街中で松葉杖の方が困っている場面を見かけたとき、「大変そうだな」「何か手伝ったほうが良いかな」と思う方は多いでしょう。しかし、手を差し伸べられない経験をした方も多いと思います。

 筆者もそうでした。そもそも、何を手伝ったら良いかパッと思いつかなかったのです。実際に自分が松葉杖生活を経験するまでは……!

 松葉杖生活は経験してみないと気付かない小さな不便の連続。入院3週間・退院後2週間、合計5週間の松葉杖生活を続けている筆者が松葉杖生活での気付きを書き連ねていきます。

■ 松葉杖生活での気づき(1)ドアが1人で開けられない

 3週間の入院を終えてやっと退院……!入院食に飽きていた筆者は、迎えに来てくれた母とファストフード店に向かいました。

 筆者が向かった店の出入り口には、重いドア。押すか引くかで開くタイプです。しかも外に面したドアと室内に面したドアの2枚がありました。

 松葉杖で両手が塞がっている筆者は当然1人で開けられません。母が1枚目のドアを開け、筆者が通る。母が筆者を追い越し2枚目のドアを開ける、といった具合でなかなか大変。

 ドア問題はさらに続きます。自宅マンションの玄関は一般的な片開きドアなのですが、ストッパーがないため1人で開けるのがなかなか大変です。家から出るときは、少し開けて体でドアを止めるのを繰り返し、家に入るときは大きくドアを開けて急いで中に入るようにしています。

 筆者は在宅仕事なので通勤はありませんが、毎日通勤する場合、出入りの苦労は何倍にもなるでしょう。

■ 松葉杖生活での気づき(2)もろもろ椅子がないと無理

 時を戻し退院の日、自宅マンションに帰ってきて気付きました。「椅子がないと靴が脱げない」ということに。

 筆者は左足を怪我しており、一瞬たりとも左足で片脚立ちができない状態でした。そのため、立ったままでは右の靴を脱ぐことができないのです。

 これは全くの盲点でした。思えば入院中、靴を脱ぐ場面は自室のベッドかリハビリ室のベッドに上がるとき。どちらも座って靴を脱げる環境だったのです。急いで母に椅子を持ってきてもらい、事なきを得ました。

 その日の夜、お風呂に入ろうと思ったとき、再び椅子が必要なことに気付きました。「片脚立ちになれない=椅子がないとボトムスが脱げない」のです。

■ 松葉杖生活での気づき(3)移動が面倒くさすぎる

 筆者は在宅仕事なのであまり家から出ませんが、それでもトイレに行ったり冷蔵庫からお水を取り出したり、何かと移動はするもの。

 しかし、松葉杖生活になってから日常生活の移動が本当に大変で面倒くさいと感じてしまいます。たった2、3歩でも松葉杖を使わないといけないので、移動のハードルが非常に高いのです。(少しの距離なら怪我をしていない右脚でケンケンする方法もあるのですが、マンション住まいなので階下への足音が気になり実行していません)

 入院中もある程度の手間は感じていたものの、必要なものはベッドの周りにある状態。退院してから、松葉杖生活の大変さがより身に染みました。

■ 松葉杖生活での気づき(4)道路って結構斜めってる

 外で松葉杖をついていると、道路の傾き具合やでこぼこに気付きました。斜めになっている場所、でこぼこしている場所では松葉杖が引っかかり歩きにくいのです。ときには片方の松葉杖だけが引っかかり転びそうになることも。

 松葉杖をついていなかったときには、道路が斜めになっていようがでこぼこしていようが全く気になりませんでしたが、松葉杖生活中の今はなるべく平坦な場所を歩くようにしています。 

■ 松葉杖生活での気づき(5)手を差し伸べてくれる人が多い

 松葉杖生活の気付き、最後は「手を差し伸べてくれる人が多い」ということです。

 コンビニで通路を譲ってくれたり、手動のドアを開けてくれたり、筆者がエレベーターに乗り込むまで待ってくれたり……親切にしてくれる人が非常に多いと感じました。

 怪我をしてから外に出るのが億劫になり外出機会は減りましたが、それでも数少ない外出時に嬉しいサポートを受けることが多いです。

■ 日常生活の中にたくさんの不便さがあることを実感

 松葉杖生活を通じ、日常生活の中にたくさんの不便さがあることを実感しました。それと同時に、親切にしてくれる人が多いことにも気付きました。本当に嬉しかったです。

 怪我が完治したあかつきには、困っていそうな松葉杖の方を見かけたら積極的に声を掛け、サポートできることはないか尋ねてみたいと思います。

 皆さんの周りに松葉杖の方がいれば、少しだけでも注意して見守るようにしてあげてください。そして困っていそうなときは、「お手伝いできることはありますか?」と声を掛けてみてください。その親切心に救われる人はきっと多いはずです。

(上村舞)