この時期、就職、転職、部署異動など、新たな環境で仕事を始める方は多いことでしょう。もしくは、現状に満足がいかず、環境を変えたいと悩んでいる方もいるかもしれません。

 かくいう筆者も、2年前の3月末に公務員を退職し、フリーランスの道を歩み出しました。

 少しでも、環境が変わる方/変えたい方の参考になればいいなという希望を込めて、超安定の公務員から、真逆のフリーランスになって変わったことを「収入」「ライフスタイル」「考え方」の3つに分けて書き連ねたいと思います。

 ちなみに、本稿は「フリーランス万歳!」「みんな転職/独立するべきだよ!」といったテイストではございません……。現実感のある生活の変化をそのままお伝えします。その点を頭に入れたうえで、読んでいただけると幸いです。

■ 本題の前に……筆者の基本情報

 本題に入る前に、筆者の基本情報を簡単にお伝えします。

 筆者は、大学卒業後、検察事務官として検察庁に入庁し、検察官の指示のもと事件・事故の捜査に携わる「立会事務官」という仕事を約4年間やっていました。

 退職後は、フリーランスのWebライターに。友人の紹介やクラウドソーシングサイト、Twitterの縁などで仕事を獲得し、現在は6つのWebメディアで編集・執筆を担当しています。ちなみに、完全在宅ワークで、たまに取材で外に出ることがあるくらいです。

 なお、フリーランスといっても、仕事の内容も量も進め方も人それぞれ。本稿の内容は、あくまで「フリーランスWebライター2年目の筆者の場合」であることを念頭に置いていただけると嬉しいです。

■ 公務員からフリーランスになって変わったこと:収入

 転職や独立を考える方にとって、一番不安な点は収入ではないでしょうか。

 結論から申し上げると、筆者の場合は、公務員時代より収入は減りました。2年目後半あたりから、ようやく月の手取り額が公務員時代の手取り額を超えることが増えました。が!フリーランスは振り込まれた報酬から年金や健康保険料などを払わなければいけません。公務員時代のような「年に2回のまとまったボーナス」もないため、収入は減ってしまいました。(現状のままいけば、3年目は公務員時代の年収を超えられそうです。)

 ただ、稼働時間はフリーランスになってからのほうが少ないため、コスパ的な観点でいうと、現在のほうがコスパは良いかもしれません。日によってバラツキはありますが、平均すると、月に16~20日程度の稼働で、1日の稼働時間は5~6時間程度ではないかと思います。(もっと働けよ!ってツッコミが入りそう)

 今後は、稼働時間を増やしたり、単価の高い仕事を獲得したりして収入アップを目指していこうと考えている今日この頃です。(要はやる気の問題!)

 ちなみに、今あなたは「私なら、独立したらめちゃくちゃ仕事をしまくって稼ぐ!」と思いませんでしたか?

 ……筆者もそう思っていました。しかし、現実はそう上手くいかないものです。良くも悪くもフリーランスは自分次第。何時に仕事を始めるか・何時にやめるか・どんなペース配分をするか、誰も決めてくれないし、誰も発破をかけてくれないのです。

 筆者の能力・やる気のせいだと言われればそれまでなのですが、公務員時代はタスクを順調に片付けられていたのに、フリーランスになるとかなりペースダウンしてしまいました。

■ 公務員からフリーランスになって変わったこと:ライフスタイル

 公務員からフリーランスになったことで、ライフスタイルも大きく変わりました。

 みなさんご想像のとおり、フリーランスはかなり自由です。もちろん納期など最低限の制限はありますが、基本的には自分の意思で好きに休みを作れます。

 例えば、「今日は集中できない」と思えば、その日は仕事を休止することもできますし、平日の日中に病院や役所に行くことも簡単です。先日は、趣味のバレエ公演を観に行くために、1週間東京に滞在しつつ仕事をするといった過ごし方も叶いました。公務員時代には考えられなかったことです。

 上記のようなメリットがある半面、フリーランスになったことで、悪いほうに変化した生活リズムもあります。

 それは「休み」がなくなること。……いや、好きに休みを作れるんです。しかし、裏を返せば、「休みを作らない限り、休みがない」ということと同義。

 納期が迫っていれば、土日でも、深夜・早朝でも仕事をします。とくに、筆者の場合は在宅ワークなので、環境によるオン・オフの切り替えもできません。自宅で休んでいても、「本当に休んでていいのかな?」「あの案件少しでも進めておいたほうがいいかな……」と気持ちが休まらず、いつもなんとなく気が急く感覚があります。

 公務員時代は、まだ若手で責任が重くないということもあったのでしょうが、職場を出れば仕事のことを忘れて完全にプライベートモードに切り替えられました。その点を考えると、フリーランスの自由度の高さや裁量の大きさは善し悪しだなと実感しています。
 

■ 公務員からフリーランスになって変わったこと:考え方

 ここまで読んだみなさんは、「やっぱりフリーランスって大変そう」「独立しても良いことないのかな」と思ったかもしれません。「フリーランス(のWebライター)には、こんな良い点があるよ!」と伝えたい気持ちは山々なのですが、筆者の実力では、ここまで書いたことが現実です。

 ただ一点、フリーランスになって良かったと心から感じていることがあります。それは、自分の将来について、より強く考えるようになったことです。

 公務員に限らず、組織に属して働いていると、その組織の中でどんな風に昇進していくか・キャリアを形成していくかがある程度分かりやすいものです。

とくに、筆者がいた検察庁は、大きく分けて「捜査・公判部門」「検務部門」「事務局部門」という3つの部門に分かれており、およそ10年目以降から各部門に分かれてキャリアを形成していきます。つまり、入庁後数年~定年までの働き方が比較的想像しやすいのです。

 一方、フリーランスは、どんな仕事をするかをすべて自分で決めていかなくてはいけません。Webライターを例に取ると、どんなジャンルの記事を書くのか、月に何本案件を受注するのか、収入の目標などを自分で決めていきます。

 イメージとしては、公務員時代は「ある程度整備された道の中で、どの道に進むか選択していく」といった感じであるのに対し、フリーランスは「道なき道を自分で整備しつつ進んでいく」といった感じです。そのため、筆者の場合は、公務員時代より強く、自分の将来について考えるようになりました。

 例えば、「子どもが生まれたらライターの仕事は続けられるのだろうか、別の仕事や働き方をしたほうがいいのか」とか「(たとえば)40歳になったときに、今と同じようにライターをしているだろうか」「もっと収入を上げるためには、どんなスキルが必要で、どんなジャンルの記事を書けばいいのだろうか」「老後の資金を貯めるには、今どのくらい収入がいるのだろうか」といったことなどです。

 正直に言って、公務員時代はそれほど自分の将来の働き方について考えることはありませんでした。異動など、組織が決めたことには”従わないといけない”=”自分の意思が介入する余地がない”と思っていましたし、福利厚生がしっかりしているという公務員のメリットから、老後について不安を覚えることも特段ありませんでした。

 今は、公務員からフリーランスになり、不安定な立場に立ったことで、将来や老後について”より強く考えなければいけない”環境にいます。一見、大変なようにも思いますが、20代のうちから、何十年先の将来まで考える機会が(ある意味必然的に)与えられたことはとても良かったと感じています。

 念のために申し上げておくと、公務員や会社員など組織に属して働いている方が将来のことを考えていないと言っているわけではありませんよ!あくまで筆者の場合は、フリーランスになって初めて将来のことを強く考えるようになった、というだけです。

■ フリーランスになって後悔はない!しかし積極的に勧めることもしない

 収入が減り、休みがあるようでない生活になりましたが、筆者は、フリーランスになって後悔したことは一度もありません。それは、「自由度の高さ」というメリットがかなり大きいからです。「何事も自分で決めていかなくてはいけない」という点も、ある意味心地の良いプレッシャーのように感じています。

 ただ、積極的に独立を勧めることもしません。組織に属した働き方には、やはりフリーランスにはないメリットが多々あります。

 「独立の背中を押してほしい」と思っていた方には申し訳ない思いですが、フリーランスにも公務員・会社員にもそれぞれのメリット・デメリットがあり「これが一番!」という働き方は存在しないと感じています。自由度の高さや「自分で人生を設計していく感」が強くほしければフリーランスが向いていますし、収入や生活リズムの安定を求めるなら公務員・会社員が向いています。

 環境を変えたいと悩んでいる方は、ぜひ、今一度、働き方において何を重要視するかを熟考してほしいです。筆者も、将来や老後について考えることを継続し、そのときどきのライフスタイルに合った働き方にアップデートしていきたいと考えています。

(上村舞)