「出来た!動くミニチュアチェーン作ったから是非見てほしい」

 そんなつぶやきとともに、1分間の動画をTwitterへ投稿したのは鳴瀧さん。そこに映し出されていたのは、バイクなどに使われるチェーン。

 といっても、手のひらにチョコンとのっかるミニサイズ。しかも紙でできているというんです。この人、ヤベエ……(ほめ言葉)。

 「実は、これまでにも何度か作ったことがあるものなんです。お菓子の空き箱で作ったんですが、そのままで使うと千切れてしまうので、一旦表面を剥がしたものを2枚用意して、それらをのりで張り合わせて強度を上げています」

 そう語る鳴瀧さんは、本業である左官職人の傍ら、前職の自衛官時代に得た知識を生かして、機械類をモチーフとした創作活動を行っている人物。作品はTwitterをはじめ、YouTube・Instagram・ニコニコ動画といったWeb上で公開しています。

 作品全体においてこだわっているのが、基本的に誰でも用意がしやすい材料を使用するということ。自身が幼少期に、プラモデルなどの模型が買えない中で、ものつくりをしていた経験からきていると言います。

 それは本作もまた同様。先述の通り、鳴瀧さんは洋菓子の紙パッケージを用いて、動画内で工程を披露しています。

 まるで電車の線路のような製図、プレート部分の型取りそして切り抜き、瓶詰めへ保管、ブシュやローラへの穴通し、はみ出たピン部分のカット……と、倍速で紹介しているとはいえ、驚くほど手際よく作られています。しかも目視が必至なサイズで、です。

まるで電車の線路のような製図。

そこへプレート部分を型取り。

型取った後はくり抜いていきます。

一旦瓶詰めに保管。ちっさ!

ブシュやローラに穴通しをします。

最後にはみ出たプレートをカット。目が疲れる……。

 「ネジやボルト、ガスケット、配線といった『部品』って、誰かが必要だと考えて作ったものですし、そこにも関わった人々が必ず居るから、省略するのには抵抗があるんです。これは、自衛隊員時代に航空機の知識を学んだことや、ヘリコプターの整備作業で、部品の取り外しや取り付けに関わった経験からくるものでもあります。『そのとき誰と作業したか』や、『部品から機械の構造を知って感動した記憶』などという思い出も蘇りますしね」

機械において部品が欠かせない。投稿者のこだわりから生まれた傑作。

 さらりと語る鳴瀧さんですが、それは、自身が有する超絶技巧によってもたらされるものでもあります。今回の投稿でも、「凄い!凄すぎる!」「とても真似できません」「作ってる最中に気が狂いそう……」「この人頭おかしい!(褒め言葉)」「ヒエーッ変態がおる!(褒めてます)」など絶賛の嵐。1万を超えるいいねが寄せられています。

 鳴瀧さんの“紙業師”ぶりが広く伝わることとなった本作ですが、これはあるものを作る過程だったそうです。

 「バイクです。その過程で作ったのがチェーンなんです。なので単なる部品のひとつだったりします」

これまでの作品の中では主に10分の1スケールのペーパークラフトバイクを作ってきた投稿者。

 その言葉通り、Twitterの固定ツイートでは、画用紙や和紙を用いて10分の1スケールで作った、国内外の有名バイクをモチーフにしたファン作品を紹介されています。

 なお、YouTube「Paper modelling」で公開した制作動画の1つは、なんと1000万回近い再生を記録。実は鳴瀧さん、「ものつくりユーチューバー」の一面を持った方でもありました。

<記事化協力>
鳴瀧/Paper modellingさん(Twitter:@taki_yoshiwo/Instagram:@paper_modelling)

(向山純平)