東京国立博物館は「踊る埴輪&見返り美人 修理プロジェクト」を、文化財活用センターと共同で4月1日から開始。これは同館を代表する作品「埴輪 踊る人々」と「見返り美人図」の文化財修理にかかわる費用を、個人や企業から寄附を募るファンドレイジング事業。

 目標金額は1000万円で寄付の募集期間は2023年3月31日とのこと。4月1日にスタートしてから、4月4日時点の寄付状況は約250万円となっています。

 「埴輪 踊る人々」は素朴さと生き生きとした動きが魅力の作品。小さい方の埴輪は、腰に鎌を着け、顔の両脇で髪を結って束ねる美豆良(みずら)という男子の髪型をしています。しかし、大きい方の埴輪にはその特徴が無く、男女のどちらかよくわかっていないそうです。

「埴輪 踊る人々」

 そんな作品の修理が必要な部分というのが、胴や腕の部分に入っている横向きの亀裂。それに加えて過去の修理による石膏が経年劣化しており、一部に剥離が生じています。そのため他の施設などから貸出し依頼が来ても、慎重な取り扱いが必要なため、難しい状況が続いていると言います。

「埴輪 踊る人々」(部分) 胴に入る亀裂の様子

 今回の修理では、解体して旧修理による石膏部分の除去や、亀裂の強化と接合などが行われる予定となっています。

「埴輪 踊る人々」(部分) 旧修理で施された石膏(右半分)

 「見返り美人図」は菊や桜の花で描かれた「花の丸」模様の振袖など、江戸時代に町中で流行した最新のファッションが描かれているところも魅力。切手のデザインになったことでも有名です。

「見返り美人図」

 しかし、桜の花など絵具の部分には多くの剥離や剥落がみられ、巻いて収納する掛軸特有の傷みともいえる、折れや擦れなどもあります。

「見返り美人図」(部分) 剥落の様子

 そのため、これ以上傷みが進まないよう保護して、折れには「折れ伏せ」といわれる、細く帯状に切った和紙で裏面から部分的に補強する技法で修理するとのことです。

「見返り美人図」(部分) 折れや擦れの様子

 寄附の種類は返礼なしの応援コースと、返礼ありのお楽しみコースの2種類。ウェブサイトからクレジットカードや銀行振込で出来るほか、館内の募金箱などからも寄附が可能です。

 お楽しみコースで1万円以上の寄附をすると、「見返り美人」のきものの柄と「踊る埴輪」をデザインした記念てぬぐいが贈呈されます。

「見返り美人」のきものの柄と「踊る埴輪」をデザインした記念てぬぐい

 3万円以上、もしくは5万円以上の寄附をした人は「踊る埴輪」がデザインされた熊谷染の小風呂敷か、「見返り美人」がデザインされた江戸硝子のオールドグラスのどちらかを返礼として選ぶことが可能です。

「『踊る埴輪デザイン』熊谷染小風呂敷」

 「『踊る埴輪デザイン』熊谷染小風呂敷」は、「踊る埴輪」の出土地である埼玉県熊谷市の伝統工芸「熊谷染」とコラボしたもの。「『見返り美人デザイン』江戸硝子オールドグラス」は手作業で彫刻が施されており、菊と桜の模様が華やかに浮かび上がっています。

「『見返り美人デザイン』江戸硝子オールドグラス」

 5万円以上の寄附をした人は、これに加えて修理完了後の初展示に招待。担当研究員の解説付きとのこと。詳細は「東京国立博物館創立150年記念 踊る埴輪&見返り美人 修理プロジェクト」のプロジェクトページで告知されています。

情報提供:東京国立博物館文化財活用センター

(佐藤圭亮)