「特撮映像館」、第67回は庵野秀明が監督した『キューティーハニー』です。本作をキッカケに新作アニメも制作された、永井 豪の人気作品。さてその実写版は…。

本作が公開された前後には『キャシャーン』や『鉄人28号』といった漫画やアニメを元にした実写作品が相次いで公開されたが、そのいずれもが原作にあたる作品の要素だけを借りたオリジナル作品であって、いわゆる「別物」となっているが、それは本作でも同じことがいえる。


もっともイヤなのは茶化しすぎている点であって、こんな事をするなら作ってほしくなかったとまで思ってしまう。

まあ、それはそれとして、エンタテインメントとして映画を捉えるのであれば「面白かった」と劇場を出ることのできる仕上がりにはなっているといえるだろう。

もともと本作は主演女優の決定段階で難行したようだが、永井 豪の原作、そしてアニメのハニーは『ルパン三世』の峰不二子同様に女性の理想像のひとつにもなっているので、それを実写で再現するに当たっては当然の結果だったともいえる。佐藤江梨子が果たしてハニーのイメージにピッタリだったかは見る人によって違うだろうが、少なくともスタイルという点においては外れていなかっただろう。演技自体も思ったよりは本作でのハニーになりきっていて好感は持てる。しかしながらジル役の篠井英介、その執事である手塚とおる、四天王の片桐はいりや及川光博など、アクのあるキャストが揃っているのでそちらに目が行ってしまうのはいたしかたない。もっともそうして佐藤をフォローするという意味もあったのかもしれないが。

特撮・合成に関しては「ハニメーション」と名付けられたアニメの技法を実写に導入する方式を多用。コマ撮りのスチールをアニメのようにつなげているらしい。また派手な爆発シーンなど、実写作品というよりアニメ的な画づくりという印象がある。特撮監督の神谷 誠は平成ゴジラシリーズや平成ガメラシリーズで特撮の助監督を経験しており、金子監督の『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』でも特撮監督をしている。

個人的には片桐はいりのゴールドクローや及川光博のブラッククローのシーンが楽しく、好きなのだが、でもこれってやっぱり自分の中の『キューティーハニー』とはまったく別物なんだよね。

クライマックスで父の思い出に触れるハニーのシーンでは、なぜか水面の映像がかぶせられていて、どうしても『エヴァンゲリオン』を思い出させてくれる。庵野監督という先入観からなのかもしれないけれど、実は意図的に言いたいことは同じです、と言ってるような気がしてならない。

監督/庵野秀明 特撮監督/神谷 誠
キャスト/佐藤江梨子、市川実日子、村上 淳、及川光博、片桐はいり、手塚とおる、篠井英介、京本政樹、吉田日出子、ほか。
2004年/93分/日本

(文:猫目ユウ)