木版やゴム版を使用して風景をモチーフにした版画などを作っているイラストレーターの平岡瞳さん。「長い絵を刷りました」と自身のTwitterに動画で公開した作品には、「美しい」「素敵」など称賛のコメントが数多く寄せられています。

 長細い紙をめくっていくと、そこに写し出されたのは、のどかな田舎の風景。青い色が幻想的で、美しい夜の景色が広がっています。版画とは思えないほど細かく繊細に描写されていて、その美しさに魅了されます。

長細い紙をめくっていくと

青い色が幻想的で、美しい夜の景色が広がっています

 平岡さんに話をうかがうと、今回紹介した作品は約1年前に、ある雑誌の目次絵のために作ったものなのだとか。「木版とゴム版を併用して仕上げた多色刷りの版画」で、下絵に2日、彫る作業に3日、仕上げに3日、計8日ほどで完成させたそうです。当時を振り返り、「好きな絵を自由に描かせていただいたので、楽しんで取り組むことができました」と語ります。

 こだわった点は「色とモチーフ」と平岡さん。作品は「静かな風景に魅かれて描くことが多い」とのことで、印象的な「青色」は好んで使用しているそうです。たしかに今回の作品も青色の濃淡で風景を表現することで、夜の雰囲気がさらに伝わってきてとても綺麗です。

 木版画や銅版画、石版画など、版画の種類は様々。その中でも木の板を彫る木版画の作品を数多く世に送り出している平岡さん。「素朴であたたかみがあるところ」が魅力なのだとか。過去の投稿でこれまでの作品の一部を見ていると、木のぬくもりもそのまま作品にあらわれている気がして、見ている側の気持ちまでなんだかほっこりさせられます。

 投稿された作品の動画は50万回以上も再生され、約2万件のいいねを集めています。今回の投稿をきっかけに、木版画について興味を持った人も多いのではないでしょうか。事実、記者も自分の中に思い描いていた木版画との違いに驚きを隠せないでいます。

 寄せられたコメントを見てみると、「ドキドキする」「剥がれていく心地良さ、広がる瑠璃色の世界の美しさ……すべてに魅了」「いままで知らなかったのはちょっと後悔。次の機会には手に入れたい」など、多くの人たちが平岡さんはもちろん木版画の世界にハマっているようです。

 このような反響を受けて平岡さんは「刷り増しをした作品の動画を思いがけずたくさんの方に見ていただくことができて嬉しいです」と驚きつつも喜んでいる様子。「2023年も展示を予定しているので、機会があれば実物を見ていただきたいです」と呼び掛けていました。

<記事化協力>
平岡瞳さん(@hitomihiraoka)

(佐藤圭亮)