小・中学校の入学式を撮影するカメラマンを、XやInstagramといったSNSで募集を行っていたとして、映像制作・スチール撮影業等を行う会社の代表取締役の投稿が物議を呼んでいます。

 問題となった投稿は3月4日現在削除されており、本人による経緯の説明やお詫びが投稿されましたが、それでも疑念が十分拭われたとは到底言えず。小・中学生の子どもを持つ親らから批判や不安の声が相次いでいます。

■ あまりに軽率と言わざるを得ないカメラマン募集

 「カメラマンを大大大募集です」

 事の発端は、この一文から始まった2月28日の投稿。「現在3名しか決まっておらず、あと100名くらい来ても大丈夫です。詳細は下記をご覧下さい。もし経験が無くて不安な方は3/16(土)、23(土)に同様の撮影があるので私や他のカメラマンの撮影に同行して教えます。どしどしご連絡待ってます」としていました。

 添付の画像には「小・中学校入学式の写真撮影案件」とあり、日時や場所、撮影内容が記されていますが、その条件としては「必要な経験:一眼レフで人を撮ったことがある方」「必要な機材:一眼レフ(フルサイズ)、24-100mmカバーできるレンズ(付け替え可)ストロボ」のみ。報酬は交通費込み35000円(税込)と書かれていました。

カメラマン側は好条件なのかもしれないが……

 カメラマン側としては気軽に申し込みが出来る好条件なのかもしれませんが、さすがにこれは子を持つ親の立場からすれば、あまりに軽率と言わざるを得ない内容でしょう。なぜならば、いくらなんでも条件が緩すぎるから。いわば「カメラの腕や実績は問わず、機材を持ってさえいれば誰でもOK」状態。

 また、撮影データの取り扱いについても、その管理方法は明記されておらず。もしも採用者の中に小児性愛者が含まれており、盗撮や性犯罪の被害に遭ってしまった場合、その責任はどう取るつもりなのか。大量の人員採用は、スケジュールを逆算してみても、かなりの急務。わずか数週間で、その人の性格や趣味嗜好まで十分に把握できるとは到底思えません。

■ 投稿削除、経緯の説明が行われるも……払拭されない保護者の不安

 投稿に批判の声が殺到したことから、氏はこれを削除。3月3日に「この度は小中学校の入学式の撮影案件につきまして多くの方にご心配・ご迷惑をお掛けしましたこと誠に申し訳ありません」と投稿し、一連の問題について説明を行いました。

 その中で、「制作を取り仕切っている会社様と協議を行い、今回の撮影の中止」を決めたことを明言。

 「人間性やカメラスキルの部分に関しましては、1名1名しっかりと面談を行い人間性やカメラスキルを確認し過去の実績なども拝見した上で、問題ない方には身分証をご提示いただき業務提携契約書を締結していただき撮影をご依頼する流れとなっていました」と弁明しています。

氏が行った説明

 先にも書きましたが、どう考えてもこの短期間で信頼の置ける人材を見極めることは不可能でしょう。契約書の締結にいたっても、期間内に100人全員と交わすことはかなりの業務量。面談担当、事務担当で受け入れ側も10名程度のチームが必要であり、今回その体制がしっかり組まれていたかも疑問が残ります。

 そしてなにより、氏が一方的に「中止」と述べているだけで、実際のところは本当に中止されたのか、今回採用されたカメラマンが派遣されないのかはわかりません。

 そもそもカメラマンが100人必要な規模の仕事を、わずか1か月前にキャンセルするというのは、企業間取引ではあまり聞かない話。もし仮にできたとしても、「カメラマンが100人必要な仕事自体は残っている」はずです。

 ぜひ本人に直接詳細をうかがおうと取材を試みましたが、期限までに返事は得られず。この件については、SNSの質問でも可となっていたので、公開質問にも切り替えましたが、全く回答は得られていません。よって、真実については未だ確認できていない、というのが現状です。

 今回、氏が対象としていたのは、埼玉、東京、千葉、神奈川といった首都圏の小・中学校の入学式。

 不安が十分に払拭出来ていない中で式が執り行われることがないよう、氏には更なる説明責任が求められています。

(山口弘剛)