時代の変化とともに、それまで当たり前だったこともどんどん変化していきます。4月上旬にSNSで話題になっていたのは「充電式電池」。

 一見すると普通の乾電池と似ているせいか、ゴミとして捨ててしまう人がいるそうです。

■ 充電式の電池とは

 「充電式電池」とは、通常の乾電池と違って、充電することで何度でも使える電池のことです。

 昭和後半から平成中頃にかけては、ソニーの「ウォークマン」を代表とするカセットテープやCDのポータブルプレイヤーや、MDポータブルプレイヤー、そして携帯型ゲーム機など何かと乾電池を使用する機器が多く存在していました。

 あわせて人気だったのが「充電式電池」。使い捨てよりも若干高めではあるものの、繰り返し使用できることから、当時の若者世代にとっては必須アイテムの一つだったと言えるのではないでしょうか。ちなみに普通の乾電池と使い分けている人の中には、乾電池の残量が確認できる「電池チェッカー」といった機器を所持している人もいたほどです。

 もちろん現在でも販売されており、メジャーなところではパナソニックの「エネループ」などがあげられますが、パナソニック以外からもたくさんの「充電式電池」が販売されています。

 使い方は、通常の乾電池と同じように電池を入れるところにセット。そして電池がなくなったら……「充電器」に入れて充電するだけ。いたって簡単です。

エネループの電池

 最近では「スマートフォン」や「携帯ゲーム機」などは充電式ですので、今の若い世代にとってはむしろ電化製品は「充電するもの」という意識があるはずです。よって、「充電式電池」もそこまで粗末に扱うとは思えないのですが……。

エネループを充電しているところ

 しかしながら、今回話題になっているのはそんな「充電式電池」を、まだ使えるにもかかわらず捨ててしまう人がいる、という事実。

 「充電式電池」の存在を知らないからでしょうか?

■ 充電式なのに捨てられてしまう「充電式電池」

 充電式なのに「充電式電池」が捨てられている……そんなツイートを行ったのは、ツイッターユーザー「JAXAから大学教員に転身」さん。茨城大学理工学研究科(工学野)の准教授です。

 投稿内容によると、どうやら大学の研究で使われていた充電式電池が、あろうことか捨てられていたとのこと。具体的な投稿内容は以下のとおりです。

捨てられた充電式電池

「研究室の廃棄電池箱の中、使用済みアルカリ電池の中にいくつかエネループが放り込まれてた
どうやら一部の学生が充電式電池と知らず廃棄している…
もしやと思い箱を入念に調べると、充電式リチウムイオン電池も廃棄されていた
⇒全部の充電池に「充電式です、捨てないで」のテプラを張り付けるはめに」

 投稿に添えられた写真を見てみると……確かに捨てられた充電式電池が写っています。しっかり、両側の電極にテープを貼って絶縁処理がほどこされているので「捨てた」とみて間違いないでしょう。処理は完璧だけど……ちがう、そうじゃない……。と言いたくなるのはまさにこのこと。

両側の電極にテープを貼って絶縁処理がほどこされている

 しかしながら「充電式電池」の存在を知らなければ無理もありません。これも「時代」なのでしょうか。

 そして「JAXAから大学教員に転身」さんは、この問題に対して次のように対応。

今どきの若い子は充電池を知らない説

「充電式電池を充電可能と知らず廃棄する学生が多いので、研究室ではこうなってしまった
一番恐いのが、ここまでやっても捨てる学生が爆誕すること
このラベルを張った電池が廃棄されてるのを発見したら気絶する自信がある
その時は学生に蘇生(充電)してもらう、見捨て(廃棄)られないことを願って」

 わかりやすいように「充電式電池」に注意書きのラベルを張って対応したそうです。これなら判断がつくだろう……と期待したいところではありますが、これでも捨てられる可能性は0ではありません。

 実は、筆者本人「充電」が面倒で次第に充電池を使わなくなったというお恥ずかしい経験があります。わざわざ充電器を取り出して、設置するのが手間なのですよね。つまり同じように「充電させるのがめんどくさい」という人も、捨てる人の中には一人くらいいるんじゃないかと思います。

 ということで、実際どうなのか、投稿者である「JAXAから大学教員に転身」さんに話を聞いてみました。

■ 「JAXAから大学教員に転身」さんに話を聞いてみた

--まずは、ご自身についてお伺いします。プロフィールを教えて下さい。

 2004年4月1日~2014年9月30日まで、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)に所属。2014年10月1日より、現在の茨城大学工学部電気電子工学科で准教授をしております。

--コメントに「エネループ」そのものを知らないというものがありますが、実際現場ではどうなんでしょう。

 学生は正直に答えない人が多いので真偽は不明です。「怒らない、ただ学生の知識を把握したい」からと断ったうえで、誰が捨てたのかを聞いても、誰も名乗りでません(8割以上のケースでこういうことで名乗り出る学生は居ません)。

 研究室の最低学年(4年)の時にエネループを使った実験などを課題として行っているので、確実に把握している人間が8割以上です。充電池と認識していない学生がいたとしても2割以下だと思います。

 把握している8割の学生が知らない2割の学生に指導してくれればよいのですが、学生コミュニティ(特に研究室)では教え合うという行為があまり起こりません、最近は他人に教えることを面倒臭がる人が増えている印象です。

 社会人の立場からすると学生は驚くほど無知であることがよくあります。
過去、オシロスコープと信号発生器を間違えて(電気系エンジニアとしてはあり得ない間違い、アクセルとブレーキを間違えるレベル)実験しようとする学生もいました。

 アイスピックを持つかのごとく、はんだごて掴んで電子工作しようとする学生もいました。
社会人の常識と学生の常識は大きく離れているので、今回のエネループ廃棄の件では常識の乖離を改めて感じました。

 また、社会人の方達にはにわかに信じられないかもしれませんが、単に「自分のものではない、面倒臭い」という理由で、備品をゴミのように捨てる学生が一定数いるのが事実です。

 例えば、実験用のケーブル類などを元の棚に戻すのが面倒だから捨ててしまう学生すらいます。

 電子部品なども、余った部品を共用部品棚に保管するのではなくゴミ箱に捨てる学生もいます。今回のエネループに関しても、充電するのが面倒くさいという理由で廃棄している可能性もあります。

 学生にとっては高価なエネループを捨てても懐は痛まないので。

--100均に似たようなデザインの充電式ではない乾電池が売られているようですが、それと間違えている可能性はありますでしょうか。

 可能性はあります。一度、アンケートを取ってみた方がいいかもしれません。

--恐れていたように、このような注意書きをしても捨てる子はいましたか?

 注意書きを張り付けたのは最近なので、まだわかりません。が、これまでの経験上、注意書きがあっても捨てる人は捨てると思います。注意書きが風景と化してしまって、何も目に入らなくなるという現象です。

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 やはり単純に「知らない」というだけでなく「充電がめんどくさい」という考えの方が一定数いるようですね。スマホの充電は頻繁にするけど、乾電池はめんどくさい。

 今回の場合は「自分のもの」か「他人のものか」の差なのかもしれませんが、大学には他にも備品があるから「根本的に充電しなくても困らない」という点があるのかもしれません。(スマホは充電が切れたら着信もできないし致命的ですしね。)

 それが一番の原因だとすると、「最近の子だからとか知らない」という概念ではなく、単純に「性格」や「環境」の違いなのかもしれません。

 なんとも「充電式電池」から意外な人間の深層心理が判明してしまった今回の話題。果たして今後「充電式電池」はちゃんと充電してもらえるように認知され、かつ手間も省けるようになるのでしょうか。その辺の問題の改善に期待したいところです。

<記事化協力>
JAXAから大学教員に転身@書籍2冊目出版予定@1year girlさん(@ibarakipel)

※初出時「充電式乾電池」としていた表現を「充電式電池」に修正しました。

(たまちゃん)