木ならではの温かみを感じるウッドクラフト。木の種類によって色や地肌など、多彩な表情を見せるのが魅力です。

 一方、木はリアルな造形も可能な素材。ウッドクラフト作家がリアルなタンポポの花を作り、Twitterに投稿しました。

 本物そっくりなタンポポの花を作ったのは、ウッドクラフト作家のMokoya craftさん。大学の建築学科を卒業し、建築関係の仕事を続けながら手作りの家具やおもちゃをプレゼントする中で、本格的に木工の道を歩みたくなり、作家活動に入ったといいます。

 建築と木工(ウッドクラフト)は全然違うような気もしますが、マルセル・ブロイヤーやル・コルビュジェ、フランク・ロイド・ライトなど、優れた建築家の手がけた家具が知られているように、建築家は調度品や家具を同時に手がけることも。Mokoya craftさんが建築から木工の道に進んだのも、自然なことといえそうです。

Mokoya craftさんのウッドクラフト作品(Mokoya craftさん提供)

 普段は手に馴染む曲線で形作られた、温かみのある作品を作っているMokoya craftさん。今回Twitterに発表された花は趣を異にしていますが、これは最近結婚されたことが関係しています。

 「近々結婚式をする予定なのですが、結婚式で使うブーケを木の花で作りたいと思っていまして、その練習で試しに一輪作ってみました」

 モチーフに選ばれたのは、日本在来のタンポポ。セイヨウタンポポのような派手さはありませんが、繊細な美しさを持つ花です。在来種のタンポポはセイヨウタンポポと違い、花の“がく”部分が反り返らないのが識別ポイント。

モチーフは日本在来種のタンポポ(Mokoya craftさん提供)

 素材は、家具や楽器の材料に多く使われているヤマザクラ。緻密な木肌で加工性が高いだけでなく、反りや狂いといった変形も少ないのが特徴です。彫刻刀で薄く削り出し、花びらなどのパーツを作っていきます。

彫刻刀でパーツを削り出す(Mokoya craftさん提供)

 全体のフォルムなどは植物に詳しい弟さんの監修を受けつつ、パーツを細い棒にピンセットを使い、ひとつずつ接着。細かい作業を続け、4時間ほどで完成したそうです。

ピンセットでパーツをひとつずつ接着(Mokoya craftさん提供)

 Mokoya craftさんの作品はラッカーなどの彩色塗装を行わず、木の素材が持つ色味や質感を楽しめるようになっています。車の作品は、パーツごとに使用する木材やオイルの塗りなどを変え、同じ形をしていてもそれぞれの違った個性が楽しいですね。

木材の色の違いが楽しめる車(Mokoya craftさん提供)

 一枚の木材から削り出し、やすりがけをして作られたトレイは滑らかな曲線が特色。シンプルな造形ですが、それゆえに素材の木肌や色味、木目といったものがストレートに感じられます。

一枚板から削り出されたトレイ(Mokoya craftさん提供)

 今回のタンポポはウエディングブーケの習作だそうですが、実際のブーケがどのように仕上がるのかも気になるところ。きっと素敵な作品になることでしょう。Mokoya craftさんのInstagram(mokoya.craft)には、数々のウッドクラフト作品の画像が揃っています。

<記事化協力>
Mokoya craftさん(@MokoyaC)

(咲村珠樹)