しばらくのご無沙汰でした。旬なアニメを紹介する「新作アニメ操作網」。
今回は、遅まきながら、2010年第3クールのテレビアニメを振り返りたいと思います。
紹介は全部で19タイトル。

■セキレイ~Pure Engagement~

ボディラインを強調した女性キャラクター達によるバトルアニメ『セキレイ』の続篇。鶺鴒計画の全貌を解明する探偵的要素や、危機を乗り越えながらビルの頂上を目指すテレビゲーム的な冒険要素などを盛り込み、視聴者をワクワクさせました。また、キャスティングにおいて、平成生まれから中堅どころまで幅広い世代の有名深夜アニメ声優を揃えたことも特徴です。早見沙織(1991年5月29日生まれ)、花澤香菜(1989年2月25日生まれ)、井上麻里奈(1985年1月20日生まれ)、伊藤静(1980年12月5日生まれ)、遠藤綾(1980年2月17日生まれ)、生天目仁美(1976年8月4日生まれ)、大原さやか(1975年12月6日生まれ)、ゆかな(1975年1月6日生まれ)など。他のアニメが比較的若手女性声優を偏重しているのに対し、本作はバランスが取れていると言ってよいでしょう。

余談ですが、『あそびにいくヨ!』に対抗して(?)本作でも予告で『スパイ大作戦』のパロディをやったことがありました。また、最終回のラストに「To Be Continued」と表示されたのは『ヒーローマン』最終回と同じであります。

原作極楽院櫻子
(スクウェア・エニックス『ヤングガンガン』連載)
シリーズ構成吉岡たかを
キャラクターデザイン友岡新平
音楽佐野広明
監督草川啓造
アニメーション制作セブン・アークス
製作委員会アニプレックス/セブン・アークス/ムービック
出演者立花慎之介/早見沙織/ゆかな/井上麻里奈/花澤香菜/遠藤綾/大原さやか/甲斐田ゆき/生天目仁美/関俊彦/他

■裏切りは僕の名前を知っている

平安時代の幻想的で美しい描写と、現代の激しい戦いの対比が印象深い1本。
本作最大の特徴は、当代の有名男性声優を総動員している点です。
その顔触れたるや、保志総一朗、櫻井孝宏、子安武人、石田彰、福山潤、小野大輔、宮野真守、神谷浩史、日野聡、三木眞一郎、成田剣、岡本信彦、浜田賢二、浅沼晋太郎、立花慎之介など壮観です。女性陣では、エレジー(声・皆川純子)の眼光の鋭さが恐怖感を高めました。

原作小田切ほたる
(角川書店『月刊Asuka』連載)
シリーズ構成高橋ナツコ
キャラクターデザイン中山由美/松浦麻衣
総作画監督中山由美
音楽海田庄吾
監督桜美かつし
アニメーション制作J.C.STAFF
製作委員会明記されず
出演者保志総一朗/櫻井孝宏/子安武人/石田彰/井上麻里奈/福山潤/小野大輔/宮野真守/神谷浩史/他

■オオカミさんと七人の仲間たち

童話のパロディ的登場人物が、童話をモチーフにした騒動を繰り広げる学園もの。
しかし、過剰な暴力描写を交えつつ男女の恋の行方を描く学園ものという、類型的ラノベ原作アニメの枠組みにはまってしまっているのが惜しまれる。
しかし、劇中に登場する御伽銀行の設定を生かしたホームページは個性的だし、登場人物の台詞と被るくらいに容赦なくツッコミを入れたり登場人物を温かく見守ったりするナレーター(新井里美)の語り口も愉快でした。

原作沖田雅
(アスキー・メディアワークス『電撃文庫』)
キャラクター原案うなじ
シリーズ構成伊藤美智子
キャラクターデザイン
総作画監督
飯塚晴子
音楽大橋恵
監督岩崎良明
アニメーション制作J.C.STAFF
製作委員会メディアファクトリー/アスキー・メディアワークス/マーベラスエンターテイメント/AT-X/flyingDOG/GENCO
出演者入野自由/伊藤静/伊藤かな恵/野島裕史/堀江由衣/川澄綾子/新井里美/他

■世紀末オカルト学院

テレビ東京とアニプレックスによる、原作なしのオリジナルアニメ枠「アニメノチカラ」の第3作。『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』『閃光のナイトレイド』に続く本作で、「アニメノチカラ」枠も終了することとなりました。

現実世界はもう2010年だってのに1999年7の月のノストラダムスネタをアニメ化するという、どこからそんな発想が出てきたんだと思わず質問したくなる作品ですが、実際に最後まで見てみるとその点は巧く料理されています。ストーリーは、宇宙人の襲来によって文明が崩壊された2012年から、地球を救うために1999年の世界に内田文明(声・水島大宙)という青年が派遣されてくる、というものです。1999年のヒット曲のカバーバージョンを予告篇で流すことで、視聴者も疑似的に1999年にタイムスリップさせています。
そしてかなり遠回りをしながらも宇宙人を撃退して、文明の崩壊を防ぐのでした。ここで最終回のラストに登場したのが、2012年の世界にそびえたつ東京スカイツリーであり、今話題となっている未完の建造物の完成形を描くことで、平和な未来を実感させる効果がありました。

ところで、「アニメノチカラ」枠の3作品のストーリーは繋がっている訳ではありませんが、3作品に共通しているのは何らかの形で“戦争”を描いているということです。
『閃光のナイトレイド』では登場人物が、核兵器を用いた大規模な戦争の回避を願いました。しかし結局のところこの願いは叶うことなく第二次世界大戦の惨禍が起きてしまう訳です。そして長野県の松代を舞台にした『世紀末オカルト学院』には松代大本営の跡地が登場し、太平洋戦争の犠牲者を追悼する場面がありました(『世紀末オカルト学院』第3話「美し風、吹き抜けて」)。
『世紀末オカルト学院』の世界では1999年に宇宙人が襲来し、文明が崩壊してしまいます。
『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』の舞台となっているのはロボットによる戦争(『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』第7話「蝉時雨・精霊流シ」)によって文明が崩壊した世界であり、現在の教科書が過去の遺物として埋もれています(『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』第2話「初陣・椅子ノ話」)。
公式設定ではないんだけれども、まるで『世紀末オカルト学院』における宇宙人の襲来と、『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』におけるロボットの戦争は同一の戦闘であり、『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』の世界は『世紀末オカルト学院』の世界の未来の姿であるかのようです。
もしそうであるならば、『世紀末オカルト学院』最終回で歴史が改変されて文明崩壊が回避されたため、『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』の世界の様子も変わっているかもしれませんね。

シリーズ構成水上清資
キャラクター原案麻生我等
キャラクターデザイン
総作画監督
千葉崇洋
音楽Elements Garden
監督伊藤智彦
アニメーション制作A-1 Pictures
製作委員会アニプレックス/テレビ東京
出演者日笠陽子/水島大宙/矢島正明/小林ゆう/茅原実里/高垣彩陽/島香裕/他

■ぬらりひょんの孫

人間と妖怪の血を引く少年・奴良リクオ(声・福山潤)が妖怪軍団を率いる総大将へと成長する姿を描く作品。
リクオよりも年齢が何百歳も上の妖怪がいる中で、リクオがいかにしてリーダーシップを身に付けてゆくのかが1つの見所と言えましょう。
まだ2クールものの途中ということで、今後の盛り上がりに期待したいところです。
(讀賣テレビ放送月曜深夜1時44分~他にて放送中)

原作椎橋寛
(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
シリーズ構成高橋ナツコ
キャラクターデザイン岡真里子
妖怪デザイン田頭しのぶ
音楽田中公平
監督西村純二
アニメーション制作スタジオディーン
製作委員会集英社/東宝/読売テレビ/ポニーキャニオン/BS11/読売広告社/博報堂DYメディアパートナーズ
出演者福山潤/大塚周夫/中田譲治/安元洋貴/鳥海浩輔/櫻井孝宏/杉田智和/堀江由衣/平野綾/前田愛/他

■RAINBOW-二舎六房の七人-

昭和30年代を舞台に、悪い大人達の餌食になったり、もがき苦しみながらも懸命に生きる少年達の姿を描いた1本。
辛い出来事に見舞われながらも少年達が生きていくことができたのは仲間達の絆と、手を差し伸べてくれる人達の存在があったからでした。
本作は、人の温かい結びつきや信頼関係を描いており、それ故に視聴者の胸を打つのです。
第25話「Independence」のラストにおける「1人で抱え込めば重い荷物でも少しずつ分けて持てば軽くなる。生まれて初めて家族の絆を知ったリリィは自分のためにスッポン(註・登場人物のあだ名)のためにこれからの生き方を決めた」というナレーションは、本作の真骨頂を象徴していると言えます。

原作安部譲二/柿崎正澄
(小学館『週刊ヤングサンデー』『ビッグコミックスピリッツ』連載)
シリーズ構成高屋敷英夫
キャラクターデザイン菊池愛
総作画監督菊池愛/高橋美香
音楽髙見優
監督神志那弘志
アニメーション制作マッドハウス
製作バップ
出演者小栗旬/小山力也/朴ろ美/黒田崇矢/藤原啓治/羽染達也/脇知弘/山像かおり/他

■けいおん!!

高校の軽音楽部の活動を描いた『けいおん!』の続篇。
前作が楽しい高校生活の描写に終始したのに対して、本作では主要メンバーが3年生となったことから、修学旅行、進路指導、大学受験、そして卒業式と、楽しかった高校生活の終焉に向けて一直線に突き進む構成となりました。
その点において、1作目と2作目は物語の趣旨が異なっていると思います。

1作目は無邪気に高校生活を楽しむ話だったのに対し、2作目は、確かに無邪気に高校生活を楽しんではいたものの、その陰には常に「高校生活が終わってしまう」という不安や悲しみ、動揺が潜んでおり、単純に明るく陽気な番組ではありませんでした。

例えば第4話「修学旅行!」。
夜、布団の中で眠れずに考え事をする場面があるのですが、その場面で、「もう3年生かぁ~。軽音部もあと1年で終わり。もっともっとみんなとバンドしたいのになぁ~。もっと・・・もっと・・・。」と呟いています。
また第20話「またまた学園祭!」では、学園祭におけるバンド演奏終了後、部員の3年生達は、来年の学園祭はもうないことを悲しみ、涙します。

月日の移ろいは矢の如く速く、高校の3年間などというものはあっという間に過ぎてしまいます。
そうした中で、最終学年となってしまったことをしみじみと想い、楽しい時間が終わりを迎えてしまうことを惜しむと共に、“今この瞬間”を大切に噛みしめる高校生の姿を描いているのです。

この他、冬景色の描写は、3年生が卒業してしまう寂しさや哀愁を視覚的に訴え、廊下や階段を映す時のキャメラアングルは、恰も視聴者が劇中の桜が丘高校に立ち会っているかのような効果を生みました。
そしてこのような描写が、高校生活など過去のことになってしまったであろう視聴者の郷愁を誘い、胸をキュンと締め付けているのです。

原作かきふらい
(芳文社『まんがタイムきらら』連載)
シリーズ構成吉田玲子
キャラクターデザイン
総作画監督
堀口悠紀子
音楽百石元
監督山田尚子
アニメーション制作京都アニメーション
製作委員会ポニーキャニオン/ムービック/京都アニメーション/TBS
出演者豊崎愛生/日笠陽子/佐藤聡美/寿美菜子/竹達彩奈/藤東知夏/真田アサミ/他

■学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD

ゾンビが大量発生するという異常事態の中、生き残りをかけて戦う少年少女の姿を描く、ホラー兼パニック作品。
題名だけ見ると学園が舞台のようですが、学園が舞台なのは序盤だけで、学園の外が主要な舞台となっています。
本作の白眉は、生命が危機に瀕した時に、理性を失った人間に表れるエゴイズムや、暴力的な本能をどぎつく描き、視聴者を戦慄させている点です。
また、途中からはアメリカ政府の混乱ぶりや、核ミサイルまで登場させ、『復活の日』ばりにスケールを拡大しました。
しかし大風呂敷を広げるだけ広げて、結局、物語を収束へ導くことはできなかったのが残念です。
最終回のラストでは、特に事件が解決した訳でもないのに、恰も大団円になったかのような劇伴が流れました。
テレビ東京のドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け』で、問題が解決していない場合でも恰も問題が解決したかのようなBGMが流れるのと似ています。
そして主要な登場人物達が、ダイエーをモデルにしたと思われるスーパーマーケット・タイエー床主東坂店に到着するという中途半端なところで番組は幕を閉じたのでした。

原作佐藤大輔/佐藤ショウジ
(富士見書房『月刊ドラゴンエイジ』連載)
シリーズ構成黒田洋介
キャラクターデザイン
総作画監督
田中将賀
音楽和田貴史
監督荒木哲郎
アニメーション制作マッドハウス
製作委員会ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント/ショウゲート/AT-X
出演者諏訪部順一/井上麻里奈/沢城みゆき/檜山修之/喜多村英梨/福井裕佳梨/中田譲治/榊原良子/他

■ストライクウィッチーズ2

第2次世界大戦時のパイロットを女性化した軍事アニメ『ストライクウィッチーズ』の続篇。
戦争中とは思えないような平和的な雰囲気の中、軍人の女の子がキャッキャウフフするエピソードを散々描きつつ、戦闘シーンをクライマックスに持ってくるという構成は『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』と同様です。
軍艦や航空機の戦闘描写には気合が入っていましたが、私の印象では、厳密に時間を計測した訳ではないものの、前作より軍事描写が減っているように感じました。

前作は、大海原を進む軍艦の平面的戦闘描写と、大空を翔け巡る航空機の立体的戦闘描写が並行して描かれ、臨場感溢れる効果音と相俟ってパノラマ的迫力を醸し出していたことが最大の魅力でしたが、本作ではその部分の時間配分が少なかったように思います。

ただ、見せ場は用意されていました。その最たるものが終盤の戦艦大和関連の描写です。史実の太平洋戦争においては航空支援なしの戦いを強いられ、沈没した大和ですが、このような大和の最期に心を痛めた日本人は少なくなかったと思います。

そうした思いからか、昭和38年の映画『太平洋の翼』では4人の紫電改パイロットが、帰投せよという命令を無視して大和上空で米軍と戦っています。
そして『ストライクウィッチーズ2』でも、ストライカーユニット紫電改を装備した坂本美緒少佐(声・世戸さおり)が大和を助けに行くシーンがありました。私には、あの一連のシーンが『太平洋の翼』へのオマージュであり、且つ大和への鎮魂歌であるように思えます。

原作島田フミカネ/Projekt Kagonish
キャラクターデザイン高村和宏
メカニックデザイン寺尾洋之
総作画監督山川宏治/倉嶋丈康/寺尾洋之
音楽長岡成貢
監督高村和宏
アニメーション制作AICスピリッツ
製作委員会角川書店/角川映画/クロックワークス/AIC/NTT docomo
出演者福圓美里/世戸さおり/田中理恵/名塚佳織/園崎未恵/小清水亜美/沢城みゆき/斎藤千和/野川さくら/門脇舞以/大橋歩夕/伊藤静/麦人/他

■屍鬼

山奥村で発生した謎の事件を描いたホラー。
2クールものということで、徐々に盛り上げています。
本作のキーポイントは、劇中の村で土葬が行われていることでしょう。海外でゾンビ映画がしばしば作られるのは、土葬が一般的に行われているからだと思います。
一方、現代日本では土葬があまり一般的ではないので、『屍鬼』みたいな物語を描くためには、わざわざ土葬の風習を持ち出さねばならなかったのですね。
尚、土葬を物語に活用した作品と言えば昭和44年の映画『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』が有名です。
(フジテレビジョン木曜深夜1時15分~他にて放送中)

原作小野不由美
(新潮社『新潮文庫』)
シリーズ構成杉原研二
キャラクターデザイン
総作画監督
越智信次
音楽高梨康治
監督アミノテツロ
アニメーション制作童夢
製作委員会アニプレックス/フジテレビジョン/集英社/電通/ダックスプロダクション
出演者内山昂輝/大川透/興津和幸/戸松遥/GACKT/悠木碧/高木渉/他

■黒執事II

英国ビクトリア王朝時代の貴族を描いた『黒執事』の続篇。
主人公2人組と新キャラクターの因縁を描いています。

おどろおどろしい悪魔を描きつつも、随所にホラー的雰囲気を吹き飛ばすギャグを挿入しており、ホラーギャグアニメの様相を呈していたと言えます。
また、前作では、帝国主義国家に対するアジア人の怨嗟を描き、硬派な歴史ドラマとしての側面も持っていましたが、本作では歴史ドラマとしての側面が描かれませんでした。

原作枢やな
(スクウェア・エニックス『月刊Gファンタジー』連載)
シリーズ構成岡田麿里
キャラクターデザイン
総作画監督
芝美奈子
音楽岩崎琢
監督小倉宏文
アニメーション制作A-1 Pictures
製作委員会アニプレックス/スクウェア・エニックス/博報堂DYメディアパートナーズ/ムービック/毎日放送
出演者小野大輔/坂本真綾/櫻井孝宏/水樹奈々/平野綾/藤村俊二/田村ゆかり/他

■アマガミSS

テレビゲーム的なパラレルワールドの発想をテレビアニメに持ち込み、1箇月ごとに異なるヒロインと主人公の交流を描いた作品。
主人公の変態ぶりに2ちゃんねる実況スレッド住人は爆笑しつつツッコミを入れ、スレッドは大変盛り上がりました。いわゆる“実況アニメ”であります。
(TBSテレビ(東京放送)木曜深夜1時25分~他にて放送中)

原作エンターブレイン
シリーズ構成平池芳正
キャラクターデザイン合田浩章
音楽大森俊之
監督平池芳正
アニメーション制作AIC、製作委員会・ポニーキャニオン/AIC/ムービック/TBS
出演者前野智昭/伊藤静/佐藤利奈/今野宏美/ゆかな/新谷良子/名塚佳織/他

■会長はメイド様!

男子校から共学校に改組された関係で、男子生徒数に比べて女子生徒数が圧倒的に少ない星華高校(『生徒会役員共』と逆パターンです)を舞台に、女子生徒を男子生徒の脅威から守るべく生徒会長となった鮎沢美咲(声・藤村歩)の活躍を描く。と同時に、鮎沢が、美少年の碓氷拓海(声・岡本信彦)に時には反撥し、喧嘩しながらも、恋愛を進展させていくという、まさに絵に描いたような少女漫画原作アニメです。

鮎沢と碓氷のラブストーリーの他に、横暴な多数派の男子と被害者としての少数の女子という対立軸が本作の背景となっていますが、結局、星華高校における女子を脅かす男子という構図は最終回に至るまで何ら解決することはなく、教職員も問題点の根本を解決させようという気が無かったように見えます(象徴的なのが第22話「林間学校オニごっこ」)。
また、碓氷による、嫌がらせの如きキザな言動もやややり過ぎの感がある。一方で本作の優れた点は、元気溢れる劇伴でしょう。

原作藤原ヒロ
(白泉社『月刊LaLa』連載)
シリーズ構成池田眞美子
キャラクターデザイン井本由紀
音楽前口渉
監督桜井弘明
アニメーション制作J.C.STAFF
製作委員会ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント/白泉社/ムービック/J.C.STAFF/TBS
出演者藤村歩/岡本信彦/阿部敦/鳥海浩輔/椎橋和義/市来光弘/寺島拓篤/細谷佳正/他

■伝説の勇者の伝説

魔法が存在する世界を舞台にしたファンタジー。
物語は主に、主人公・ライナ・リュート(声・福山潤)の冒険のパートと、政治情勢を描いたパートの2つの要素で構成されています。
ライナのパートにおいては、特殊能力を持っているが故に化者扱いされたライナの悲しみが視聴者の胸を打ちます。そして本作最大の見せ場が、政治パートで描かれた壮絶なマキャベリズムだと言ってよいでしょう。
劇中に登場する帝国主義国家・ローランド帝国の上層部は、人々が平等に幸せになる世の中を作るという高邁な理想を掲げたり、帝国の支配下に置かれた従属国エスタブール王国に対して情に訴えたりしつつも、政権を安定させるための権謀術数を繰り広げます。
粛清の嵐が吹き荒れて邪魔者は皆殺しにされる一方、冷徹な計算とリアリズムに基づいた合従連衡が行われるなど、全く油断できないストーリーとなっています。
劇中世界では戦争も行われているため、残虐な殺人シーンも多い。
ここまで徹底したマキャベリズムを描いたテレビアニメは、2007年の『ぼくらの』以来ではないでしょうか。
往年の山本薩夫監督の映画(『白い巨塔』『戦争と人間』『華麗なる一族』『金環蝕』『不毛地帯』『皇帝のいない八月』等)を彷彿とさせる政治謀略巨篇となっています。
(テレビ東京木曜深夜2時15分~他にて放送中)

原作鏡貴也
(富士見書房『富士見ファンタジア文庫』)
原作イラストとよた瑣織
シリーズ構成吉村清子
キャラクターデザイン島沢ノリコ
音楽仲村美悠
監督川崎逸朗
アニメーション制作ZEXCS
製作委員会ティー・オーエンタテインメント/SK INDEPENDENCE/メディアファクトリー/角川コンテンツゲート/ランティス
出演者福山潤/小野大輔/高垣彩陽/諏訪部順一/伊丸岡篤/杉田智和/高橋美佳子/他

■祝福のカンパネラ

UHFアニメではお馴染みの、男性主人公の周囲に女の子が一杯出てくる作品。
ストーリーは、オートマタと呼ばれる、自らの意思で動く人形を取り巻くファンタジーです。
劇中、行き違い故に争いが発生してしまう場面もありましたが、キャラクターはみな他のキャラクターを思いやる優しさに満ち溢れた者達であり、観る者をも優しい気持ちにするような、心温まる作品となりました。

原作ういんどみる
キャラクター原案こ~ちゃ
キャラクターデザイン藤田まり子
総作画監督古賀誠
音楽Elements Garden
監督ウシロシンジ
アニメーション制作AIC
製作委員会マーベラスエンターテイメント/メディアファクトリー/AIC/AT-X/ランティス
出演者岡本信彦/門脇舞以/こやまきみこ/今井麻美/水橋かおり/藤原啓治/他

■あそびにいくヨ!

猫耳の宇宙人女性と地球人の少年の交流を、宇宙戦争を交えて描いた作品。
しかし本作は、本筋よりも、作り手の趣味と思われる部分に気合が入っていました。
それは、舞台となった沖縄の描写であったり、銃器であったり、パロディであったりします。
沖縄については、原作者・神野オキナが沖縄出身であることが関係しているのでしょう。
地方都市が舞台となったテレビアニメは、舞台となった土地では放送されないことが少なくありませんが、本作は琉球朝日放送でも放送されました。
また、エンディングタイトルクレジットでは沖縄の法人が多数、協力者として表記されており、本格的なご当地タイアップアニメとなっています(2010年第3クールにおけるもう1本のご当地タイアップアニメが『戦国BASARA弐』です)。

パロディについては、登場量が物凄い。
劇中に登場した宇宙船が『スタートレック 宇宙大作戦』のエンタープライズ号であった他、各話において次のようなネタが登場しました。

第1話「ちきうにおちてきたねこ」。
双葉アオイ(声・花澤香菜)がアメリカのドキュメンタリー映画『コヤニスカッティ』、日本のドキュメンタリー映画『ガイアシンフォニー』、岡本喜八監督の映画『大誘拐』『独立愚連隊』のDVDを持っていることが描かれました。

第3話「とまりきにました」。
この回以降、過去の海外ドラマ等のナレーションを模したナレーションが語られるようになります。
この回のアバンナレーションは『スタートレック 宇宙大作戦』のパロディです。
文章は「宇宙、それはキャーティアに残された最後の開拓地である。そこにはキャーティアの想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない。これは調査飛行に飛び立ったキャーティアシップの驚異に満ちた物語である。」

第4話「さらいきにました」。
アオイが2体のアシストロイド(本作に登場するロボット)に「あなたの名前は錦ちゃん、あなたは千葉ちゃん」と命名。
由来は中村錦之助(萬屋錦之介)と千葉眞一であると思われます。
千葉ちゃんは柳生十兵衛の恰好をしていましたが、千葉眞一は昭和53年の映画『柳生一族の陰謀』や昭和56年の映画『魔界転生』で柳生十兵衛を演じていましたね。
そしてアオイは錦ちゃんと千葉ちゃんに対して「早撃ちやってみて。エースのジョーみたいに」と促します。
エースのジョーは日活のアクション俳優・宍戸錠の愛称ですね。
続く中野ブロードウェイの場面でエリス(声・伊藤かな恵)が差し出したかいものりすと(全部ひらがな)には、「おかもときはちこれくしょん さつじんきょうじだい」「きる」「ひっさつしかけにん」「ひっさつしおきにん」「たすけびとはしる」「わかやまとみさぶろうしりーず しょうきんかせぎ」等と書かれていました。
アオイが岡本喜八監督の映画のDVDをコレクションしていたのは第1話で描かれた通りですが、エリスも岡本喜八の映画に関心があるようです。
『殺人狂時代』はチャップリンの1947年の映画の題名として有名ですが、岡本喜八も同名の映画を昭和42年に公開しています。
『斬る』は昭和37年公開の三隅研次監督の大映映画と、昭和43年公開の岡本喜八監督の東宝映画がありますが、話の流れから見て岡本版か。
『必殺仕掛人』は昭和47年のテレビ時代劇で、言わずと知れた必殺シリーズの第1作。監督の中には『斬る』の三隅研次もいます。同名の劇場版も制作されました。『必殺仕置き人』は必殺シリーズ第2作、『助け人走る』は必殺シリーズ第3作です。若山富三郎主演の『賞金稼ぎ』は昭和44年に映画が制作され、昭和50年にはテレビドラマ化されています。
エリスが買い物している最中、アオイもまた目当てのものを物色していました。
例えば岡本喜八監督の映画『ブルークリスマス』のDVDや、日活アクション映画の撮影で実際に使用された日活コルト。
更にアシストロイドが『柳生武芸帳』のDVDを持ってきます。
『柳生武芸帳』には昭和32年公開の稻垣浩監督の東宝映画と昭和36年公開の井沢雅彦監督の東映映画があり、両方共DVD化されていませんが、劇中に登場したDVDのパッケージに描かれているのは、東映版に主演した近衞十四郎だと思います。
この回のアバンナレーションは『新スタートレック』のパロディ。
文章は「宇宙、そこは最後のフロンティア。これは宇宙船キャーティアシップが新世代クルーの下に21世紀において任務を続行し未知の世界を探索して新しい生命と文明を求めキャーティア未踏の宇宙に勇敢に航海した物語である。」

第5話「たすけきにました」。
船が撃沈される場面で、チバちゃんが「てんまふくめつ」、錦ちゃんが「これはゆめじゃ ゆめでござる」というプラカードを掲げていました。
「天魔覆滅」は『影の軍団Ⅲ』で千葉眞一が言っていた台詞、「これは夢じゃ!夢でござる!」は『柳生一族の陰謀』で萬屋錦之介が言っていた台詞ですね。
この回のアバンナレーションは『スパイ大作戦』のパロディ。
文章は「キャーティア大作戦。実行不可能な指令を受け、頭脳と体力の限りを尽くしてこれを遂行する、プロフェッショナル達の、秘密機関の活躍である。」

第6話「れんしうしました」。
アバンナレーションは『チャーリーズ・エンジェル』のパロディ。
文章は「皆さんキャーティアエンジェルをご存知ですかな。さよう、これはキャーティア大使館で働く2人の美人SP達のこと。彼女達は非合法エージェントだったのですがエリスが見初めて連れてまいりました。彼女達の活躍が如何相なりますか、是非あなたに見て戴きたいのです。」

第7話「およぎきにました」。
アバンナレーションは『奥さまは魔女』のパロディ。
文章は「奥さまの名前はエリス。そして旦那さまの名前は嘉和騎央。ごく普通の2人はごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。でもただ1つ違っていたのは、奥さまは宇宙人だったのです。」
『奥さまは魔女』のパロディは『荒川アンダーザブリッジ×2』のコマーシャルにも登場しています。
この他、劇中では「死して屍拾う者もいる」という台詞も登場。
これは『大江戸捜査網』で黒沢良が語っていた「死して屍拾う者なし」というナレーションのパロディですね。

第8話「けっとうしました」。
アバンナレーションは『刑事スタスキー&ハッチ』のパロディ。
文章は「走れ赤い稲妻。走れ真奈美刑事。走れアオイ刑事。極悪な犯罪に敢然と立ち向かう若い2人の刑事。スカートとスニーカーの中にリボルバーを隠しホットとクールのうちに捜査への情熱を秘める。黄金のヤングアクションドラマ。刑事真奈美&アオイ。金武城真奈美・戸松遥、双葉アオイ・花澤香菜、情報屋騎央・田村睦心、エリス主任・伊藤かな恵」

第9話「いだいなるさいしょのあしすとろいど?」。
挿入歌及びエンディング主題歌は『キャプテン・フューチャー』の「おいらは淋しいスペースマン」。

第10話「ねらいきにました」。
アオイが市川雷藏のDVDや劇場版『番頭はんと丁稚どん』のDVDボックスに言及していました。

第11話「さがしきにました」。
ラストの「今、万感の思いを込めて少年達はロケットに乗る。」というナレーションは『銀河鉄道999』のナレーションを彷彿とさせます。
また予告篇で「宇宙の海は俺の海」と言っていましたが、これは『宇宙海賊キャプテンハーロック』の主題歌の歌詞ですよね。

第12話(最終回)「みつけきにました」。
ジェンス(声・堀江由衣)が「行かせはせん!」と言っていましたが、この台詞は『機動戦士ガンダム』でドズルが言っていた「やらせはせん!」を彷彿とさせます。
ジェンスが乗っていた宇宙船は『機動戦士ガンダム』のドダイYSにそっくりですし。更に、板野一郎風ミサイル描写も登場しました。

以上のように本作は岡本喜八監督の映画にこだわった作品なのですが、岡本喜八監督の映画には、太平洋戦争の沖縄戦を描いた『激動の昭和史 沖縄決戦』があります。しかし本作ではこの映画に言及していません。
また本作は銃器にこだわった作品ではあり、NATOの機甲師団等の軍事描写も豊富ですが、沖縄の米軍基地には殆ど触れていません。
本作は軍事描写の多さの割に殺伐さがなく、ほのぼのとした作風でしたので、太平洋戦争や米軍の話題を避けたのでしょう。
沖縄を舞台にし、且つ米軍基地を登場させたアニメとして『BLOOD+』という前例がありますが、『BLOOD+』には政治思想が含まれ視聴者の間で論争を巻き起こしたことを鑑みれば、『あそびにいくヨ!』の判断は賢明であったと言えましょう。

もう1つ本作の特徴を挙げると、スフィアのプロモーションビデオの様相を呈している点です。スフィアのメンバーが全員出演し、且つ主題歌を歌っているのです。

ストーリーについては、殺し屋として生きてきたが故に人の愛情とは無縁だったアオイの悲しみが視聴者の胸に迫る一方、宇宙人関係の描写にいちいち登場するひらがながほのぼのとしており、明るくなりすぎず暗くなりすぎず、絶妙なバランスを保っていました。

原作神野オキナ
(メディアファクトリー『MF文庫J』)
キャラクター原案放電映像
シリーズ構成高山カツヒコ
キャラクターデザイン
総作画監督
森島範子
音楽菊谷知樹
監督植田洋一
アニメーション制作AIC PLUS+
製作委員会ポニーキャニオン/AIC/メディアファクトリー/クロックワークス/ランティス/AT-X
出演者田村睦心/伊藤かな恵/戸松遥/花澤香菜/井上喜久子/豊崎愛生/寿美菜子/高垣彩陽/堀江由衣/他

■みつどもえ

小学6年生の生徒達と教師が繰り広げるドタバタギャグアニメ。
但し、尿やゴキブリ、性的な要素をギャグのネタにしたり、登場人物が肉体的ダメージや精神的ショックを受ける話が描かれ、しかもそれらの描写が限度というものをわきまえずにとことんまですっ飛ばすので、人によっては視聴するのが辛く感じるかもしれません(但し最終回のラストはその手の路線を封印し、心温まるいい話で締めました)。
また、落語の『蒟蒻問答』のような、誤解に基づくエピソードが何度も登場し、ワンパターンになってしまったことも残念でした。

原作桜井のりお
(秋田書店『週刊少年チャンピオン』連載)
シリーズ構成あおしまたかし
キャラクターデザイン
総作画監督
大隈孝晴
音楽三澤康広
監督太田雅彦
アニメーション制作ブリッジ
製作委員会アニプレックス/ランティス/秋田書店/AT-X/コスパ
出演者高垣彩陽/明坂聡美/戸松遥/下野紘/天田益男/三瓶由布子/山本和臣/斎藤千和/豊崎愛生/葉山いくみ/他

■生徒会役員共

性的な言動を連発するギャグアニメ。
基本的に一話完結ながら、最終回で学園生活を振り返って続き物のような感慨を漂わせた構成は流石。

原作氏家ト全
(講談社『週刊少年マガジン』連載)
シリーズ構成中村誠
キャラクターデザイン
総作画監督
古田誠
音楽森悠也
監督金澤洪充
アニメーション制作GoHands
製作委員会明記されず
出演者浅沼晋太郎/日笠陽子/佐藤聡美/矢作紗友里/下田麻美/小林ゆう/他

■戦国BASARA弐

戦国武将達による、常人離れした戦いぶりを描いた『戦国BASARA』の続篇。
前作のラスボス織田信長に替わり、今回のラスボスは豊臣秀吉。
前作は、オープニングの足軽ダンス、ロボットみたいな本多忠勝、武田信玄と真田幸村の激しいやり取り、英語を喋る伊達政宗など、視聴者を驚かせる描写を矢継ぎ早に繰り出して強いインパクトを放ちましたが、既に視聴者はこのような要素に慣れてしまったため、前作を上回る描写をせねば視聴者に強いインパクトを与えることはできません。
しかし本作は、豊臣秀吉の超人ぶりや、鏡を用いた巨大兵器など、確かに視聴者を驚かせる描写を描いたものの、残念ながら前作のインパクトを上回ることはできなかったように思います。

原作CAPCOM
キャラクター原案土林誠
シリーズ構成むとうやすゆき
キャラクターデザイン
総作画監督
大久保徹
音楽澤野弘之
監督野村和也
アニメーション制作Production I.G
製作委員会松竹/ポニーキャニオン/Production I.G/ムービック/電通/フライング・ドッグ/毎日放送
出演者中井和哉/保志総一朗/置鮎龍太郎/森川智之/石田彰/子安武人/森田成一/石野竜三/中原茂/他



■ライター紹介
【コートク】

本連載の理念は、日本のコンテンツ産業の発展に微力ながら貢献するということです。基本的には現在放送中の深夜アニメを中心に当該番組の優れた点を顕彰し、作品の価値や意義を世に問うことを目的としていますが、時代的には戦前から現在まで、ジャンル的にはアニメ以外のコンテンツ作品にも目を向けるつもりでやって行きたいと思います。そして読者の皆さんと一緒に、日本のコンテンツ産業を盛り上げる一助となることができれば、これに勝る喜びはございません。