日本を代表するコンピュータRPGの傑作「ドラゴンクエスト」シリーズ。主人公の冒険物語には、多彩なモンスターたちの存在が欠かせません。ドラクエファンである礼鬼さんは、そんなモンスターたちを紙という素材で立体化したファンアートを作り続けています。

 ゲーム画面から抜け出してきたような、リアルで躍動感あふれる作品について、ご本人に話をうかがいました。

 幼稚園の頃から紙工作が好きだったという礼鬼さん。その当時は折り紙や色紙を使い、半立体の作品を作っていたそうですが、ドラクエのファンアートを作るようになったのは「ドラゴンクエストX(ドラクエX)」をプレイしたことがきっかけなのだそう。

初期の半立体作品(礼鬼さん提供)

 「ゲームがきっかけで仲良くなった友人に、ゲーム内のキャラを紙で作ったら喜んでもらえたのがきっかけです。それからずっとドラクエのキャラクターばかり作っています」

 これまでに作った作品は20点ほど。大きさはまちまちだそうで、初期のラスボスである竜王の第2形態(ドラクエI)、シドー(ドラクエII)、ゾーマ(ドラクエIII)は、どれも最後に戦う相手としての迫力に満ちあふれています。

ドラクエIの竜王(礼鬼さん提供)

ドラクエIIのシドー(礼鬼さん提供)

ドラクエIIIのゾーマ(礼鬼さん提供)

 また、ロトの剣を原寸大で作ったことも。刀身に刻まれたルーン文字の「DRAGON QUEST」もしっかり再現されています。これが紙でできているとは思えない重量感です。

ロトの剣(礼鬼さん提供)

彩色前のロトの剣(礼鬼さん提供)

 ファンアート制作のきっかけとなったドラクエXは、オンラインゲームとしてリリースされてから10年と、プレイ時間が長いこともあり、歴代で最も好きなタイトルとのこと。同時にグラフィックも3Dなので、造形面の参考にもなると話してくれました。

 ドラクエXからは、ver.1でラスボスとして立ちはだかる冥王ネルゲルや、ver.2のラスボス、創造神マデサゴーラも立体化。マデサゴーラは最後の死闘をモチーフに、プレイヤーキャラクターも登場するジオラマ仕立てになっています。

冥王ネルゲル(礼鬼さん提供)

 どのように作られているのか、思い出深い作品として挙げてくれた2021年の作品「創造神マデサゴーラとの死闘」を例に見せてもらいました。使用する素材はコピー用紙やクラフト紙、そしてティッシュ。これをテープや木工用ボンドを使って固め、形を作り出していくとのこと。

創造神マデサゴーラとの死闘(礼鬼さん提供)

 使用する紙のうち、コピー用紙は主に芯材やボリュームアップなど「内側の造形」素材。そこにエイジング処理をしたクラフト紙の外皮が加わり、表面のディティール表現が加えられるのだそう。

制作中のマデサゴーラ(礼鬼さん提供)

 マデサゴーラは竜の頭に鳥のような翼、さらに6本の腕と4本の足、そして蛇の尾を持つ異形の姿。それぞれのパーツに力強さと躍動感を持たせながら、自立するよう全体のバランスを調整する必要があります。

彩色前ののマデサゴーラ(礼鬼さん提供)

 特に難航したのが翼の部分だったそうで、羽のひとつひとつにハサミでスリットを加えていく作業は「心が折れかけました」と礼鬼さん。しかしその甲斐あって、金色に染まる翼は独特の質感を獲得しています。

「マデサゴーラとの死闘」完成品(礼鬼さん提供)

 この作品には、対峙するプレイヤーキャラクターの存在も緊張感を与えています。これまでの戦いで傷つき、装備がボロボロになりながら、一歩も引かない覚悟で立つ姿も印象に残ります。

プレイヤーキャラクター(礼鬼さん提供)

 2020年に作られた、ドラクエXの「聖守護者の闘戦記」に登場する剛獣鬼ガルドドンも、礼鬼さんには思い出深い作品とのこと。2020年3月に実装されたボスキャラクターなので、実装された時の感動が立体化の原動力となったのかもしれません。

ガルドドン(礼鬼さん提供)

 この作品は、礼鬼さん自身の個人的な趣味の世界観に振り切って制作した実験的な作品なんだとか。竜のような角と翼、そして尾を持つ、ゴリラのような姿をしたモンスターです。

横から見たガルドドン(礼鬼さん提供)

 大きく盛り上がった筋肉が作る、今にも襲いかかってくるような躍動感あるポージング。牙を剥き出しにした表情も、遭遇したプレイヤーの恐怖が伝わってくるようです。

大きく筋肉が盛り上がる(礼鬼さん提供)

 ポイントとなったのは、全身を覆う毛皮の表現。毛並みは細かくちぎったティッシュを使用しているそうで、毛束ごとに少しずつ「植毛」していく地道な作業が続いたのだとか。

ティッシュを貼り付け毛並みを再現(礼鬼さん提供)

 せっかくの筋肉表現も埋もれてしまい、もったいないようにも思えますが、完成した姿を見ると、盛り上がった筋肉が土台にあるからこその毛並みであることも分かります。しかし、何度でも言及してしまいますが、紙でできているとは思えないほどの重量感ですね。

完成したガルドドン(礼鬼さん提供)

 完成までの時間は作品の大きさによってまちまちですが、手のひらサイズだと20時間程度、50cmほどの大型作品になると1か月から2か月かかるといいます。コピー用紙で内側、クラフト紙で外皮を作る関係で、作品の断面はコピー用紙とクラフト紙が折り重なったミルフィーユのような構造に。

作品の断面構造(礼鬼さん提供)

 ドラクエのモンスターをファンアートとして制作しているうち、礼鬼さんは特撮映画における怪獣の造形と通じるものがある、と感じるようになったのだとか。質感の参考として怪獣のディティールを取り入れることが多く、意外と相性がいいのだそうです。

 「鳥山明先生が『ウルトラマン』に深く感銘を受けているらしく、モンスターデザインにも影響を与えているのではないかと考えています。鳥山先生のシンプルで愛嬌のあるデザインと、ウルトラ怪獣の恐ろしさの中に可愛さのあるデザイン、造形をしていると両者の中に同じモノを感じずにいられません」

 礼鬼さんの最新作は、ver.3のラスボスに当たる邪竜神ナドラガ。こちらは、ドラゴンクエストX 10周年記念企画で開催されたプレイヤーが制作したイラストや立体物、写真などのファンアートを集めた展覧会「みんなでつくるDQX覧会 -10th ANNIVERSARY-」の立体物部門に応募し、優秀作として特設サイトにて展示されています。

https://twitter.com/REIKI_oninohito/status/1532201462893547520

<記事化協力>
礼鬼さん(@REIKI_oninohito)

(咲村珠樹)