「ナナメ観 特撮映像館」、今回は異色の怪獣「ヘドラ」が登場する『ゴジラ対ヘドラ』を取り上げます。

本作はある意味、昭和ゴジラシリーズを代表する一本。前作でも取り上げられた公害などの問題はますます人々のあいだで強く意識され、ついにはヘドロの中から怪獣が登場するに至った。


また海を汚されたことで、再びゴジラも登場。その意味では原水爆実験によってゴジラが東京を破壊したのと同じ行動原理が働いているように見えるのだけれど、結果的にはヘドラを倒しただけで海を汚した人間に対してはなんらアクションは起こさない。
本作で坂野義光は監督デビューしており、本編のほか特撮部分の演出も手がけている(特殊効果は中野昭慶)。

原水爆実験より身近になった公害という問題をテーマにした点では評価してもいいと思うのだが、演出のテンポはいいとはいえず、また柴本俊夫演じるところの青年の存在もどこか中途半端。さらに放射能熱線で飛行してしまうゴジラに至っては言葉がない。テレビに登場するヒーローたちが空を飛ぶことに影響されすぎたのだろうか。

佐原健二や平田明彦、田崎 潤など、これまで何らかの役で出演してきた俳優陣は本作で一新されているのだが、これもそれまでのシリーズ作品と印象を変えている理由かもしれない。

監督/坂野義光、特殊技術/中野昭慶
キャスト/山内 明、木村俊恵、川瀬裕之、柴本俊夫、ほか。
1971年/日本/85分

(文:猫目ユウ)