ここ数年、かわいらしい姿でペットとして人気が集まっているげっ歯類のチンチラ。ところが、人気にもかかわらず国内での飼育数など詳しい情報がなく、適切な飼育法などの基準を作れない現状があります。

 そこで一般社団法人日本チンチラ協会では、国内で飼育されているチンチラの個体数を把握し、よりよい飼育環境作りの基礎となる初の「チンチラ国勢調査」を2022年12月18日から始めました。

 チンチラは、げっ歯目チンチラ科チンチラ属に分類される、モルモットやデグーに似た生き物。南米はチリ原産(固有種)で体長は30cmほど、野生では山地の岩場などに生息しているとされ、その愛らしい姿から近年ペットとして人気となっています。

近年ペットとして人気のチンチラ(一般社団法人日本チンチラ協会提供)

 大きな耳やつぶらな瞳、そしてその愛らしい仕草で人々を魅了するチンチラ。しかし、生態や飼育法について未解明な部分も多く、病気になった際に診察してくれる獣医師さんも少ないという現状があるといいます。

 一般社団法人日本チンチラ協会(JCA)は、現会長の鈴木理恵さんが中心となり、2016年にボランティア団体「チンチラ飼育研究会」としてスタート。飼育セミナーの開催や、飼育に関する書籍の刊行などを通じて飼い主さんのサポートを続け、2019年1月31日に一般社団法人として設立されました。

一般社団法人日本チンチラ協会のマーク(一般社団法人日本チンチラ協会提供)

 現在は公式サイトやSNSを通じた情報発信をはじめ、チンチラを診察できる動物病院リスト、基本的な飼育の手引き公開に相談窓口開設といった飼い主さんのサポートをしているとのこと。あわせて対面・オンライン形式での各種セミナーに交流会、今後のより良い飼育指針として、会員による飼育データの蓄積も行っています。

 協会によると、2015年ごろからのブームにより知名度が上がり、2017年ごろからチンチラの輸入量が増加しているとのこと。ただし、環境省が公表している輸入頭数のほか、国内ブリーダーや一般の飼い主さんによる繁殖もあり、今日本にどれくらいのチンチラが飼育されているのか、確たるデータがないのだそうです。

 また、飼育する上で未解明なことも多く、げっ歯類としては比較的長寿(飼育下では20年以上生きることも)であるため、場合によってはお迎えしたはいいが飼育を続けられず、手放されるケースもあるのだとか。

 チンチラは犬や猫と違い、販売や飼育に関する具体的な数値規制(飼育数の制限)やルールがありません。そのため、この先数が増えるに従い、不適切に扱われる命も増える可能性がある、と協会では懸念しています。

 そこで実施されることになったのが、第1回「チンチラ国勢調査」です。日本国内におけるチンチラの実態を把握し、不幸なチンチラを減らす動物愛護法の改正に繋げるため、その基礎資料を作成します。

 対象となるのは、ペットとして一般のご家庭で飼育されているチンチラのほか、動物園、ブリーダー、ペットショップなどを含めたすべての飼育個体。2022年12月18日〜2023年12月31日を調査期間とし、飼育している都道府県と数、性別のデータを収集します。飼い主個人が特定できるデータは含まれません。

 最終的には法改正へ繋げるための基礎統計資料とするため、今後も継続して実施することを協会では計画しています。目標では4年ごとに実施し、飼育数の推移が分かるようにする予定だとか。

 データの登録はオンラインで、日本チンチラ協会公式サイトの「チンチラ国勢調査」特設ページに設置されたリンクから、Googleフォームを使って行われます。2023年より一部の動物病院やペットショップ、ホームセンターなどでもポスター掲示やチラシ配布をし、そこに記載されたQRコードからもアクセスが可能となっています。

<記事化協力>
一般社団法人日本チンチラ協会(@JapanChinchilla)

(咲村珠樹)