「うちの本棚」第四十八回は、大藪春彦の原作を佐藤まさあきが劇画化した『凶銃ワルサーP38』を取り上げます。

 殺された兄の復讐のため、ワルサーP38を片手に警察に追われながらターゲットを狙うハードボイルド作品。オリジナル作品にこだわる佐藤まさあきには珍しい原作付きの作品。原作は大藪春彦の『みな殺しの歌』。

 佐藤も大藪もガンマニアというところで共感するものがあったのかもしれない。そういえば映画化された『蘇える金狼』のコミカライズも佐藤が担当していた。

 ワルサーP38というとどうしても『ルパン三世』が思い出されてしまうが、この作品が発表された当時はまだそのイメージは浸透していなかっただろう。むしろガンマニアにとって一種の憧れ的な拳銃だったのかもしれない。

 原作を読んでいないのでどこまで忠実か脚色されているのかわからないが、セリフ回しや構成などはほかの佐藤作品の印象と変わらず、原作の表示がなければ佐藤オリジナルと言われてもわからない仕上がりになっている。

 主人公も影男スタイルで言葉づかいも似ている。もっともこのあたりは佐藤の欠点でもあって、ほとんどの作品の主人公は似てしまっている。

 またヒロインに当たる女性キャラクターも他の佐藤作品に酷似した純真な娘であり、あるいは原作とは違っているのかもしれない。
多少ラストのあっけなさが気にはなるが、全体としてまとまった秀作といえるだろう。

書 名/凶銃ワルサーP38
著者名/佐藤まさあき
収録作品/凶銃ワルサーP38
発行所/芸文社
初版発行日/昭和49年11月22日
シリーズ名/芸文コミックス(No37)

■ライター紹介
【猫目ユウ】

フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。