リアルな造形物は私たちを楽しませてくれますが、作品によっては「なぜこんなところに?」とギョッとしてしまうことも。Twitterに、テーブルの上に置かれた「足の裏」の画像が投稿されました。もちろん作り物なのですが、肌の血色をリアルに再現しているため、まるでテーブルから生えているようにも見えます。

 ついさっきまでその辺りを歩いていた、という感じのリアルな足を作ったのは、イベントや博物館など向けに造形作品を作っているC.S.Model Designのタナカさん。この作品も受注品として作ったものだそうです。

C.S.Model Designさんのツイート(スクリーンショット)

 どのように作ったのか、タナカさんにうかがってみると、まずは本物の足(足首から下)を型取りし、FRPに置き換えるところから。誰もが見慣れているものを実物大で作る場合、造形して作るよりは実物を型取りした方が作業面でも手早くなり、実物の持つ形状やディティールをそのまま写せるので有利だといえます。

石膏の型(C.S.Model Design タナカさん提供)

 今回の作品は「軽さ」を優先した作りにしたため、FRPの層は1層のみと薄め。型の合わせ目部分のみ、分離しないよう裏打ちする形でもう1層重ねてあるそうです。

 型から抜き取ると、肌のキメまで詳細に写されています。確かに、これをすべて造形で作っていくとなると、かなりの時間が必要そうです。本物の持つリアルさは格別ですね。

型から抜いたところ(C.S.Model Design タナカさん提供)

 人の肌は、部分ごとに血色の出方が違い、本物そっくりに彩色しようとするとかなり大変です。そこで足の裏の写真をじっくり参考にしながら、どの部分に赤みが差してどの部分が薄いのか、色合いや肌ツヤの出方を把握して再現したとのこと。

 気をつけた点をうかがうと、塗り重ねすぎて「塗膜」にならないように、ということ。使う色もシンプルに、タミヤのエナメル塗料を使って基本色と「赤っぽい色」、そして「白黄色っぽい色」の3色のみを調色し、使っていったそうです。FRP自体にもトナーを配合し、ベースとなる地の色を与えています。

 「塗膜の厚みが出ると『塗装』という感じになってしまうので、塗料をFRPに染み込ませるように筆で色をのせては拭き取ったり押さえたりという塗り方です」

 そのせいでしょうか。完成した「足の裏」を見ると、実際のように肌の内側から毛細血管や血の色が透けて見えるかのような赤み、ハイライト部分に見えるツヤなど、この先に実際の人間が隠れているかのよう。思わずくすぐってみたくなりますね。

完成した「足の裏」(C.S.Model Design タナカさん提供)

 これが何気なく置いてあったら、絶対驚きそう。さすがに作った側は驚くことはないそうですが、その出来栄えには「お。頑張ってたなこのときのオレ」と思ってしまうのだとか。

 C.S.Model Designのタナカさんは受注作品を作るだけでなく、オリジナルのフィギュア作品をBOOTHにて販売しています。実在のものだけでなく想像上の生き物まで、まるで生きているかのような質感に目を奪われてしまうと思いますよ。

<記事化協力>
C.S.Model Design タナカさん(@CSModelDesign)

(咲村珠樹)