少アレンジしてはいるもののほぼ再現しているといっていい。実際映画本編よりもこのコミック版の方がエビラ自体も活躍している印象があったりする。
「ゴジラVSキングギドラ決戦史」に収録された作品で作画を担当していた作家たちが、ある程度怪獣コミックや特撮作品を手がけていたのと比べると、今回収録された作品は逆に怪獣コミックには馴染みのない作家といってもいいかもしれない。
『モスラ』を担当した吉田きみまろは、これがほぼデビュー作ということのようだし、久松文雄も『スーパージェッター』に怪獣的なものが登場したりという程度にはキャリアの中で描いているが特撮作品のコミカライズはむしろロボットものの『魔神バンダー』などを手がけていた。園田光慶は劇画家ということもあり怪獣や特撮といったジャンルとはもともと縁が薄いと言っていいだろうが、テレビドラマの『怪獣王子』のコミカライズを担当していた経歴もある。もっともそれは本作が発表されたのと同時期のものでもある。そういえば『魔神バンダー』も『怪獣王子』も昨年やっと単行本化された。偶然とはいえなにか因縁を感じてしまう。

怪獣映画のコミカライズは、単に映画本編のストーリーをなぞるだけではなく、怪獣が魅力的に描かれているというのがポイントになるのではないかと思うが、たとえば『モスラ』では設定段階の資料に沿って描かれており本編とは微妙に違う「モスラ」が登場したりしていて漫画家の思いとは違うところで読者がガッカリする結果になっている部分もある(もちろんいまから見れば設定段階の資料を検証する材料ともなるのだが)。

前回に続いて本書でも、もう読めないと思っていたコミカライズ作品を読むことができ、それだけでも意義のある企画だったといえる。

書名/ゴジラVSモスラ 決戦史
著者名/吉田きみまろ、久松文雄、園田光慶
収録作品/モスラ(「少年」前編・1961年7月号別冊、後編・1961年8月号本誌)、モスラ対ゴジラ(「冒険王」1964年5月号別冊)、ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘(「ぼくら」1967年1月号別冊)
発行所/竹書房
初版発行日/1992年12月27にち
シリーズ名/BAMBOO COMICS


【文:猫目ユウ】
フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。