日本神話に登場する伝説の生物「八岐大蛇(ヤマタノオロチ)」。8つの頭と8本の尾を持つ恐ろしい怪物として知られていますが、これを縦78cm、横54cmという巨大なキャンバスに描いてみせたのは、画家の小林優太さんです。

 ウロコの一枚一枚に至るまで緻密に描かれ、長い首が複雑に絡み合う様子を表現した作品は、まさに圧巻の一言。今にも絵から飛び出してきそうな迫力に、思わず息を飲んでしまいました。

 普段から狛犬や龍といった神獣・霊獣をモチーフにすることが多いという小林さん。画家としての活動を本格化させた2018年ごろに、八岐大蛇は一度描いているそうです。今回は5年たった現在の成長度合いを知るため改めて描いてみることにしたのだそう。

 それにしてもこの描き込みの量と、精密な線描の技術にはただただ驚くばかり。太さの異なるボールペンを複数使い分けているそうですが、どれだけ丁寧かつ慎重に、気持ちを込めて線を引いているかが非常によく伝わります。

 また、八岐大蛇の迫力を際立たせているのが、偏光アクリルの絵具を用いた金色の背景。角度によって見え方が異なり、より伝説上の生き物らしい神々しさを感じる仕上がりとなっています。

見る角度によって色が変わる背景

 こうした制作の中でも小林さんが特にこだわったと語るのは、もしも実際に八岐大蛇が存在していたら……という空想の部分。

 「首一本一本でそれぞれ違う意思を持っていると思うので、模様で個性を表現しました」「角の本数が多いほど偉いイメージです」と、思い描く八岐大蛇像を具現化することに力を入れたようで、もちろんこうした意思は確かにしっかりと作品に落とし込まれています。

 このような想像力こそが、ただ緻密であるだけでなく、まるで作品が生きているかのような迫力を生み出す根源となっているのでしょう。

実像の無い八岐大蛇蔵は小林さんの空想で補完されています

 制作期間およそ1か月半をかけて完成させた八岐大蛇については「やはり龍は、描いていてとてもワクワクさせてくれるモチーフだなと再確認できました」と、自身にとっても納得の行く仕上がりとなった模様。

 加えて「世界には、まだまだたくさんの龍がいると思いますのでどんどん描いていきたいです」と、今後の意気込みを語った小林さん。独自の世界観から生まれる、緻密かつ精密な作品に注目です。

<記事化協力>
画家@優太さん(@K_Y_95

(山口弘剛)