「うちの本棚」、今回も松森作品からの紹介です。『薔薇のレクイエム』と対をなす(?)『テキサスの鷹』。バイオレンス&エロティックなハードボイルド作品です。

「狙った敵は必ず刺す」特捜検事、通称テキサスの鷹。


以前紹介した『薔薇のレクイエム』の男性主人公版とも言うべき本作、改めて読み直してみてその印象を強くした。検事という公的な立場と非合法なスナイパーの違いはあっても、ストーリー上どちらを主人公にしても成り立つようなものが多い。

本作では第1話冒頭から、日本進出を企むマフィアが、日本支部総支配人として主人公をスカウトするシーンから始まっており、検事とはいってもかなりキワドイ捜査をしてきたのだろうことは想像できるわけだけど、その話を飲むカタチで潜入捜査にはいり、マフィアの幹部が来日するタイミングで全員を殺してしまうという検事にあるまじき行動に出たりもしている。こんな展開、『薔薇のレクイエム』でも十分描けるだろうし、むしろその方が無理はないような気がする。

また、マフィアにしろその他のエピソードで登場するゲストキャラクターにしろ、なぜか外人が多かったりして、日本の特捜検事なのになあ、と思ったりする部分もある。

画的には渡 哲也(というか『西部警察』?)を意識したと思われる主人公・鷹はずいぶん血の気の多い性格になっている。松森作品の主人公としては珍しいタイプかもしれない。

本作は後年『餓狼の森』などと一緒に松文社の「エースファイブコミックス」で再刊行されているが、その際オリジナル版の5、6話をカットした8話で構成された。5話にはかつての恋人ヘレンが、6話には現在の愛人が登場しているので、この2話をカットしたのは残念な気もする。

これは個人的な思いつきにすぎないが、鷹と『薔薇のレクイエム』の美鬼が組んだストーリーなんて言うのもあっても面白かったのではないだろうか。

書 名/テキサスの鷹
著者名/松森 正(原作・橋本一郎)
収録作品/テキサスの鷹・Vol.1~Vol.10
発行所/双葉社
初版発行日/昭和52年12月20日
シリーズ名/アクションコミックス

■ライター紹介
【猫目ユウ】

フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。